伊藤塾長と岡口基一講師が、予備試験・司法試験受験生の皆さんに向けて、要件事実の勉強法について対談しました。
受験生の皆さんにとって、大変有意義な内容となっています。ぜひご覧ください。

動画公開しました!
【講座の特長】
動画全編は本ページの下部でご案内しています。
▼収録の一部抜粋の内容をご案内します。
【伊藤塾長】
皆さんこんにちは、伊藤塾塾長、伊藤真です。今日は4月から伊藤塾専任講師を務めていただいている岡口基一先生に来ていただいています。「予備試験受験生のための要件事実講義」を担当していただくのですが、その講義の中身、どんなふうに進めていくのか、そんなことについてお話しいただけたらなというふうに思っています。
 
【岡口講師】
岡口基一です。よろしくお願いします。民事裁判の裁判官を30年ほどやっていましたが、それが終わりまして、これからこちら伊藤塾の方でお世話になることになりました。最近は渋谷の伊藤塾で仕事をさせていだたいています。
この仕事以外に例えば本の執筆や原稿の依頼なども結構多くいただいて、土日はもう全国を駆け巡っていった状況なんですが、私の本業としてはこの伊藤塾の専任講師です。受験指導をどうしたらより効率的なものにできるのか、そういうことを日々考えながらここで仕事をさせていただいています。これからよろしくお願いします。

法曹として最も基礎的な素養、それが要件事実

【伊藤塾長】
ありがとうございます。
岡口先生はずっと昔から教えることにすごく興味関心ありましたよね。例えば東大生の時のお話や、現役裁判官のときにも、そういう教える、教育っていうことはずっとやってこられましたよね。
 
【岡口講師】
大学時代にはあんまりお金がなかったもので、近所の子供たちに勉強を教えてたりしていたんですが、自分自身でも司法試験の勉強をしながらやっていて、あまり時間がない中で明日あの子供たちにいかに効率よく教えるかと考えて、こちらでいろいろなテキストを作ったりとか、そういったことを当時からやってました。そういうことが積み重なって今できてるのかなっていう、そんな感じですね。
 
【伊藤塾長】
人にわかりやすく教えて、その人たちが理解して成長していくっていうこと自体に、やっぱり私たちもそうなんですけど、喜びを感じる。何かそういう素地が元々先生にもありますよね。
 
【岡口講師】
何かそういう機会が多かったんですね。例えば、裁判所事務官の方に、書記官の試験対策として教えて欲しいと言われて、それで皆さん集まってもらって自主的にそういう勉強会を開いていました。そのために、ウェブサイトで答案がダウンロードができるようにしたりとか。まだブログとかもない時代ですよね、その頃からそういったITも活用してやったりしていました。
 
【伊藤塾長】
そうですよね。私としてもこの伊藤塾に来ていただいて、教えること、教育への情熱、思い、そこを先生と共有できるっていうのはすごく嬉しいんですよね。本当に今回良かったなと思っています。

