難問解決の喜び、それに対する感謝、社会貢献の実感といった機会が恵まれた職業

石原光太郎先生

経歴  2002年 埼玉県立熊谷高等学校卒業     2007年 早稲田大学政治経済学部(経済学科)卒業
    2010年 東京都板橋区役所入庁
    2015年 司法試験予備試験合格
    2017年 司法試験合格
    2018年 司法修習(第71期)
    2018年 田島・寺西法律事務所入所

※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

石原光太郎弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

私は、もともと大学は法学部ではなく、今まで法律をそれほど勉強した事はなかったのですが、社会人となり地方公務員として働くなかで、仕事上法律に関わることが多くあり、法律を身近に感じるようになりました。他にも司法試験を目指している友人がいたり、親戚に弁護士がいたりなど、そのような方の存在に刺激を受け法律の勉強をしたいと思うようになりました。それと、職場で一緒に働いていたアルバイトの方も知り合いの弁護士のお話を聞かせていただくことがありました。法律の勉強に関して親近感を持ち、地方公務員として法律に結構関わる機会がある中で、キャリアアップの上で法律の勉強をしてみたいとの思いが最初に芽生えました。
大学は早稲田の政治経済学部出身なのですが、法律の勉強は公務員試験で民法とか憲法とか、そういったところで勉強をする程度でした。そこで初めて法律の勉強に触れる機会があったという感じです。
私はチャレンジしようと思ってからいろいろな情報に触れ、法律の勉強してみたいなと思った時、更に色々な情報収集をしました。その際、色々な受験指導校のガイダンスにも行きまして、伊藤塾の伊藤先生のガイダンスに参加して予備試験の存在をその時初めて知りました。働きながらでも勉強しながら誰でも平等に開かれた予備試験というルートがあるということを知って、これは働きながらでも充分目指せると思いました。当初は単純な好奇心で始めたところがありましたが、勢いで飛び込んだという形ですね。
そもそもロースクールは考えていなくて、それは何故かと言うと私は家族が当時からいたためです。勉強を始めた頃には子供もでき家族がいたので、家族を養うだけの生活を確保するという前提があるので仕事を投げ打ってロースクールに行く決断には至らずに予備試験1本でやっていました。
時間は正直限られているので、通勤の時間ですとか昼休みに少し勉強したりしました。ただ私のモチベーションとしては細かい時間を集めてベストを尽くすというものでした。時間が限られているので不要な事はできないなと言う意識が強くありましたので、それが逆に良かったのかもしれません。合格の最短距離はどこかというのを常に意識してやっていました。
 
予備試験ルートで合格した私からすると難しいという意識はあまり無いのですが、運とかもありつつ何とか問題のレベルに合わせて勉強をしていった感じです。予備試験の合格率を見たらすごいなと思いますよね。ただ方向性さえ間違えなければ一定の合格人数みたいなのはしっかりあって、択一問題であったら○×ですし、論文だったらどのレベルの答案が書けるかというのは確実にあるので、そこを超えれば合格すると思います。社会人で時間がかかっても、方向性さえ間違えなければ合格できる見込みはありました。
合格水準を常に意識しながら、そこから逆算し且つ寄り道せずに最短で効率的に受かるためにはどうしたらいいのかを考えて勉強しました。塾長がよくお話してくれた「ゴールからの発想」というのを活かしました。他の項目でも言えると思うのですが、仕事をする上でも何する上でも何か結果を出すということに関してはとにかくその発想が大事であると思います。もちろん趣味において、そういうことを考えずにやる楽しさは人生にいくらでもあります。ですが、こういった仕事や何か結果を出す、目標に向かって頑張るということに対しては非常に大事ですし、そこを常に意識しながら自分の行動を常に監視しつつ、勉強することはゴールための行動で、この行動が役に立つのか、そういった日々の行動とかが洗練されていき自分でもなんだか気持ちよくなっていったというところはありますね。それが現在の仕事にも役に立っていると思います。

