人に共感し、人のために働けることが何よりも嬉しい毎日です

三輪 和彦 先生 (弁護士)

理系大学院から法律の世界

私は、大学や大学院で法学や社会科学ではなく、自然科学、特に、固体物理学の勉強・研究をしていましたが、途中で体調を崩して大学院を辞めました。その頃に、私は書店で伊藤塾長の「憲法入門」という本に出会いました。伊藤塾長の本の内容は理系の私にとって非常に新鮮で、読んでいくうちに憲法や法律に携わる仕事をしたいと思うようになりました。そこでいろいろ調べていた結果、法律家になりたいと思って司法試験の受験を始めました。
私は、司法試験に合格するため伊藤塾の名古屋校で学習を始めました。法律の「ほ」の字も知らなかった私にとって、伊藤塾の講義は平易なところから段階的に教えてくれるわかりやすい講義でした。この講義のおかげで、私は基礎からイメージを深めて理解・記憶することができました。
受験時代の私は、基本に徹して勉強していました。基本には、法的知識だけではなく、法的思考、法的論述も当然に含まれます。基本とは、具体的な問題、未知の問題に出会ったときの知識、思考の出発点になるものです。例えば、「法的三段論法」という考え方(規範を立てて、事実を規範にあてはめ、結論を出す)がありますが、これは「社会的事実等に経験則を適用して、自分の請求に必要な事実(主要事実と言います)を認定・推認する」という事実認定の考え方に応用できます。また、司法試験で出題される法律は一部の重要な法律に過ぎません。しかし、実務で初見の法律を見た際に、司法試験時代に培った法律の概念を用いて未知の法律の意義を想像・理解することができます。例えば、民法で出てきた条文と同じような条文が消費者契約法の条文に出てきた場合、この消費者契約法の条文の趣旨は、民法で見た条文と同じだろうと思うことができます(もっとも、実務家の場合、そのことが本当か必ず確認しますが)。
このように基礎の考え方が身に付いていれば、学習経験のない科目でも応用が利きます。受験勉強時代の基本の勉強は、試験に受かるためだけではなく、実務に出てからも重要であり、しっかりと勉強する必要があると思います。法学部出身ではない私にとって伊藤塾で学んだことの中で実務に役立たないことは一つもない、と言っても過言ではないと思います。

実務で役立つ、受験時代に学んだ思考方法

私が今所属している事務所は一般民事を取り扱っている事務所ですが、主として交通事件を多く担当しています。私は弁護士登録から半年しか経過していませんが、交通事故、名誉毀損、不動産分割、破産、離縁、相続など様々な分野の事件を担当しています。そんななか、私は依頼者との打合せ、法廷での弁論・主張活動、和解手続、相手方との交渉、現地調査など、事件を解決するために必要な業務を広く行っています。どれも大変です。特に大変だったのは、今まで学んでいなかった事例に対し法律構成を立てて主張したこと、未知の事象について新たな法律構成での主張を考えることでした。特に後者は、教科書に出ていることだけでは不十分であり、新たに考えなければならなかったのですが、その際には、受験勉強時代の思考方法を用いてなんとか乗り切りました。
私にとって、自分の能力が磨かれると思うのは、実務で実際に動いているときです。もちろん、弁護士会の研修などもあり、私はそれに積極的に参加していますが、実務でやることが一番の研鑽です。やはり自分で動いて苦労しないと覚えられません。
なお、皆さんが試験勉強で答案を書いたりするのは大変だと思います。しかし、基本書やテキストを100回読んだとしても合格する能力は身につきません。実際に実践してみて下さい。短答式試験を解く。答案を書く。実際に判例の原典にあたる。どれも大変だと思いますが、そういう苦労が力になると思います。

人に共感し、人のために働く

弁護士は基本的に人の不幸を商売にしていますから常に緊張感がありますし、正直に言うと、罪悪感を覚えることもあります。そんな中で当事者の心情に共感し、その人の利益になるように行動することは非常にやりがいがあります。依頼者に共感し、その人の力になれるということは、仕事をしていて一番嬉しいことです。私は、共感力は弁護士にとって非常に重要な能力だと感じています。 
将来は自分で興味の持てる専門分野を作りたいです。今はさまざまな情報を収集して興味の持てる専門分野を探しています。また、通常の業務においても依頼者に少しでも納得感を与えたいと思っています。例えば、解決の手段として経済的利益を考慮して依頼者を説得することはありますが、そのような場合でも依頼者の意思や思いを大事にしたいと思っています。
このような弁護士のイメージは伊藤塾の「明日の法律家講座」で学びました。伊藤塾では、バックナンバーを無料で視聴することができたので、私は頻繁に視聴していました。実際に実務に就いている先生方が具体的に語る業務活動は具体的で迫真性に富んだもので、弁護士に対する具体的なイメージを描くことができます。また、「明日の法律家講座」は、受験勉強のモチベーションの維持にも役に立ちました。

なりたい実務家のイメージを具体的につかんでください 

弁護士の世界は大変厳しいものです。刑事であれ、民事であれ、依頼者はその訴訟により大きく人生が狂うということがあります。その点について覚悟を持って勉強を始めてほしいと思います。しかし、だからと言って過剰な心配をすることはないと思います。「明日の法律家講座」などで実務家のイメージもつかむことができます。法科大学院時代や受験時代から、受験勉強だけでなく自分で積極的に法曹や事件との接点を持つようにすれば、心配は要らないと思います。是非、積極的にチャレンジして自分の夢を実現してください。

(2012年4月・記)

【プロフィール】
2001年 東京大学教養学部基礎科学科 卒業
2008年 旧司法試験 合格


■事務所プロフィール
日比谷グリーン法律事務所
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■事務所の特長
事務所では交通事件や一般民事事件を中心に扱っております。また、事務所の弁護士は、通常の業務だけではなく、弁護士会等の公益活動にも広く参加することを心がけております。
■所属弁護士会
東京弁護士会