法律という特殊な言葉を使って世界を切り取り、問題解決をする仕事

山岡遥平先生

経歴  2008年 麻布高等学校 卒業
    2012年 東京大学法学部 卒業
    2012年4月   東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻修士課程 基礎法学コース(日本法制史)入学
    2014年3月   同 中退
    2014年11月 司法試験予備試験 合格
    2015年12月~2016年12月 司法修習(69期)
    2016年12月 弁護士登録。神奈川総合法律事務所 入所
    
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

山岡遥平弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

 私は元々法制史の研究者になろうとして大学院に行きました。元々法学部に行ったのは法律家になろうと思ったからなのですが、大学に行っている間に「やっぱり研究をした方が面白いかもしれないな」と思いました。いろいろあって大学院を辞めたのですが、せっかくこれまで好き勝手勉強してきたので、社会に出ると決めたなら人のためになることにしようということで、人のためになると言えば法律関係なのではないかなということで法律家になろうと思いなおしました。その中で何故、弁護士になろうと思ったのかというと、勉強するうちに「法律って何のためにあるのだろう」と考え、今の社会で強い人が自分の権利を実現したいからそれは力で押せばいいのですが、自分がバッチをつけるのであれば弱い人のためにならないといけないと思い、せっかく自分は社会的な資本を投下してもらい勉強しているわけなので、それをどこかに還元しなければいけないなというのが弁護士を目指したきっかけです。

 私の所属する事務所の神奈川総合法律事務所は、働く市民のための事務所ということでできた事務所で、そういう性質上労働事件がとても多い事務所です。入所した弁護士は概ね労働事件を担当することになる事務所です。企業相手ではなく、一般の人を対象にした事務所でしたら自分のやりたいことができるのではないかなと思い入所しました。入ってみると、私の担当する事件も労働事件が中心でした。特に過労死事件を他の人より多くやっているかなと思います。例えば新国立競技場の新入社員の過労死事件の話とか、総務省のキャリア官僚の過労死事件とか、そのような案件を担当したりしました。
 それほど多くの弁護士が過労死事件など担当しているわけではないと思うのですが、これもまた縁といいますか、働くうちにこのような案件を担当することになりました。あとは国選の事件もできるだけやっています。労働事件も刑事事件もすごく手がかかるのですが、それはそれで楽しいですね。あとは一般的な民事です。交通事故とか相続、破産の相談もあります。
 当所の特徴は使用者側の労働事件は禁止なんです。あと事業者側の消費者事件も受任禁止です。企業法務が中心の事務所でしたら私はいいやという感じでした。就職活動をするときに、私は予備試験ルートだったのですが、ロースクールに行った友達に就職の話を聞いたらみんな企業法務の話しかしないわけですよ。大学に説明に来る事務所の一覧を見せてもらったのですが、全て企業法務中心の事務所でしたり企業側だったりして、私はどうすればいいんだと思いましたね。
 余談ですが、予備試験の短答式試験の時に時計を持っていくのを忘れてしまい、大学だから時計くらいあるだろうと思ったら無くて、試験官に「時計忘れたのですが、どうしたらいいですか」と尋ねたら「聞いてくれれば残り時間教えます」って言われ「そんな余裕あるかよ」と思いましたね()。意外と時間が余ったからよかったです。

 私が今の仕事を選んでよかったなと思うのは仕事が大変な時とか事件で悩むこともありますけど、自分として「汚いことやってない」と思うのが一番大きいです。毎朝嫌なことをしてお金を稼いでいるとかいうことがないのがいいです。確かに人のトラブルを解決する仕事なので、人の辛い思いをお金にしているというのは思うところがなくはないですけど、それでも自分の決めた道で事件の解決に向けて頑張っているということで、やはり朝起きたときの気持ちとしてすごく大きいです。というとみんな「私の仕事も悪いことじゃない」って言うかも知れないですが、自分で決めた仕事をやっているというのは大きいと思いますよね。未だに弁護士になってこういう仕事を選んだこと自体を失敗したなと思ったことはないです。他の道に進んだ方が儲けられたかもしれないですが、それが人生の目的じゃないという思いです。事件が解決した時とか、やっている時も自分で考えて行動してというところで、やりがいを感じますね。
 