プロである法曹として最も基礎的な素養、それが要件事実

【伊藤塾長】
全然本題とは関係ないですけど、私2018年に「伊藤真が教える司法試験予備試験の合格法」という本を出してその年のAmazonの売れ筋ランキングっていうので、2位になったんですよ。そのときの1位が岡口先生の「要件事実入門」。当時第2版だったんですけど、それが1位で、私がこれで2位。ワンツーフィニッシュみたいな感じだったんです。
私の講義でも先生のご紹介をしたりするんですが、やっぱり岡口先生といえば要件事実じゃないですか。
今回の講座のテーマもそうなんですが、「要件事実」ってそもそも、どういうことなんでしょう。
今日聞いてくださっている方の中には、これから勉強しようかなという方から、やってみたけどちょっとよくわかんないなっていう方までいらっしゃると思うので、まずその辺のことから教えてください。
【岡口講師】
はい。皆さんに要件事実のイメージを持ってもらうとしたらこういう形が一番いいと思っていることがあります。
というのは、我々法律家は生の事実をそのまま訴状とか判決書のような裁判文書に書くのではなくて、一旦法的に再構成したものを書いているんです。それを「要件事実」をイメージするときに思い浮かべていただくと一番わかりやすいと思ってます。
実は本人訴訟といって、弁護士をつけないで訴訟を起こしてくる方々も結構いらっしゃるんですけど、そういう方々は自分で訴状などを書きますね。そうするとやはり生の事実をそのまま書いてくるんです。ですから、裁判官から見るとこれは「本人だな」とか、本人訴訟でも「司法書士の先生に書いていただいてるな」とか。やはり司法書士の先生は専門家ですから、法的に再構成した事実を書いてくるんです。その違いは裁判官になると非常によくわかるんですが、司法書士や弁護士はプロですし、着手金などお金ももらっていますからしっかり法的に再構成した事実が書けないといけないんですね。
要件事実が書けるというのは本当にもうプロとしての法曹の最低限の素養でして、それがきちんと備わってるかどうかを見るのが司法研修所の卒業試験(二回試験)なんです。
現在はそれを予備試験やロースクールでもやるようになってまして、どうして民法の他に、民実(民事実務基礎)という別の科目があるのかというと、民法をやっているだけで、要件事実が訴状にきちんと書けるかというとそうではないんですね。
やはりそれは、生の事実に民法をちゃんと適用し、法的に再構成してしっかり書けるか、その素養があるかどうかを見るのが民実という試験科目です。したがってそういうことができるようになるのが「要件事実」対策というものだとご理解いただけるとよいかと思います。
 
【伊藤塾長】
今お話にもあったように、要件事実とは法曹として最も基礎的な素養であり、特に試験との関係でいえば、司法試験の手前に予備試験がありますけれども、その民事実務基礎科目の中ではそれが試される。ですから、法曹を目指すものは、必ずやっぱりこれは学んでおかないといけない。
 
【岡口講師】
はい、皆さんはプロになるのですから、避けて通れないものだと思います。

「予備試験受験生のための要件事実講義」のポイント1~要件事実を理解する

【伊藤塾長】
岡口先生は、裁判官、実務家として日々現場で要件事実を仕事で使ってこられて、さらに多くの要件事実関連書籍の執筆をされたり、またご講演もされてるじゃないですか。そういう意味でも本当に要件事実のプロ中のプロとして自他ともに認めるというのが岡口先生だと思うんですが、今回の講座の特長をちょっと教えていただけると嬉しいなと思います。
 
【岡口講師】
大きく4つくらいあります。1つ目は一番大事なところなんですけど、要件事実を覚えるのではなくてちゃんと理解するということ、そこをまず一番の主眼にしたいと思っています。
平成23年に予備試験が始まりまして、民実という科目が論文試験でスタートしたんですけど、当初は非常に簡単な問題で割と典型的な要件事実しか出なかったので、それを丸暗記していけば何とかなった時代があったんですね。それが非常に良くなくて、要件事実は暗記科目なんだと思われてしまい、その中でそういう勉強法が受験生のなかで定着していってしまったという感じがします。ところが敵もさるものというか、最近は典型問題が出尽くしたっていうこともあるんですけど、司法試験委員もそういう(丸暗記で臨む)受験生を望んではいなくて、やはり「この人たちは本当にわかってるんだろうか」っていうことで、要件事実を単に書かせるのではなく、「どうしてそういうふうになるんですか」という、むしろロジックの方を尋ねる問題を出すようになってきました。そうなると、丸暗記ではもう全然対処できない状況にもなってきているんです。
ですので、この講義でも丸暗記ではなく要件事実のロジック、「どうして請求要件はこういうふうになるのか」といったことを扱います。ただし、ロジックっていってもしかもそんなに難しくないんですね。割とすぐわかっちゃう。
あとは要件事実というのは「要件」って書いてある通り「法律要件」のことなんですね。ですから試験会場に置いてある六法の条文に書いてあるんですよ、別に覚えなくたって。だから、丸暗記というのは本当に非効率的な勉強法だといえます。
 
