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幸福度を上げる仕事とは間逆で、依頼者のマイナスを回復させるのが弁護士の役割

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清水 智先生

経歴

平成18年 群馬県立桐生高校 卒業
平成22年 日本大学法学部 卒業
平成24年 明治大学法科大学院 卒業
平成28年12月 弁護士登録


※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

弱者を救済したいという思いから弁護士になることを決意

私が法曹を目指すきっかけになったのは、群馬の田舎出身であったため、周辺に弁護士がおらず、法的なアドバイスを受けられる者がいなかったことがあります。
そして、私の祖母も先物取引詐欺のようなものに引っかかってしまい、誰にも相談できず、ずっと長年黙っていたような状況がありまして、そういった方の法的な救済ということをしていきたいなと思い、弁護士を目指そうと思ったのがきっかけです。
もっとも、大学に入学してからは、そこまで弁護士になろうといった強い気持ちではなく、とても興味のある分野ですけど、一般的に就職も大変だったという時期で、就職とかもどうしようかなと考えたときに、やっぱり最終的に自分がやってみたいことというのを強く意識するようになって、弁護士を目指しました。
大学2年か3年の頃に具体的に学習を開始して、最初のうちは独学でやっていたのですが、なかなか受験勉強が進まなくて、そもそも何からやっていいのかっていうのもわからないし、やっぱり試験科目自体が膨大にありましたので、どうやって進めたらいいのか分からずに受験指導校に通い始めたというのがあります。
いくつかのスクールの中から伊藤塾を選択した理由は、結構単純なのですが、仲の良かった友達が伊藤塾に入っていて、「一緒にやろう」と言われて始めたという感じです。
旧司法試験は大学生のときに1回だけ受けました。4年生のときだったと思います。旧司法試験は過去問を解いてみると、基本的にはかなり法律知識に寄っているのかなという印象があります。あとは短答の難易度がとても難しいと思います。むしろ前提となる法的知識というのは旧司法試験と新司法試験で変わらないとは思うのですが、短答の肢の難易度というのが旧司法試験のほうが難しいかなと。基本的な知識から応用していくような肢の考え方が多いのかなというところがありましたので、ちょっと難しかったと感じています。ですが、大きい枠組みの中ではそんなに違いはないのかなと思います。

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地元への恩返しを通じた社会貢献

私が法曹を目指したきっかけが祖母のような人達を助けたいという気持ちからでしたので、そもそも弁護士になったら地元に戻ってきたいというのと、学生生活が長かったことから、最終的には親孝行したいという思いもあって、地元に戻ろうという気持ちが強かったです。
そこで、地元の求人をまずは探し、諸先輩からの指導を頂きながら経験を積むということを考え、求人広告が出ていた当事務所に応募して受かったというような感じですね。
この事務所の特徴は、ボスが弁護士生活50周年になるのですが、皆さん実のご兄弟でやられていて、50年もやってらっしゃることから色々な事件が経験できる事務所であるという点が大きな特徴かなと思います。東京の方だと専門的にやるというのがひとつの選択肢としてあると思うのですけど、この事務所は特にこれだと絞らないで色々な事件の相談が来られたり、ご依頼いただいたりというのが特徴ですかね。むしろ何でもやるというのが特徴かなと。たぶん他の事務所と比べて私選でお願いされる刑事事件というのが特徴的には多く、他の事務所から聞いても私選って年に1回か2回あるかないかなのですが、当事務所は多いときには年4、5件受けたりなどあります。
案件の中で基本的には、離婚事件と刑事事件と交通事故、相続などが多いです。
やりがいを感じる瞬間ですが、離婚ひとつでもやはり人間関係がここまでこじれちゃってというところでご依頼いただくということが多いので、交通事故もそうですけど、普通に生活していたらぶつけられたとかで怒り心頭で、最初はなかなか話し合いもできないですよね。そういった事件を一つ一つ着実に進めていき、最終的に和解で終えることができたりしたときなどは事件を一つ解決できたという安堵感があります。
また、どういう結果であっても、最終的には満足していただけるというのがやりがいを感じる瞬間だと思っています。
今までで印象に残った事件は、1年目から裁判員裁判対象事件を担当したのですが、今年2年目に入っても、1年目にその経験をさせて頂き、巡りあわせか今も裁判員裁判対象事件を担当しております。毎年やるような感じになっていることは珍しいと思います。
専門でやられている方は別だと思うのですが、裁判員裁判を約一年間で2件担当するというのは珍しい方だと思います。
裁判員裁判対象事件というのは、裁判員の方にもうまく説明しなければいけないとか、弁護士として法律的な能力以外の能力が求められて、そういった点で印象深い事件なのかなと思っています。
基本的に裁判官、検察官、弁護士という立場の方は皆だいたい基礎的な法律知識は共通してあると思うのですが、裁判員として選出された方は法律の専門用語で話をされてもよくわからない、「情状」とか「犯情」とかと言われても「何ですか?」となってしまいます。
そこをうまく説明しないといけません。
最終的な裁判員へのアンケートでは、どちらかというと弁護士への批判的なアンケートが多い結果になっています。
言葉遣いがわかりづらいとか、そういったシチュエーションでうまく説明するにはプレゼン能力が求められるのかなと思います。
意外と弁護士とか検察官の所作とかをけっこう皆さん見ていて、例えば弁護士が下を向いてメモとか取っていて、話を聞いてないように見えるとか、そういうことを指摘する方もいらっしゃいます。
アンケートの中で、ちゃんと話を聞いているのかと記入される方もいます。そういうところも見られているので、所作とかしぐさ、癖とかを観察している人もいるので、そこは気を使わないといけないため大変かなと思いますね。

