勉強中の励み、目的の明確化に役立った“合格後を考える”という意義づけ
原 啓一郎 先生 (弁護士)
はじめに
2001年10月に弁護士登録し、2年半の間、東京のセントラル法律事務所(弁護士9名)というところで執務し、2004年4月から、結婚に伴い大阪に転居して、大阪の太平洋法律事務所(弁護士10名)というところで仕事をしています。通常の民事事件・刑事事件や企業の相談業務などのほか、外国人の権利や差別問題や難民弁護団、子どもの権利に関わる活動、大学に対する入学金授業料返還訴訟などの消費者事件などに関わり、忙しくも充実した生活を送っています。
弁護士になるまでの弁護士像、なってからの弁護士像
実は、大学時代には法曹界に特段の関心はなく、ただ、漠然と人のために仕事をしたいとは思っていましたが、民間企業でも公務員でもそれは可能だろうと思っていました。しかし、実際に色々と回って見てみましたが、この仕事をしたい!というものには残念ながら巡り会えませんでした。間接的に人のためになる仕事はたくさんあったのでしょうが、そうではなく、直接の人助けを目的に仕事ができる、また自分がした仕事がダイレクトにその方に影響するそういうところが魅力的に思えました。伊藤塾のおかげと猛勉強の甲斐あって合格した後、合格後の様々な企画や、司法修習生としての生活を通じて、法曹界の方々に接する機会が飛躍的に増えていきました。そういう中では、事件に皆さん真剣に取り組んでいること、事件を離れると結構普通の人間であること、話好き議論好きが多いこと、良い法曹を育てたいと口を挟み激励してくれる気持ちの強さ、といったことを感じました。ちなみに、裁判官の仕事も、紛争を主導的に解決できるところが中々いいなと思っていました。弁護士になってからは、事件に触れ、当事者に触れるという単にそれだけでなく、彼や彼女たちの希望や落胆、生活や、浮かばれるか泣き寝入りすることになるのかが、自分の仕事如何に本当にかかっているんだという、ぴりぴりした緊張感、責任感をとても感じています。それは大変なことではありますが、逆に何物にも代えられないやり甲斐だと感じています。また、確かにかわいそうなんだけれども、理不尽には思うけれども、現状を前提にすると難しいかもしれない、でも誰かがやらなくちゃいけないことなんじゃないか、そういう物事、人に出会った時に、弁護士は力になれることがあります。これはこの職業で得られる至高の価値なのではないかと感じています。
伊藤塾から受け取ったもの
ひとつには、緻密なプログラム(各科目の講座、教材、択一や論文対策の答練、クラスマネージャーのアドバイスなど)は実際、とても役に立ちました。当初は独学で勉強していたのですが、受かってみて思うのは、何を知らなければならないかを最初に教えてくれる、分からない点は教えてくれる、漏れを防いでくれる、こういう支援がなければ早く受かることは難しいのではないかということです。早く受かるのがいいことなのかという議論もあるとは思いますが、良い法曹になるには多少の挫折を知っていればよく、早く法曹になってそれから努力を続けることができればそれでよいと思います。伊藤塾が示してくれる指針に従い猛努力すれば合格できるとはいえると思います。私の受験時とは試験や制度が変わった点もあると思いますが、必要とされるものの本質は同じであり、それを実情に合わせてアレンジしているのでしょうから、同じことは今も言えると思います。それ以上に、伊藤塾から受け取ったものとして、合格後を考える、という意識づけは私の人生にとって大切なものだったと言えます。それは勉強中の励みとしてでもあり、また、合格したことで満足せず努力を継続できたこと、その延長に今があること、の大きな要因でした。これがなかったら、合格して満足し、志の低い法曹になってしまっていたかもしれません。また、伊藤塾で、合格後を考える様々な企画に参加したことや、人から聞いたことも、直接的間接的に今の生活に役に立っています。これらにも積極的に参加してみてはいかがでしょうか。講義は出なくなったが「明日の法律家講座」だけは欠かさず出ていた、なんて受験生もいたくらいです。彼は今、経済産業省で日本のために頑張っています。
受験生へのメッセージ
伊藤塾では時々、憲法の価値、憲法の精神、という言葉を耳にします。どうも胡散臭い、弁護士になれば憲法なんて使わないよ、そう捉える向きもあるかもしれません。ですが、世の中が平和に回っているときはそれでもよいかもしれませんが、今は本当に、不要な戦争をこの国が創り出してしまう怖れが大きくなっています。多くの人が気付かないうちに。なし崩し的に。多くの人の目に見えるようになってきた時にはもう遅いということだと思います。また、日本だけが平和であればそれでいいのでしょうか。私は、平和の価値をたくさんの人に理解してほしい、その精神を世界に輸出する国にしていきたい、そう思っています。伊藤塾ではそういう精神に触れる機会があると思います。今まで考えたことがなかった方、どうも違和感があるという方にこそ、そういうものに触れてほしいと思います。そして、とりあえず共感まではできなかったとしても、理解はできるということころまでは進めると思いますし、なぜ伊藤塾長がそれほどまでに強調することなのか、たくさん賛同する人がいるのか、興味を持っていてほしいと思います。実務家になって、また違った角度から世の中を見るようになったら、きっとその疑問が役に立つときが来ますから。
■Profile 1999年司法試験合格
2001年弁護士登録(東京弁護士会)
2004年大阪弁護士会に登録替え、太平洋法律事務所入所
■事務所プロフィール
太平洋法律事務所
〒530-0054 大阪市北区南森町1-2-25 南森町iSビル4階
http://www.taiheiyolaw.com/
■所属弁護士数
11名(2007年6月時点)
■取り扱う事件
多様な民事・家事事件、対行政事件、刑事弁護事件(消費者問題事件、公正取引問題事件、交通事故事件、医療過誤事件、投資詐欺事件、学校事故事件、不動産取引事件、個人法人倒産/再生事件、離婚・相続事件、外国人在留事件、住民訴訟事件、刑事弁護事件など)