藤沢 彩乃 先生（弁護士）

「弁護士」との出会い

私が弁護士を目指そうとしたきっかけは、高校生の時に何学部を受験するか決めるにあたり、将来自分はどのような仕事をしたいのか考えていた時、新聞の人物紹介欄等で、難民問題を扱う土井香苗弁護士や、自殺問題について取り組む弁護士の存在を知ったことでした。当時の私は、心理や国際関係に興味があったので、弁護士はそのような仕事もできるのか、と関心を持ったのです。司法試験受験指導校として伊藤塾を選んだ理由は、入塾説明会の際に伊藤塾長が「合格後を考える」ということを強調しており、私自身、司法試験に合格するのが目標ではなく、司法試験合格は、弁護士になってやりたい仕事をやるための一通過点に過ぎないと考えていたので、辛い受験時代を過ごすならここだ！と思ったからでした。

受験でも修習でも、「大切なこと」

（1）受験時代
受験時代、伊藤塾で得た一番大きなものとしては、法律の基礎知識と基本から考えていく力だと思います。そして、この大部分を修得できる機会が基礎マスター段階だと感じました。基礎マスターを実際受講している時は、法律の勉強を始めたばかりで何もかも難しく感じ、理解するのに一苦労、その上理解したことを覚えなければならず、とにかく大変でした。しかし、受験、修習を終わって思うことは、司法試験合格、法律家として仕事をしていくどちらにおいても全てを記憶していることは要求されていないということです。日々法律の制定、改正は行われ、個々の案件は全て異なるのであるから、全部を記憶しておくことは不可能です。重要なことは、基本を理解して、記憶し、それを個々の事案に当てはめられるか、応用させていけるかです。基礎マスターがとても大変に感じられるのは、基礎マスターで扱うことは基本ばかりで、ほぼ全てのことを理解・記憶しなければならないからです。しかし、基礎マスターをしっかりやっていけば、その後が楽に感じられるはずだと思います。
（2）研修所にて
修習では、司法試験よりもっと難しいことをやるのではないかと考えている人がいたらそれは違うと思います。私が修習において重要だと感じたことは、司法試験を通して修得した基本的知識（細かい知識はほとんど不要だと感じました）、研修所で学ぶ各科目の基本的ルール（裁判科目や検察科目の事実認定の仕方、要件事実であれば条文構造等からの要件事実の導き方、各科目の絶対やってはいけないこと等）と、それを各事案へあてはめる力でした。つまり、修習で求められることと司法試験で求められることは、共通しており、それは、基本の修得（理解と記憶）とそれを当てはめる力、応用できる力だと思います。考えてみれば、司法試験も修習も法曹養成のための制度なのだから求められることが共通しているのは当然のことなのです。そして、付け加えるのなら、体力と精神力も必要です。
（3）就職活動において
私は、修習開始前に就職活動を開始し、いわゆる大手と呼ばれる渉外事務所や外資系事務所等を訪問しました。最終的に3つの事務所で悩みましたが、これからの発展可能性が感じられたこと、海外との関わりのある仕事ができること、そして事務所の雰囲気がとてもよかったことから、現在の事務所に決めました。就職活動をするにあたり、私が意識したことは、やりたいことを明確にすること、自分がそれに適した人材であることきちんとアピールすることでした。その前提として自分自身をしっかり分析することや、事務所の先生が何を求めているか把握するため相手の話をきちんと聴くということにも注意しました。

今、「弁護士」に求められるもの

司法試験に合格しても就職が厳しい状況になっていることは否定できませんが、どんなに弁護士の数が増えたとしても、世の中から弁護士の仕事がなくなるわけではありません。重要なことは、自分がどのようなことをしたいかはっきりしていること、他の人が持っていないアピールポイントを持っているということです。そのアピールポイントは、要領の良さでもいいし、そうでない人は忍耐力だけは自信がある、誰にも負けない熱い思いを持っているなど、何でもいいと思います。これからますます弁護士が増えていく中、何となく弁護士になりたいという人や他の人に負けないものを持っているわけではないという人にとっては厳しい現実が待っていると思います。しかし、世の中には未だに弁護士が必要とされながらも弁護士が足りていないところがあり、受かっても仕事がないということはないし、仮に仕事がないように見えたとしても、自分自身の力で開拓していくことだってできるのです。それが弁護士業の魅力であり、弁護士として能力があるということだと思います。

「弁護士」という仕事の魅力

弁護士の仕事の魅力は、能力とやる気さえあれば活動の幅に制限はなく、可能性が多方面に広がっているということです。また、様々な仕事や人との出会いの機会が多いこと、その機会を通じて全く異なる仕事がしたくなったとしても、いつでも方向転換できることも私は大きな魅力だと思っています。弁護士を目指した理由は色々ありますが、欲張りな私にとって、一度しかない人生なのだから多くの経験ができる可能性があることは大きな理由の一つでした。実際人権問題がやりたくて弁護士を目指していながら、就職活動を通じて興味を持った企業法務の道に進むことができたこと、また、いずれ人権問題にも関わりたいと思っていますが、それが可能であるのも弁護士だからだと思っています。弁護士という仕事には、たくさんの魅力があります。自分も弁護士になってこういうことがしたい！という思いがある人は、その思いさえあれば、司法試験や修習、二回試験、就職活動、全て突破できます。実務では、これらを遥かに超える大変なことが山ほど待っていて、それに向かっていけるような仲間が一人でも増えることを願っています。頑張って下さい。
 
（2010年9月・記）
■Profile
2008年 司法試験合格
2009年 上智大学法学部卒業
2009年 司法研修所入所
2010年 弁護士登録。TMI総合法律事務所入所
TMI 総合法律事務所
■ 当事務所の主な業務内容
企業法務／知的財産／ファイナンス／倒産・紛争処理
■ 事務所プロフィール
TMI総合法律事務所
〒106-6123　 東京都港区六本木6-10-1
六本木ヒルズ森タワー23階・24階
http://www.tmi.gr.jp/
■ 当事務所の所属弁護士数
221名（2010年12月現在）
■ 事務所の主な業務内容
企業法務／知的財産／ファイナンス／倒産・紛争処理