毎日が新しい日々。弁護士は人生を賭けるに値する仕事です

野武 正一郎 先生 (弁護士)

大手建設会社を辞めて専業受験生に

祖父が、「少年を導き十数年」と新聞にも取り上げられるような熱心な保護司でした。私も高校生のころから法律に興味を持ち、大学は慶應義塾大学法学部法律学科に進学しました。司法試験も考えましたが、今一つ自信がなかったのと、早く社会に出て揉まれてみたかった気持ちが強かったので、1989年に、縁のあった大手建設会社に就職しました。
本社・支店勤務・現場勤務を経て、20代の終わりに北海道へ転勤になりました。初めて住む地で特に親しい友達もなく、時間的な余裕がありましたから、会計の勉強を始めてみました。とすると、学生時代にはなかった感覚ですが、勉強すること自体が楽しくなりました。 1997年暮れ、31歳の時、再び東京への転勤を告げられました。私は、この頃、波風立たずここまで来てしまった自分自身に「何か違う」という感覚を抱いていました。将来に対する漠然とした不安と言ってもいいでしょう。私は転勤を告げられたこの機を捉え、「司法試験を受験するので退職する」と宣言してしまい会社を退職しました。9年間の社会人経験は、私に自信と勇気を与えてくれたようで、この時は司法試験もやれそうな気がして、昔見た夢を実現させることにしたのです。仕事も辞めて本格的な受験勉強を始めるのですから絶対合格したいと思い、受験指導校での勉強を決め、自分の気持ちにピンときた伊藤塾での勉強を始めました。 
1998年4月から、伊藤塾で6期本科生として勉強を始め、伊藤塾長のライブ講義を中心に受講しました。学生時代からブランクも長かったので、知識はゼロ同然でしたが、伊藤塾長の講義は、論点や判例についてわかりやすく丁寧に教えていただき大変勉強になりました。テキストもビジュアル化され使いやすく、情報シートなど気に入ったテキストは実務に就いた今でも見返しています。
 講義では基礎を大事にと言われていたので、基本的な概念を早くから覚える努力をしました。これから受験される方に強調したいのですが、法律の学習には記憶が重要です。どの科目も体系的理解が重要ですが、各重要概念の定義を正確に記憶していれば、概念の体系的位置づけを間違えたりしませんし、答案が安定して点数も付きます。言うなれば、答案冒頭に定義の正確な記述があれば、合格の推定が働くとも言えますし、答案冒頭がフラフラの定義で始まっていれば、その結果は推して知るべし、といったところでしょうか。
私は、本科生のコースが終わった2000年春に、初めて旧司法試験を受験しました。その後、法科大学院ができたことを機に、慶應義塾大学法科大学院の既修コースに入学しました。
法科大学院では大学時代に戻ったようで楽しかったのですが、もう後がないので、楽しんでばかりはいられません。旧試験での失敗体験を利用し、試験に落ちる可能性を最小限にすることで、一発で合格できるよう十分注意を払い、相応の努力もしました。試験まで必死で勉強するのは当然の前提として、試験当日に最高のパフォーマンスを発揮するには、メンタル面が一番重要な要素だと思い、試験中平常心が保てるよう様々なシミュレーションもしました。

総合力に長けた弁護士を目指して

弁護士としての就職活動は、社会人経験が活かせるところを探していたのですが、高校の先輩という縁で今の事務所に出会い入所しました。
現在の仕事は、事務所の顧問先の仕事が中心で、契約書のチェック、会社法を巡る各種案件、労働問題、債権回収にまつわる案件のほか、交通事故、相続問題、夫婦間の問題など一般民事全般です。
また、事件の性質上訴訟になじまず、相手方当事者と交渉を繰り返せねばならない案件もあります。訴訟によらない分、書面・書証等の負担は減りますが、気も労力もつかうため、苦労することが多いです。場合によっては、いわばカウンセラーのような立場で法律問題を超えた交渉や調整を行うこともあります。
このような交渉案件では、依頼者の利益を意識しつつ相手方の言い分も聴くので、極めて微妙かつ難しい問題を内包しています。訴訟や調停に付して、と形式的に割り切ったほうが、弁護士のやり方としては適切なのかもしれません。しかし、当事者が求める解決を真摯に検討し、それが訴訟によるものではないと考えるなら、誠心誠意その解決に向かって努力すべきだと思います。
弁護士になり、いろいろな場面で「専門は何ですか」との問いかけを受けます。私は得意な専門分野を持ち合わせていませんが、今は「交渉が上手な弁護士」になれたらと思っています。抽象的な表現にはなりますが、人の話を的確に理解でき、相手との交渉に長け、適切な解決を導くことで依頼者に満足してもらえる、このような弁護士を目指しています。 
私はたまたま社会人経験があるため、社会通念上の常識、会社のルールなどをイメージし易い点で、企業関連の依頼者の共感を得やすいのではないかと思います。また、読書レベルですが、法律以外の分野、例えば、経済、経営、歴史、文学、自然科学などにも触れ、さまざまなバックボーンを身につけることで、総合力に長けた弁護士として、依頼者が真に何を求めているかをよりよく理解し、適切に対応できるような弁護士になりたいと思っています。

人生を賭けるに値する仕事

弁護士業務は、決まり切った正解がなく自分のやり方で仕事ができる点が魅力です。依頼される案件もどのような事件が来るかわからず、毎日が新しい日々です。このように司法試験は人生をかけるに値する、十分見返りがある挑戦です。 
私は、学生時代には司法試験など到底無理と思っていましたが、社会人生活を送るうちに、自分が社会でも十分通用するし社会から求められている、と自覚することができて、司法試験の受験を決意しました。やればできるかは、その人次第ですが、少なくとも始めない限りは決して受かりません。
以前法律の勉強していた方や、法曹が夢であったという方は、司法試験にチャレンジしてみるのもいいかと思います。

(2012年4月・記)
 
【プロフィール】
1989年 慶應義塾大学法学部 卒業
2007年 慶應義塾大学法科大学院 修了
2007年 新司法試験 合格

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