私が在籍しているのは田島・寺西法律事務所という事務所でして、代表の田島弁護士、後は寺西弁護士とパートナーの遠藤弁護士を中心に約 10名程度の弁護士で構成されています。業務内容としては企業法務を中心に一般民事や破産、刑事事件など幅広く対応しております。特色としては、企業の内部統制ですとかガバナンスの部分に注力しております。代表弁護士の田島が代表者を務めているフェアリンクスコンサルティングという内部通報の外部窓口を受け持つ会社が併設されています。企業内の不正調査、不祥事が起こったときの対応ですとか調査等を企業の内部統制をする会社です。企業の継続的発展というのを支えていくようなサポートを幅広く提供しています。私の担当業務としては顧問先企業の企業法務を中心に、契約書の確認ですとか取引先との法律問題や相談、ビジネススキームの相談、後は従業員の労務関係ですとか顧客のトラブル、それがこじれた場合には訴訟になったりするので、調査やそれに対する検証です。そのような企業法務が中心となります。
他には一般民事ですとか、刑事事件も担当したりします。私は企業法務をやって最も意外だったのは、刑事法の知識、刑法、刑事訴訟法の知識は企業法務でも大事だなということです。一見直接は関係ないのですが、やはり必ず企業内には不正でしたり、相手方でもそうですし、一線を超えていけないところを踏んでくるケースというのは必ずあります。その時に刑事の知識、特に刑法、刑事訴訟法の知識というのはとても大事になってきます。脅迫めいたことを取引先が言ってきたり、お客さんが不正な要求をしてきたりとか、そういったところで刑事の知識を確実に使うことになるので企業法務を目指される方でも刑法、刑事訴訟法は必ず使うのでしっかりと学んでおいてほしいと思います。
企業法務において、法律知識は大前提で法に触れるか触れないというのはもちろん全体で押さえなければいけないポイントなのですが、法に触れない中でどういった選択をとっていくのが合理的かというのが非常に大事になってきます。ここは受験生の時になかなか考えられない場所なのですが、適法か違法かと言う観点と、あとは妥当性と言う意味です。妥当なのか、それも法的には適法違法なのか、フレームで捉えるとどちらとでも捉えられる領域なのですが、それが行き過ぎると違法になってしまうような論点は確かにあります。実際に現場の方が迷われる所なのは、自分がどっちを選択するのが合理的なのかという判断です。そこは弁護士のリーガルマインドが本当に活きるところだと思います。法律知識が直では無い話なのですが、リーガルマインドというのは利益と利益を天秤にかけた時、どっちにメリットがあるのかメリットデメリットを比較して、どちらにその天秤を倒すのか、その判断能力が企業の合理的な選択に必要とされていると思っています。したがいまして、そこは弁護士ならではのリーガルマインドの使い方です。これは勉強していたときには全然意識していなかったのですが、こっちの選択をとったら適法違法と言う観点の考え方ではないのですが、どれだけ手間がかかるか、どれだけコストがかかるのか、といった事実上の部分も非常に弁護士は求められています。そういったところにリーガルマインドを使っていくような力が求められているのかなと思います。

弁護士の仕事のやりがいを感じる瞬間につき、これはよく言われることだと思うのですが、クライアントから感謝され、役に立っていると感じる瞬間です。どんな仕事でも、私が社会人になって地方公務員として働いていた時も、あらゆる仕事が社会の役には立っているのだと思います。ただその感謝されることを感じる機会というのは少ないと思います。回り回って絶対に誰かの役に立っている事は頭ではわかるのですけれど、それを感じることができる瞬間は本当に限られていて、その瞬間は本当に喜びで満たされる時だと思います。
私が受験生の時はなかなか意識できなかったのですが、依頼者は人生をかけ、会社の社運をかけ、本当に悩んでいるため、それに対して弁護士が知恵を絞って妥当な解決方法や問題処理を行うことになります。そうすると本当に心の底から喜んでくれます。そういった機会へ携われる職業はなかなかないと思うので、そのような意味で本当に良い仕事をしたのだなと、自分の仕事はこれだけ喜んでもらえるものだったと感じられる機会がとても多いです。社会の役に立っていると感じられる瞬間は何事にも変えがたい喜びです。よく言われることではあるのですが、本当にやりがいを感じるなと思います。

実際に法律の勉強しているときには条文、判例の学習というのが中心になると思うのですが、文字情報なのでどうしても無味乾燥したような世界に見えてしまうことは多々あると思います。弁護士というのは最も当事者に近い法曹だと思います。裁判官、検察官も当事者の悩みをいかに解決していくかと言うところに注力されているのですけれども、弁護士の特徴はとにかく当事者に1番近く、当事者の悩みにダイレクトに触れることだと思います。条文とか判例とかも実はその当事者の悩みというのが全ての出発点です。色々な人が悩み苦しんだから法律が作られた。色々な人が悩み苦しんで裁判所に訴えたから判例が作られた。すべては当事者の悩みです。それに寄り添う弁護士等を含め、一緒に頑張って、それで法律が作られたり判例が作られたりしてという事を日々実感しています。当事者の悩みをいかに解決し、その中で社会が変わっていく一端を担えるといった、なかなか大きな仕事だなと思います。
 
