試験でも実務でも通ずる「事実と評価を分けて考える大切さ」

吉田英司先生

経歴 2006年 愛知県立知立東高等学校卒業
   2010年 学習院大学法学部卒業
   2013年 明治大学法科大学院法務研究科法務専攻 修了
   2015年 司法試験合格
   2016年 最高裁判所司法研修所修了(69期)
      ※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

吉田英司弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

私が弁護士を目指したきっかけですが、大学や学部の選択をどうしようか学校の先生と話をしていた時、私は文系だったのですが、文系といえば法学部、そして法学部といえば法律家になるのが一番の目指すべきところなのではないかと思い法律家を目指そうと思ったのがきっけかです。あとは、私が高校3年生の時、司法制度改革の一環として、ロースクールができた頃だったのですが、法学部に進学し、ロースクールに行き、司法試験を受けて、ゆくゆくは弁護士なる。そのようなルートを辿っていきたいなと思ったのもきっかけではあります。また、文系で一番難しい試験が司法試験であり、難しそうな職種といえば弁護士、裁判官、検察官だと思いましたので、目指し甲斐があると思いましたので法曹を目指しました。
私の身の回りにはまったく法曹関係者がおらず、弁護士も検察官も裁判官も、テレビで見るイメージでしか情報がなく、実際に実務で何をやるのかというのもまったく想像がつかなかったですし、テレビドラマでは当時「HERO」というドラマが放送されていたので、それを見ていたぐらいで、漠然としたイメージのまま目指しておりました。言い方がこれで良いのか悪いのか分からないのですが、法律家を目指した方のきっかけで、子供の頃、事件トラブルに巻き込まれ、弁護士の先生にお世話になったから、「自分もそうなりたいと思いました」とお話される先生もいらっしゃいますが、私の場合は、そういった経験もまったくなく、周りにも法曹がいなかったので漠然とした気持ちで目指していました。田舎に住んでいたということもあり、法律家や司法試験などといった情報が全く入ってこない環境にいたので、司法試験が難しいということは漠然とは分かっていたものの、何名の合格者を輩出し、どの程度難しい試験なのかというのは全く分からなかったので、むしろそのようなことを知らなかったからこそ、進むことができたのかもしれないです。
 
私がこの事務所に入ったのは、半年前なのですが、当事務所では基本的に交通事故の案件が多く、交渉とか裁判などを担当しております。交通事故といいましても加害者とか被害者とあるので、加害者側の代理人を務めたりとか、被害者側の代理人を務めたりなど、色々な役回りをしています。加害者側の代理人ですと、相手側が交通事故によって怪我をしたことによる慰謝料など、賠償に関するお話などを私が窓口となって交渉させていただいたりしています。一方で被害者側の場合ですと、当然逆の立場ですので、怪我をしたら慰謝料の請求ですとか、お仕事を休まれたら、休まれた分の損害請求ですとか、車両も壊れてしまっている可能性もありますので、修理費の請求など、そのようなことを担当しております。
交通事故でイメージされるのは、車同士がぶつかる事故のイメージが強いかなと思うのですが、中にはぶつからずに非接触のケースもあったりします。例えば前を走っている車が駐車場に入るため左折しようと減速したところ、後続車両が前を見ていなく急ブレーキを踏んだことにより、ぶつかりはしなかったけど、後ろの車両に乗っている人が怪我をしてしまうようなこともあります。このようなケースも交通事故の部類に入ります。私はたまたまこの案件では、前を走っていた方の代理人だったのですが、これは裁判に発展し、前を走っていたドライバーは被告人になってしまいました。その非接触の事故では、被告者側の代理人として訴訟を担当しており、そこでポイントとなるのは、ぶつかってはいないのですが、後ろの車の人が怪我をしたことにより、前を運転していた方との因果関係が問題となる点です。ぶつかってはいなくても結局のところ前の車に何らかの原因があるということが往々にしてあるので、因果関係を否定することが難しいことから、ほとんどの裁判例は因果関係が認められてしまっている傾向にもあるのかなと思います。ですが、私が担当している当件は裁判官の心証としては、因果関係は無いのではなかろうかといったお話もいただいており、非接触の事故で因果関係が認められない珍しいケースも中にはあったりはします。交通事故案件とは別に、個人で担当しているものとして他に刑事事件も扱ったりしています。
 
今は私個人で仕事を頂いているものとして、画廊のオーナーさんと知り合いになりまして、画廊に所属している画家の方がいるのですが、その人と画廊との専属契約に関する契約内容のリーガルチェックを担当したり、あとは実際に画廊のオーナーがトラブルにあった場合の交渉などを代理人として担当させていただいたりもしています。最近、私の中でアートローという世間で言われ始めている分野に興味がありまして、ゆくゆくはその分野で大々的に仕事をしていきたいなと考えております。ニッチな分野ではあると思うので、ネットで検索などしてみても専門的な弁護士はほとんどいないのかなというところです。これから熱くなる分野ではないのかもしれないのですが、専門性を詰めていけば良い仕事に繋がっていくのかなと思っています。

弁護士には委員会活動というものがあるのですが、私は国際委員会に入っております。国際委員会というのは海外の弁護士会と交流をはかったり、日本国内の弁護士向けに情報を発信したり、渉外事務所の弁護士を招いて実際に実務について講演を頂いたりする委員会となります。私はその国際委員会の中で、ヨーロッパ方面の弁護士会との関係がある部会に所属しています。学者には学会というものがあると思うのですが、法律の世界においても、法学会などといったものがあります。そして法学会の中に日仏法学会というものがあり、私はフランス法にも興味があるので、そこに入らせていただいております。そこからもゆくゆくは仕事に繋げられたらなとも考えてはいます。
 


