本当に困っている方を救済する、最後の「駆け込み寺」弁護士として

三上早紀先生

経歴  2007年 山梨学院大学付属高等学校卒業     2011年 中央大学法学部(政治学科)卒業
    2014年 中央大学法科大学院(未修コース)修了
    2015年 司法修習(第68期)
    2015年12月 東京弁護士会に弁護士登録
    2015年12月 弁護士法人東京パブリック法律事務所入所
    2017年 日本司法支援センター常勤弁護士として法テラス浜田法律事務所に赴任
    2020年 東京弁護士会に登録替えし、ソーシャルワーカーズ法律事務所に入所
    2021年 弁護士法人東京パブリック法律事務所へ帰任

※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

三上早紀弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

出身大学は中央大学の法学部だったのですが学科は政治学科でした。大学には法律学科の友人もいて、その友人の多くが法律家を目指すということで伊藤塾に通う人だとか、中央大学の炎の塔で入会テストを受ける人が多く、自然と周りで法律家を目指す人が多かったという環境がもともとありました。そこにプラスして政治学科では国際政治を勉強していたのですが、その一環でヒューマンライツ・ナウというNGOでインターンを始めた時、そこで初めて実際に活動、活躍している弁護士の先生と直に会う機会があり、その先生がとても楽しそうにお仕事をされていて、女性の先生でしたが男性女性の区別もなく生き生きと楽しそうにお仕事をされている姿を当時私は大学2年生だったと思うのですが、とても印象的でしたので、是非このような仕事をしてみたいなと思ったのがきっかけです。学科は政治学科でしたので、伊藤塾に入塾したものの大学時代は基本的に法律の勉強というものはしていなく、中央大学法科大学院の未修コースに入ってから、本格的に勉強を始めたという感じです。
 伊藤塾では在宅インターネットで受講しましたが、あまり真面目に受講していなく、学部の勉強が楽しくなってしまって、どちらかというとロースクールに入った後、当時学部の時に伊藤塾から頂いていたテキストをロースクールに持っていき、ほぼ純粋未修状態であることから、その補助として活用をさせて頂きました。
 例えば医学部だったりする人はお医者さんで医療過誤の事件などをきっかけに司法試験を目指すという流れに直結することもあったりすると思うのですが、私の場合は特段国際政治を勉強していたから、わかりやすく何か国際政治を勉強していたことがきっかけとか役に立ったということはないのですが、国際政治の勉強から法律家になったというのは、最初は法整備支援、東南アジアとか他の発展途上国で未だ法律の仕組みができていない国に、日本の法律家が出ていって、その国の法律を支援するということがあるということを勉強する内に知り、そういう形で国際的なところと法律が掛け合わせる仕事ができたらいいなというところは将来像としては持っていました。

東京パブリック法律事務所新聞vol.1  2021年秋号
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私が今いる東京パブリック法律事務所は東京弁護士会の支援を受けて設立された公設事務所ですので、一般的に弁護士が自分でやっているプライベートな事務所とは少し毛色が違って公的な部分が強くある事務所です。なので、そういった事務所の性質もあってここに来る依頼者の方々は法テラスを利用するような、例えば福祉事務所からの紹介案件である生活保護の方であるとか、一般の事務所では受けられないと断られてしまうような報酬があまり見込めず、大変な作業量が要求されるような、所謂困難案件と言われる案件、あとは刑事弁護の案件、そういったところで幅広く一般のお客様からの依頼を広く扱っている事務所です。そのような方たちはかなり切羽詰った状態で来られます。直接我々の事務所に来られる方もおりますけれども、多くは他の福祉事務所ですとか病院だとか他の行政機関といった支援者、そういったところに先ずは繋がっていて、その方たちが私たちの事務所と地域で繋がりを持っていることから、何とかここに辿り着いてくれるというケースが多いです。
東京弁護士会がやっているパブリック事務所が東京パブリックと多摩パブリックと北千住パブリックになるのですが、全て同じ流れを汲んでいるという感じです。その中でも東京パブリックの特徴は外国人の方の専門チームがあるという点です。私はその所属ではないのですが、何人かの弁護士で英語の案件であるとか中国語の案件だとか日本語がネイティブではない方の案件を中心に専門的に取り扱っている外国人・国際部門があったりもします。