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依頼者に寄り添い気持ちを汲み取る力

東京の大きい事務所は、会社の合併とかM&Aなどが多いと思うのですが、田舎では離婚とか相続などの案件が多く、人の感情をうまく緩和させながら最終的に終結に持っていくという作業が必要です。
従いまして、弁護士のAI化などと報道されておりますが、おそらく人工知能のレベルというのはどこまでいくかわかりませんけど、そのようなことは現状のAIでは無理だと思っています。
うまく感情を緩和させる、このタイミングで言っちゃだめというのも、弁護士として仕事をしていると感覚で分かるようになります。
今日は機嫌が悪そうな感触があったりとか、依頼者の方を説得しなきゃいけないとか。なので、人工的に確実に処理するというのが難しい業界のひとつなのではないかなと思っています。同じ話をするにしても、最初のうちは法律論がこうだから無理ですと言いたくなってしまうときもありました。ですが、敢えて言わない時などもあります。話を聞くだけに留め、また次回検討することにしましょうみたいなところで話を終わりにすることもあります。
話をしていると感情がだんだん高まってきてしまい、悔しい感情や怒りの感情を相手に対して強く抱いていたりするのですが、その時に何を言っても基本的には話が動かなくなってしまう状況がよくありました。
ですので、一回その話は置いといて、また別の日に話をするとか、タイミングの問題とか話し方の問題とかというのは面と向かって話をする弁護士じゃないと難しいのかなとは思っています。
相手の顔色ないし話しぶりからどういうタイミングでこの話をしたらいいのかというのをうまく機敏に感じ取れるような力が必要になるかなと思います。
あとは、地味な作業ですけど、文献を面倒くさがらずにしっかり調べるとか、知っている知識でももう一回ブラッシュアップするとかそういうのが必要なのかなと思います。なぜかというと、やっぱり受験勉強でもよく言われるのですが、同じような事例でも全く同じではないので、うまく似たような判例とかも検討しながら、この事案で適応できるのかどうかを考えることになります。
受験勉強とほとんど変わらない作業ですが、事案にさまざまな判例を適応させる作業は受験生以上に磨いていかないといけないのかなと感じます。そういった力や技術を求められているのかなと思います。
例えばウエディングとかの仕事をやっている人っていうのは、人を幸せなところをより幸せにしてあげるような仕事ですよね。
飲食店もそうですけど、おいしいものを提供して、より幸せな気持ちにさせてあげるということだと思うのですが、弁護士の業界はどちらかというと間逆で、人が落ちたときに手を差し伸べる仕事だと思っています。
その最たる例が刑事弁護だと思うのですが、捕まってしまって、留置施設に入ってやっと自分のしたことを振り返っている方をどう救済していくかというところで、私が担当した刑事弁護でも、その方が執行猶予がついて出たあとで、仕事を一生懸命やっているという話を聞くと、やはり頑張ってよかったなと感じます。
落ちてしまった、マイナスになってしまった人を何とか一般的な生活に戻してあげるみたいなイメージですね。少しおこがましい言い方ですけど、そういったところは仕事の魅力としてあるところなのかなと思います。
先ほども触れたのですが、私個人の意見とすれば、受験勉強も実務の勉強も、基本的には変わらないという風に考えていまして、それはなぜかというと、答練とかでも判例とかと似て非なる問題を出して皆さんどう考えますかというところが受験勉強のときはメインで、自分の思考が大事だと思うのですが、実務の場でも、類似の判例はあるのかなと検索をかけ調べたりします。
そして、その判例をそのまま使える事案なのかどうかというのを逐一検討することになります。やっていることは基本的には受験勉強と一緒で、単純に文面を見れるか見れないか、自分の知識でやるのか、しっかり文献を見ながら対比させながらやるというだけの差なので、基本的には一般的な受験勉強は全て実務的な力に結びつくのではないかと私は思っています。