弁護士の仕事としてのやりがいを感じるのは、クライントから感謝をされ、「またお願いします」などと言われた時に尽きます。やはり依頼される人がいて、初めて弁護士の仕事は成り立ちますので、依頼者のために全力を尽くすことは当然で、弁護して依頼者を満足させるというのが最大のやりがいなのかなと思います。
 
受験生時代に伊藤塾で学んだことというのは、そもそも法律の基礎の部分だと思うので、法律についての基礎がまさに今仕事で役に立っていると私は考えています。というのも、法律は条文から成り立っているのですが、条文の解釈をするにも条文の主旨を考える必要があって、伊藤塾で学んだのはまさに条文の趣旨から考えるというところです。そういった作業を伊藤塾で繰り返したことによって、何か難しい問題に遭遇したときでも、関連する条文を調べて、その条文がどのような趣旨から成り立っているのか、どのような時に適用されるものなのかというところを考えていく、そういう思考回路といいますか、思考プロセスを教えてくれたのは伊藤塾であることから、その点が一番役に立っていると思います。
あと伊藤塾には答練がありますが、答練は司法試験を受けるうえで重要で、そこを逃げてしまうと、合格から遠ざかると思うのですが、伊藤塾の答練で多くを学び、実務で役立っていると思っているのが、「事実と評価を分けて考えよう」というところです。勉強したての頃は事実と評価というのをどのように分けていいのか理解できず、答案を書いても良い点数がもらえなく、何でなんだろうと思ったりしたのですが、伊藤塾で一緒に学んでいる人に答案を見せて頂いたり話をしたりすると「事実と評価の違い、そこをきちんと区別しなければ駄目だよ」などといった話も頂き、実際にその点を意識して伊藤塾の論述例を見たりすると、やはり的確に分けて書いてあります。そこを意識することの大切さについて、答練を通じて学ばせてもらい、今現在、訴訟とか準備書面を書く時などでは意識しておりますので実務に直結しているかなと思います。
司法試験の答案は実務に出たあと書く法律家の書面の基礎的な部分だと思うので、それは何が重要かというと、事実と評価を分けて、事実を拾って、その事実に対して評価するという作業を司法試験の段階でしていて、今実務の現場でも行っています。したがいまして、司法試験でやっていたことの延長線上に今が在ると思っているので、やっていること自体は変わらないです。

伊藤塾の「この講座のおかげで」というものがありまして、本田講師の憲民刑集中講義という講座が当時あったと思うのですが、あの講座を受けた際、私は衝撃を受けました。その講座を通じ学んだことは数多くありました。基礎マスターテキストを使って講義をするのですが、そこに書かれていない情報があり「メモしてください」などと講義の中で話があるのですが、それがすごく多くて、ここに書かれていることは、「もっと詳しく言うとこういうことです」と解説いただきました。ただ覚えていた箇所につき、より理解が深まっていったことが体感できた講義でした。
 
先ほどのやりがいの話とも関係してくるのですが、依頼者がいて成り立つ仕事だと思うので、どれだけ依頼者に誠実に向き合えるか、その姿勢をどのぐらい持っているかが法律家の向き不向きを分け、端的にいうと誠実な方が法律家に向いていると思います。どの事件でも手を抜かないというのは重要なのですが、「ここだけは」という場面はどうしてもあるので、依頼者のために手を抜かず、依頼者のためを思えば多少無理してもと思い、その誠実さを基に仕事ができる人が向いているのかなと思います。
もう一点は、法律家なので交渉ごととか裁判などが主な仕事なので、結局のところ人を相手にすることになります。相手方もそうですし、依頼者もそうですし、あるいは目撃者など第三者とも連絡をとらなければならないので、人とのコミュニケーションをとることが得意な人といいますか、人と話をするのが好きといいますか、そのような人が向いているのかなと思います。

法律家を目指すということは、合格した後、自分が何をしたいかという点もそうですし、合格するには何が必要かというところも今の時点で考えておく必要があると思っています。法律家になったあと自分が何をしたいかというのが非常に重要で、今、自分の周りに法律家を目指そうと考える人がいないという方は、インターネットで色々な情報を集められるので、弁護士になりたいのであれば、弁護士という職業はどういった仕事ができるのかとか、調べた中で自分がどういった仕事をしている弁護士に憧れるのか、そういったものを先ずは見つけることにより、ゴールが見えてくるのかなと思います。こういった弁護士になりたい、法律家になりたいというのを発見し、そこに至るまでに何をしなければならないのか逆算して考えることができると思うので、自分が何をやりたいのかを考えておくといいのかなと思います。私のように、ただ漠然と法律家になりたいといってゴールを目指すのもいいのかもしれませんが、今改めて私が法律家を目指し直すとするならば、どういう法律家になりたいかを先ず考えます。そしてそこを目指して、司法試験を突破するならどうしたらよいかを考えます。自分のなりたい将来像を考えることがよいと思います。

法律家を目指すうえで、関わってくる人がいると思うのですが、周りの支えてくれる方への感謝は決して忘れてはいけないと思っています。私の場合は経済的に支援してくれた両親でした。周囲への感謝をしながら法律家を目指していただければいいのかなと思います。

弁護士法人大西総合法律事務所

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