【伊藤塾長】
膨大な量をただ覚えて吐き出すだけだと、間違っている可能性がある上にものすごい負担ですよね。
 
【岡口講師】
受験生の皆さんは分厚い本を買って、その本にいろいろ書いてある要件事実をそこだけ覚えてるって言うので、「いやそんなこと六法の条文に書いてあるのにな」と思って。
 
【伊藤塾長】
「暗記」ももちろん必要なこともあるんだけども、ここではそれをぐっと抑えて、むしろ「理解」のところに重点を置く。そのロジックの理解をもってすれば現場で条文を見ながら答案が書ける、そんな感じですね。
 
【岡口講師】
はい。特に近年の試験では、どの要件事実の本にも書いていないような分野を出してくるようになったんですね。
昨年でいえば、民法125条で「法定追認」というものがありますけど、あの要件事実なんかどの要件事実本にも書いてないんです。だけど基礎的なロジックがわかっていれば、それがどういうふうに機能して再抗弁になるっていうのはきちんと説明できるし正解を導くことができる。これからは、要件事実はただ丸暗記するというのではなくてしっかりとロジックを理解して、あとは現場で六法を見ながら自分で考える。その能力が大事になると思います。
 
【伊藤塾長】
一言で言えば「暗記ではなく理解」。私達はよく「盤石な基礎」を固めて、それを現場で応用できるように考える力を身につけようということを他の科目でもずっと言っているんですが、基本的には同じことですよね。暗記で対処するんじゃないよ、覚えることももちろんあるけれども、盤石な基礎、考え方を身に付けて、それを現場の問題にどう適用していくのか。それさえできれば知らない問題が出たとき、初めて見る「こんな要件事実の問題やったことないぞ」というものでも現場で対処できる。
 
【岡口講師】
そうですね。今本当にそういう出題傾向になっていまして、昨年か一昨年の予備試験・口述試験で出題されましたけど、質権の要件事実なんて誰も知らないですよね。でも出るんですよね。ただロジックがわかっている方はその場で考えて正解して合格されてます。
 
【伊藤塾長】
ただそれも考えてみれば、いわば当然の試験内容というか、実務の現場に出たら本に書いてある事件ばかりじゃないですからね、当たり前だけど。新しい事件で新しい問題が起こったときに、実務家として自分で考えて組み立てて整理をしていくというその力がやっぱり不可欠だからそれが試験でも試されますよ、ということですよね。

「予備試験受験生のための要件事実講義」のポイント2~条文にあたる

【岡口講師】
2点目はとにかく条文を必ず見ましょうということで、一つ一つ条文を見ていきたいと思っています。
例えば一例を出しますと、最近の予備試験では主請求だけでなく附帯請求っていうの必ず出てまして、本当に難しくなっています。この附帯請求っていうのは基本的には途中から将来請求になっているのがほとんどですので、そうすると将来請求、すなわち民事訴訟法135条の要件だねって話になるんですね。
しかし、どの要件事実の本を見ても、民事訴訟法135条という言葉すら出てきてないんです。ですから、要件事実本て何か要件事実を羅列してこれただ覚えましょうって書いてますけど実際はそうじゃなく、ちゃんと根拠があるんですね。だからその民事訴訟法135条をちゃんと見ましょうねっていうような感じで、全て条文を一つ一つ見ながら講義を進めていこうと思っています。
そうすると実際の本番で六法があるわけですから、「これあのとき見たな」と思い出しながら解答できますので、条文を見るということは本当に基本に忠実にやっていこうと思っています。
 
【伊藤塾長】
まさに実務家は条文をどう使って適用していくのか、あらゆることをそれに基づいて考えていて、やっぱり条文を出発点とするのは他の科目でもみんなそうなんですよね。ただ、特にこの要件事実っていうのは条文にある要件を正確に理解するということが出発点ですから、逆に言えば、この先生の講義を聞けば、そういう条文の理解、実体法の理解もさらに進んでくると言えるかもしれませんね。