弁護士の人数が増えたとしても身近な弁護士がいない現状

一般的によく言われているのは、少子高齢化になっていくので、相続とか後見とかっていうのが、業界的には増えていくのかなということですかね。あとはやっぱりバーチャルな部分というか、ビットコインとかもそうでしたけど、規制とかが追いついていない仮想的なところですよね。もちろん東京の弁護士の方が専門でやるのかなと思うのですが、そういった分野の法規制というところの動きが活発になってくるのではないかなと感じています。
また、一般市民と弁護士の距離ですが、やはりまだ遠いのかなという感じがしています。
田舎というのもあるのですが、私の家族なども含めて初めて親族の中で弁護士が出たみたいな感じでして、今度お願いできることがあればみたいな人が周りでも結構多いんです。
知っている弁護士が一人しかいないとか二人しかいないという状況を見ると、現状はまだ距離が遠いのかなと。インターネットの影響で、とりあえずアクセスすれば誰かに当たるみたいな環境自体はあると思うのですが、いわば顔見知りとして誰か知っているとか誰か紹介するというのは、基本的にはそんなに追いついていないのかな、人数が増えたとしても変わってないのかなと思います。
また、地方なので思うのですが、最近は求人をかけても逆に来ない。やはり東京に一極集中かもしれないと思っています。
おそらく東京の周辺の就職状況をリサーチして、マスコミ・マスメディアの方というのはその部分をピックアップしているかなと思うのですが、どちらかというと地方の弁護士の求人は増えていると感じています。
5年10年やっている先生が、一人が大変になってきたから取りたいなとなってもなかなか修習生というか、就職に来てくれない実態はあるのではないかと思っています。
現場を見た限りでは、人手が足りなくなってきていると。社会情勢的にも、就職難はここ20年ほどずっと続いているホットテーマで、どうやったら就職できるだろうかみたいな、就職内定率というのがマスコミで取り上げられているじゃないですか。
だから社会情勢として完全に分離して弁護士の業界をとらえても難しいと思います。
一般的な社会の流れとして就職ができないという流れの中で、単純に弁護士業界も一緒になって難しいと言われてきただけじゃないかと感じています。
今は求人の方は段々就職内定率も上がってきて、失業率も下がってきているという話もあるので、それに比例して弁護士業界も就職率が上がってきているのではないかなと思います。

これから法曹を目指す方へ

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基本的に弁護士って言うのは正直なところ、多忙という部分は否定できないです。クライアントに対してもきちんと説明しなければお叱りを受けるということもありますし、ストレスフルな業界ではあると思います。
ただ、やはり最終的に終わったときに、皆さんが喜んでいるとか、例えば刑事事件の関係でも、ご家族も関係者もいっぱいいらっしゃるわけです。
そういった人が安堵してやっと社会復帰できたというところのやりがいはとても感じられる業界かなとは思います。なってみたいという方がいるのであれば、忙しい仕事であることを前提に、一緒に仕事をして頑張っていきたいと思います。弁護士に限らず裁判官も検察官もそうなのですが、大変だけれどもやりがいはすごくあるというような仕事ですので、この業界を考えている方は一生懸命勉強して、その結果、一緒に働けることになれれば嬉しいです。

高橋三兄弟法律事務所

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