本屋で見かけた「宇宙条約」の四文字が、弁護士になる道の出発点

久保真衣子先生

経歴  2000年 私立安田女子高等学校卒業     2006年 慶應義塾大学総合政策学部卒業
    2016年 慶應義塾大学法科大学院修了
    2017年 司法修習(東京)
    2018年 弁護士登録(第一東京弁護士会所属)
    2018年 法律事務所ホームワン入所

   
          ※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

 小学校時代には人を助ける仕事がしたいとは思ってはいましたが、色々な職業がある中で、私は血を見るのが苦手なため医師になるのは向いていないと思いました。そのような中、幼馴染のお父様が弁護士をされているのを見て「かっこいいな」と思い、弁護士という職業に興味を持ったのがきっかけです。大学への進学を考える際、法学部に行くかどうか迷っていたとき、たまたま本屋で六法を開いてみたところ、「宇宙条約」という文字を目にしました。「宇宙条約とは何だろう」と疑問に思い、「勉強してみたい」と思いました。学部としては法学部で学ぶようなのですが、当時受験の際、法学部には合格しなかったため環境情報学部に入りました。そこで宇宙法の先生に出会ったのですが、その学部では国際法をメインに勉強していたということもあり、弁護士というよりは国際機関や学者、研究者の道に進みたいなと思っていました。たまたま大学4年生の9月、福岡で宇宙法の学会があり、世界各国の人が日本に来てそこでお話をされる機会がありました。当時、堀江貴文さんが宇宙旅行ビジネスを立ち上げるという話があり、その学会に来ていたので質問をしてみたところ、「宇宙法なんてグレーゾーンがいっぱいあるから好き勝手やればいい」と仰っていました。それを聞いて、「そういうのって何でもいいというわけではなくて、ルールはルールでリスクなどきちんと考えないといけないのに」と思い、その言葉がきっかけで予防的な法務に強い興味を持つようになりました。当時のゼミの先生にも、「久保さんは弁護士に向いていると思うから頑張ったら」と後押ししていただいて、司法試験を目指そうと思いました。

 当時、予防法務は馬鹿にされていたようなところが在りました。弁護士の先生から、「何を言っているの?」などと笑われたりし、「そんなに私ダメなこと言っているのかな」などと思っていたのですが、今20年経って予防法務が当たり前の時代になったので、当時の私は時代の最先端を行っていたのかな、なんて思いますね()


 私の所属する法律事務所ホームワンは過払いとか債務のイメージが強いらしいのですが、ちょうど私が入る時に家事事件の分野も力を入れたいということで、今私が主に担当しているのは家事事件と使用者側での労働問題となります。扱う案件の中で一番多いのは離婚事件です。女性弁護士の数が少ないので女性に相談したいという依頼者の方が多いので件数が増えています。
 私の友達などもそうなのですが、家事事件などをやっていると疲れてしまい、依頼者本人と一体化してしまい嫌になってしまうといった話をよく耳にします。その点私は仕事として割り切っているので結構ドライだと思います。ズバズバ言いますし、はっきり物を言いますね。
 悩みを抱えている人は陽のオーラの人などいなく、負の感情を持って皆さん来られ、対応をすることになります。私自身パワフルな部分があるので負の部分を跳ね返しているというのと、前を見て歩む人を応援したいので、私の依頼者は前を向いている方が多いかなと思います。
 期が上の先生の背中を見て育つじゃないですけど、うちの事務所には弁護士が11人在籍し、データベースが事務所内にもあって他の先生のデータを見ることができるようになっています。どのようなものを使っているのか調べられるので書き方を見せてもらったりし、自分で吸収しながら勉強しています。事務所でやったことのない案件の場合は委員会などがあるのでその委員会の先生に「こういう場合ってどうするのですか」と教えを拝借したりとか、その専門の事務所に電話をかけたりとかもします。
 知ったかぶりすると後で首を絞めるのは自分なので、わからないっていう体で裁判官にも正直なところ聞いたりしています。友達関係で裁判官の友人とか検事の友人もいるのでLINEとかで質問したりしています。ロースクールの同期が中心となるのですが、慶應のネットワークもあるのでそれも相まって顔が広いのかなと思います。
 私が思ったこととして、法律系の先生はすごくプライドが高いと思うのですが、姉弁から「プライドなんか捨てて聞きたいことはちゃんと聞かないとダメだよ」と言われて、そこは私もそうだなと思っているので、わからないことは依頼者にも「今すぐには答えられない」とはっきりと言いますし、そう言うことでプライド関係なくわからないことは知っている人に聞く方が自分にもいいし依頼者の方にもメリットがあるのかなと思っています。