「予備試験受験生のための要件事実講義」のポイント3~実務力を高める

【岡口講師】
3つ目は、実務基礎科目ということもあり、「実務力を高める」という点にも重きを置きたいと思っています。というのは、最近の民実の出題傾向が面白いんですよね。我々実務家がわかっているんだけど、受験生がわからないことというのは実はあって。
例えば、一昨年はこういうのが出ました。「仮差押え」ってありますね。仮差押え債務者が不動産と預金を持ってるんですが、そのどっちを押さえますかという問題。例えばそれが自営業者だった場合、預金なんかを押さえられちゃったらキャッシュフローが回らなくなって大変なことになるから、それはさすがにねってことで不動産だ、みたいに、我々実務家は割と感覚でわかるんですけど、でもいざこれが予備試験に出ると受験生はみんなわからなかった。去年の合格者の皆さんに聞いたら、「こんなのわからないよ」って言われて、受験生はこういうのがわからないんだと知ってすごく興味深かった。
こういうふうに、他にも最近では実務家にとっては常識みたいなものが出題されています。そういうことが本試験で問われてきているので、私が30年実務家としてやってきた、その経験を講義の中でもお伝えしていきたいと思っています。
 
【伊藤塾長】
まさに元ベテラン実務家だからこそできる講義ですね。また、伊藤塾のモットーの一つ、「合格後を考える」ではないですけれども、受験生は当然合格した後実務家になるわけですから、単に合格するだけではなく将来を見据えて、それぐらいのレベルの実務家の常識は、この段階でも共有しておいた方がいいに決まっていますよね。

「予備試験受験生のための要件事実講義」のポイント4~理解した「つもり」を防ぐ

【岡口講師】
最後4つ目、この講義では皆さんがちゃんと理解できたかどうかっていうのを逐一確認しようと思っています。例えば、ある訴訟の請求原因においては、なぜ請求原因はこういうふうになりましたかっていうのを、短い文章で自分の言葉で書く問題を最後にすることにしています。その問題で短文でしっかり書ければ、自分はちゃんとここを理解できたんだなっていうのがわかります。大変なんですけど、毎回抗弁や再抗弁が終わるたびに、どうしてこの抗弁がこういう要件事実だったんですかとか、どうしてこれは抗弁があるんですかということを短い言葉で自分で説明してくださいという意味で、そういう問題を扱うことにしています。
昔の予備試験では、さっきも言った通り、単に要件事実を書けばよかったんですね。それが今は「なぜ要件事実がこうなるんですか」ということが問われている、そこまで書けなければいけないという状況になっています。ですから理解の確認ということはもちろん、そういう問題に対する対策っていう意味もあって、必ず自分の言葉で書くということを、各講義が終わるたびに逐一やっていこうと思っています。
 
【伊藤塾長】
自分の言葉で、しかも短い簡潔なわかりやすい言葉で説明するというのは本当に自分が理解してるかどうかの確認もありますよね。伝えるという意味ではとても大切なことだし、自分の理解も確認する。しかもそこで、「なぜ」というところを常に意識することによって、やっぱり現場でいろんな問題が出たときでも「なぜ」から説明ができるように、そういう癖がついていきますよね。
まさに考える力、理解して考える力をつけていく。そしてそのときにきちっと条文を一つずつ確認をしながら進めていく。そして、実務的な視点・観点も試験でも問われるから、それも織り交ぜながら。そして、自分が理解できているかどうかを自らの短い言葉で書いて確認する。しかも、なぜそうなるのかを理解しているかどうかということを逐一確認していけるような講義にしていくということですよね。
何か聞いてるだけで受かった気になりますね、本当に(笑)単に要件事実の解説をしたりとか、「ここ出ます覚えてください」とか、そういうものとは全く質が違う。本当の意味での要件事実を理解して使いこなせるようになる、そういう講義なんだなということが、今回特長を伺っただけでもすごくわかりました。ありがとうございました。

岡口基一講師 プロフィール

東京大学法学部卒。1991年に司法試験合格。
浦和地方裁判所判事補、東京地方裁判所判事補、福岡地方裁判所行橋支部判事、大阪高等裁判所判事、水戸地方裁判所下妻支部判事、東京高等裁判所判事、仙台高等裁判所判事を経て、伊藤塾司法試験科専任講師となる。
対談動画公開中!
【要件事実って何?】
【教材の紹介】
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