 先ほどお話した過労死の話に戻りますが、やはりご遺族はすごい思いを抱えてはいるので、そこはしっかり聞きながら事件解決には当たるようにしています。それこそ相手側からの心ない対応などあったりして、それはきちんと間に入ってということはしています。それと、たまたまなのですが、私が弁護士一年目に神奈川で過労死家族の会を立ち上げるのに参加させてもらい今も一緒に色々とやっているのですが、私は法律の専門家として話を聞くことはできても、同じ立場でお話をすることはできません。それで私も「気持ちわかります」などと言ったら嘘になるので、嘘をついて人の悩みに乗るのは良くないので、家族の会を紹介したりしてそちらでもメンタルのケアも含めてやってもらいながら、事件の解決とか色々な悩みがもしあったら話を聞くという感じで対応しています。
 私は医者ではないので、本当にメンタルが病んでしまったらそれは医者に行って頂くという話にはなります。できる限り話は聞かないといけないですよね。20代のお子さんを亡くされた親御さんというのはかなり辛いので、私もそういう事件だと気持ちは入ります。丁度私と同じくらいの歳の方で、二ヶ月くらいしか誕生日が違わない方の過労死案件をやっているのですが、大学も同じで学年も違いますけど色々と思うところはあります。もしかしたら自分がこうなっていたかも知れないとか。

 受験生時代を思い返しますと、伊藤塾ではやはりしっかりと憲法的な発想を混ぜ込んだ講義をされているのでそこは私の仕事柄役に立っているのかなと思います。特に伊藤塾長の憲法講義はご自身の考えが入っているので、憲法の発想とかを生かしながらやっていこうというところは今でも仕事でハッと思い返したときに役に立っています。やっぱり基本的人権の尊重とか、個人の尊重というところを軸にやるというのは外してはいけないなと仕事しながら思います。何が一番大事かとの話はやはり憲法13条なので、そこは事あるごとに思い返します。

 法律家は色々な人が向いていると思います。色々な分野で活躍する人がいますが、例えば私みたいに訴訟でしっかりやろうという人もいますし、その訴訟のやり方も人それぞれです。細かく積み上げていく人もいれば色々な心理面も含めた作戦を使う人もいます。逆に訴訟とかをやらなくても人と話すのが得意ではないという人も法律の実務的に必要なところの研究で法律家としてやっていく道を選んでいる方は沢山いらっしゃいます。どのような人が向いているかという意味だと、法律家、特に司法試験について言えば最低限司法試験を突破できるかというのはありますね。あとは司法修習での二回試験です。そこだけだと思います。あとはご自身に向いているところをどうやって見つけるかです。少なくともそれと出会うための努力というか運もありますが、あえて言えば自分の強みや弱みをある程度見られる人がいいのかなとは思います。それは自分を見つめるのもそうですし、事件の筋もそうだし、あらゆる主張の強いところ弱いところを分析できるというのは、それなりに必要なのかなと思います。それさえできればあとは自分に合う所を見つければ良いだけの話だと思います。司法試験を突破する力、あとは二回試験を突破する力、あとは修習中に罷免されない力ですね。自分を分析する力があればいいそのくらいですかね。
 自分の強みを活かせる場所でなかったとしても「自分はここでやっていくんだ」っていう信念があればなんとかなると思います。私がこれまで見てきた先輩方で「すごいな」という人は執念がすごいです。言い換えれば、特定の問題について、その方向に向かう力がとても強いです。例えば過労死問題だと、昔から過労死という言葉ができるかどうかくらいの頃から一生懸命やっている先生は、今でも最前線でやっています。情報関係でお話を聞いた先生も情報コントロール権とかについてしっかりと考え、そこを徹底的に追究するというのもそうですし、そういう力って大事なのかなと思います。当所の一番年上の弁護士も、色々な意味で凄いです。労働審判制度を作った1人なのですが、イギリスに制度を見に行き「これはいい」と思ったら止まらない、人が100回ダメだと言っても101回やるんだという所です。彼らのような執念が偉大な弁護士になるには大事なのかなと思いますね。向いているかどうかとは違いますけどね。

 法律はルールで冷たいイメージはあるかもしれないですが、法律の内側にある思想っていうのは極めて人間的なメッセージがあって、実際実務に出るとハートウォーミングではない人間の素性を見られたりして悩むこともあるとは思います。すごく楽しいこととか興味深いこと、知的好奇心がくすぐられるということもあります。勉強をするというのはその第一歩で法律という特殊な言葉を使って世界を切り取って、その中で問題を解決するっていうシステムなんですね。そのシステムに飛び込むというのはとても大きな一歩なので、あまり肩肘張らずに自分と離れた世界だと思わず、身近なところから実例を見ていってもいいですし、思想に興味があるならそれと擦り付けてもいいし、自分の好きなアプローチでまず楽しく勉強するのが一番です。楽しく勉強したことというのは抜けないですから、是非一生懸命勉強してほしいなと思います。途中でやめるとしても勉強したことは無駄にならないのでそこは司法試験に合格するだけが法律の勉強じゃないので、楽しく勉強してもらえればなと思います。


神奈川総合法律事務所

■事務所住所

〒231-0005
横浜市中区本町3-30-7 横浜平和ビル4階
045-222-4401
https://kanasou-law.com