 家事事件とかですとお子さんも同席とかされることもあるのですが、そういうお子さんとかが「先生を見て私も弁護士を目指したい」などと言ってくれるときとか、委員会の活動の一環で学校に教えに行くこともあるのですが、そういう時に「法曹に興味を持ちました」とか「自分もやってみたい」などと言ってもらえると弁護士をやっていてよかったなと思いますし、事件が終わって感謝される時、「先生に頼んでよかった」と言われるのが一番やりがいを感じる時かなと思います。
 弁護士って人によると思うのですが、戦略を練る先生とか緻密に考える先生もいると思うのですけど、私の場合は最初からこうしたいと決めてしまうと柔軟性に欠けてしまうと思っているので、その場その場でその時のベストアンサーを選べるようにしたいなといつも思っています。あまり考えていないのだと思うのですが、同期に言わせると考えているらしいので、無意識の内にそう考えているのだと思います。こうだったらいいかなという着地点は自分で考えてはいるので、それに向けては最善を尽くすために常にやり続けています。感謝されるのを目的としたら本末転倒なので、解決して前を向ける人生をということしか考えていないです。
 柔軟に対応しないと機を逃すと言われており、私たちとしてはこうするのが一番いいと思っていても人というのは感情があるので、そこは弁護士でも動かすことができません。無理矢理動かすと自分たちに跳ね返ってきてしまい、逆に恨まれることに繋がるので私たちは感情までコントロールせず道筋だけを示してあげるようにしています。

 苦労している分だけ私は他の先生よりメンタルは強いと思っています。折れないですね。大学受験も実は二浪しているのですが、行きたくない学校に行くのは無理なので、行きたい学校を目指させてくれた親に感謝しており、そこは浪人してよかったと思います。だからこそ勉強に向かうのも平気ですし、引きこもる人が多いご時世ですが、私はどうやら楽しそうに見えたみたいで、当時親の会社の社宅に住んでいたのですけど「うちも娘を浪人させました」などと言われたくらい結構楽しそうに浪人していたらしいです。(笑)

 法律家に向いている人は「めげない人」です。私たちの業界は職人気質なところがあります。そうすると私たちが最初にファーストドラフトをあげると上の先生から戻ってきてしまいます。それは裁判官であっても検事であっても同じなのですが、赤を入れられることが嫌な人が多いです。「なんで直されなければいけないのですか」という主張をする人もいます。上の先生が赤入れしてくれるのはありがたいことなのですが、それを言われて折れてしまう人も中にはいたりします。だから何があってもめげない人、それで自分で立ち上がれる人っていうのが向いていると思います。謙虚さがかなり必要だと思います。私たちは資格を取ったらみな対等なので議論という面ではいいと思うのですけれど、周りからの注意とか指摘を素直に受け取れる謙虚さが必要で、そうしないと自分も成長していけないと思います。

 弁護士の仕事は派手そうに見えて実は地味です。緻密な作業の方が多くて、司法試験を勉強している中で「何をやっているのだろう」と思うことが多いと思うのですが、合格後は今までやってきたことを使いながら自由に泳げるようになりますので、絶対合格するという気持ちで勉強を続けてもらえればいいなと思います。

法律事務所ホームワン

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