弁護士の仕事としてのやりがいは、一番はクライアントの方から無事に終わった最後の「ありがとうございました」という言葉、これがとても嬉しいです。離婚事件だとか、女性の方の案件が私の場合多いのですが、最初に相談に来られた時はどんよりしていて暗いような方が、少しずつ相談や打合せ裁判などを重ね時間が経過するにつれ、本来の自分の明るさを取り戻していかれ、最後は人が変わったかのように見違えるほど明るく元気になっていかれる姿というのを何度か見させて頂く機会があり「弁護士をやっていてよかったなと」思います。
若い弁護士1年目2年目の時などは、依頼者の方が目の前で泣かれていて、自分もつられて泣いてしまい、大きく感情を持っていかれるということもあったのですが、先輩弁護士からも「距離が近すぎるとよくない。弁護士としてもプロの仕事ができなくなってしまうから、プロとしても距離をとって、きちんと分けて考えるように」と指導を頂いたこともあって、最近では良い意味での距離感を常に意識して、自分も当事者目線に立つのではなく、あくまで弁護士としてプロの立場でアドバイスができるように心がけていますので、メンタル的に苦しむことは少なくなったと思います。

今でも伊藤先生(塾長)の憲法の訴訟ですとか、色々とニュースをみて、伊藤先生の活動に触れる機会があるのですけど、その度に初心に戻れるといいますか「伊藤先生もこうして頑張っておられるのだから、自分も自分の持ち場で頑張らないといけないな」と、先生の姿を見るたびに初心に戻って頑張ろうと気持ちを新たにできるといつも感じています。先日の憲法訴訟でも升永英俊先生(TMI総合法律事務所)と活動されていて凄いなと思いました。
 
私は個人のお客様を扱うことが多いからかもしれませんが、人の話を聞く力といいますか、人の話を聞いて、その話される言葉をそのまま表面的に鵜呑みにするのではなく、通常は皆さんその言葉の背景として色々な思いがあって、そこから一つの言葉が出てきているけれど、もしかしたら本人が一番言いたいこと聞きたいこと訴えたいことは、その言葉の背景にある、言葉に表されていないことにあるかもしれないことから、常に注意深く話を聞きながら、その言葉を鵜呑みにするのではなく、本当にこの人が言いたいこと訴えたいことは何なのかということで背景を探りながら、想像力を持って話を聞くことが大事かなと思います。その力は経験を積むことによって力がつくということもあるとは思うのですが、むしろ経験がつくと逆に前の人がこういうことだったから今回もこうであるだろうと悪い早とちりをしてしまうこともあるなと最近私も自戒をしていて、それよりも1年目とか新人だった頃に、本当にまっさらな気持ちで真剣に向き合って話を聞いていた時のほうが、話をより引き出せるといいますか、本人の背景にあるものを見ることができていたかなという思いもあるため、下手に慣れて決め打ちをしたりしてしようにと自戒をしています。

最近弁護士業界、司法試験業界において弁護士はお先が真っ暗だとか、稼げないとか、苦しいなどとネガティブなイメージが先行しているような気がしています。ただ私がロースクール在学期間中も実務家の先生たちも「巷ではそう言われているけど、そんなことないよ。僕のやっている仕事はこんなふうに楽しく、やりがいがあって、勿論お金も稼ぐことができて、とても夢のある自由な仕事だから是非君たちもこの業界に夢をもって入ってきて欲しい」ということを何度も繰り返し伝えて頂いて、それが勉強の支えになりました。私も実際に合格してこの業界に足を踏み入れてみて、本当に弁護士というのは自由且つやりがいがあって、楽しく、勿論その分、責任感もあってストレスもかかることもあるのですが、それを圧倒的に凌駕するやりがいとか楽しさのある仕事だなと日々痛感をしています。勉強最中は辛いし大変だとは思うのですが、そういう世間のネガティブなところに気をとられすぎずに、実際に活躍されている先生達のお話を聞きに行くなどポジティブな情報発信をしている先生達になるべく触れて頂きたいと思います。弁護士というのは楽しい仕事なので、早く皆さんに味わって頂きたいと思っているので一刻も早く合格をして頂きたいなと思っています。

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