伊藤先生が常々おっしゃっていたことなのですが、ゴールからの発想、論文回答の法的思考法、あとは精神的な部分。主にこの3点は実務の現場にも直結しています。
まず1つ目のゴールからの発想というのは、限られた時間で限られた能力で結果を出すための司法試験ではありますが、日々の仕事も全く同じだと思います。限られた時間いろいろな業務があって、期限等がある中で結果を出していく。そのために必要な準備をし、最短ルートがどこにあるか、これは資源を最適化するために不可欠な発想法なので、非常に役立っているかなと思います。
2つ目は論文回答の法的思考法なのですが、小さいところから言うと問いに答えると言うのはよく伊藤先生が論文指導で大前提としておっしゃっていますよね。これは実務でも当たり前なのですが非常に大事です。クライアントの相談内容に出てくる問いに答える、裁判官から言われた問いに答える、何事もそうですが、定石と言われるパターンがあって、そこから修正していくという発想の仕方があります。まず原則をしっかり押さえてそこから修正していく、これはクライアントからの相談ですとか、そういった中でも原則そのものはもちろんありますけれど、そうではないことも多くあったりもします。司法試験の問題パターンと同じなのですが、条文や判例、文献へのアクセスや、必要な趣旨目的、そういった原則をしっかり押さえた上で、その中で今回の相談の内容はどこに位置づけられるのか、どういった修正のあり方が考えられるのかという発想です。これは日々論文の学習で伊藤先生とやっていたそのものです。あとは法的三段論法です。本当にあらゆる問題解決、これは法律には留まらないと思いますけれど、具体的な事案からそれを解決するためのフレーム、それを導き出すことです。これはあらゆる場面で使えます。
最後の3つ目は精神的な部分なのですが、意外とこれが大事だなと思います。受験時代もそうですし、今も本当に思います。伊藤先生が「最後まで絶対にあきらめない」といつもおっしゃっていましたけれども、人間は気持ちで動いているので苦しいなとかきついなという時とか、仕事の中でもこれどうやって解決するんだろうとか、こんな大量の仕事どうやって処理するんだとか、そういった場面というのは絶対にあります。そういう時ほど絶対に諦めないという気持ちを持って頑張る。そうすれば絶対に答えは見えてくるという姿勢ですね。これは受験のきついときにもそうですし、未だに大切だなと思いますね。
法律の知識や考え方も非常に大事ではあるのですが、それだけで人生うまくいくわけではないと思っています。精神的な部分でしたり対人関係もそうですが、どうやって仕事をこなしていくかを考えた時、技術だけでうまくいかないところも多いですからね。社会人として時間がない中で勉強をした経験も本当に役に立っているなと思います。中々一筋縄にはいかず13時間程度の勉強でやっていただけですから「いつ終わるのだろう」とか「本当に合格できるのだろうか」とか、そういったことは頻繁に思っていました。伊藤先生に励まされながら続けられたと思います。

法律家は人の人生そのものに関わる仕事です。自分の知らない人生、自分が今まで見たことのない生き方、そういった見たことのないジャンルの仕事や社会的な現象に日々接触します。初めて見るものがほとんどです。なので、そういったものを見たときに「どう思うか」ということが先ずは大事なのかなと思います。初めて見た物事に対し、好奇心を持って向かえるかどうか、これは非常に大事な力といいますか特性なのかなと思っています。例え未知の会社の仕事でも理解する上で「こういう仕事があるんだ」「あの仕事はこういう裏があってこういうふうになってるんだ」そして、「面白いな!」と思えることは本当に大事です。好奇心を持って取り組めるというのは大事かなと思います。
後は先程の話とも通ずるのですが、しっかり自分をコントロールして自主自律の精神を持って、最後まで諦めずに責任感を持って仕事ができるというのは非常に大事な力だと思います。法律家はタフな局面が非常に多いです。当事者が本気で悩んでいると、それに本気で体当たりして、その方の方向性を示して問題を解決しないといけないわけです。その中で色々なストレスも受ける場面であるとか、きついなという場面も日常的にあります。そんな中でも自分をしっかり信じて、信念を持って最後までやり通せる、途中で折れずに最後まで諦めずに意見を通す、そういった力というのは大事です。これも司法試験の勉強を通じて養われる部分があると思います。きついなと思う瞬間があった中で最後までできた信念を持ち「絶対に合格するんだ」と思い、それが実現できたというのは、司法試験の勉強をやって良かったなと思う理由です。
 
法律家というのは重たい使命感を持って他人の人生に関わる重大な仕事をする職業です。これは綺麗ごとではなく、生半可な気持ちではできないと思います。受験生の時に生半可な気持ちで勉強して合格してしまう人もいるかもしれないですが、実際実務に出ると本当に本気で切羽詰まっていて悩んでいるクライアントですとか当事者に対面します。そこで難しい問題を解決した喜び、それに対する感謝、社会貢献の実感、そういった機会が本当に数多く恵まれています。人に感謝されると言うのは人間としての1番の喜びだと思っています。自分の仕事が社会の発展に繋がるとまでいわなくても、1人の方の人生をしっかりと導いてあげられる。あらゆる事件でそうです。その人の人生の一大局面を、1ページをしっかりと刻んで、その方やその会社が次に進める。その道案内ができる。それが法曹の非常に大事な、そして非常に楽しい部分だと私は思います。その中において、もちろん法律の知識である勉強は大前提にはなっているのですが、人の人生を扱うという事、その重たさを意識しつつも楽しんで前向きに取り組んでいただければと思います。

田島・寺西法律事務所

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