伊藤塾の講義と、そして数々の精神的な支え、「Festina lente(ゆっくりいそげ)」は今も精神的な支柱です

石川 智史 先生 (弁護士)

はじめに

私は、2003年10月の弁護士登録後、岩田合同法律事務所に入所して、現在、弁護士3年目として企業法務を中心とした法律業務に携わっています。岩田合同法律事務所は、明治35年(1902年)、故岩田宙造弁護士(日本弁護士連合会会長、貴族院議員、司法大臣等の要職を歴任)により設立された事務所であり、現在、東京都千代田区所在の丸ビルにオフィスを構え、弁護士36名を擁しています。その業務内容は、大手金融機関・企業の法務に特化しているのが特徴です。

弁護士になった理由

高校生の時、受験する大学・学部の種類を選択するに際し、いくつかの魅力ある職業の中から、将来の進路を検討したことがありました。弁護士、公認会計士、国家公務員などの仕事について書かれた書籍を複数購入し、熟読しました。その中で、弁護士へのインタビューがあり、当該弁護士が「弁護士という職業を選択したことを後悔したことは一度もない」「弁護士になってよかった」という談話をされており、漠然とはしながらも、弁護士が自由業であって十分に個性が発揮できる職業であると大変な魅力を感じたことを覚えています。

伊藤塾と共に歩んだ受験生活

私は京都大学進学後、伊藤塾の京都校において本科生ビデオクラスの受講を開始しました。そして、本科生カリキュラムを全て受講した後の大学5年生の時に司法試験に挑戦し、無事合格することができました。このように、基本的には伊藤塾以外の受験指導校の教材を使うことなく、司法試験合格を実現することができたわけですが、これは、最初の受験指導校を選択する際に、各指導校のパンフレットや教材を比較対照し、自分に合った指導校を選択することができたことによるものだと思います。また、長期間にわたる受験生活の中では、合格へのモチベーションの低下や精神的緊張が生じることが間々ありましたが、そのような時は、最初の弁護士を目指すきっかけを思い出すとともに、伊藤塾長がしばしばおっしゃられていたラテン語の「Festina lente (ゆっくりいそげ)」という言葉を思い返していました。私は、初めてこの言葉を聞いた時は、「ゆっくり」と「いそげ」という全く相反する意味を合わせた言葉であって理解に苦しみました。しかし、精神的には気持に余裕を持ちつつも肉体的には急いで勉強を行う、というふうに自分なりに理解した上で、精神的緊張を緩めることができていたように思います。この他にも、伊藤塾には、明日の法律家講座をはじめ、数々の精神的な支えをいただいたことを感謝しています。

現在の活動について

司法試験合格・司法研修修了後は、岩田合同法律事務所に入所しました。岩田合同法律事務所での弁護士経験のうち特に印象深いのは、顧問先企業と比較的近い立場で実務を研鑽する機会があったことです。つまり、私は、岩田合同法律事務所がいくつもの金融機関を顧問先企業として擁している関係上、約2年間強の弁護士経験の一部において、顧問弁護士の立場として、大手都市銀行のリーガル部門・インベストメントバンキング部門に派遣され、また、大手金融機関のコンプライアンス部門において執務を行う機会がありました。その中で、実務的な要請や最新の問題意識に触れることができたことはもとより、クライアントが弁護士をいかに厳しく、かつ的確に評価・信頼しているかということを実感できました。弁護士冥利としては、知的好奇心、重大事件への達成感、クライアントの感謝、独立性と裁量など様々なものが挙げられますが、現在の私は、自身への評価・信頼がクライアントのみによって的確になされるということ、そして、そのような評価・信頼のためにベストエフォートを尽くせるということこそが最大の冥利だと思っています。

これから法律家を目指す方々へのメッセージ

現在は、従来からの司法試験と法科大学院からの新司法試験の併行期にありますが、当然ながら法律家として実務にでれば全く同じ世界が待っています。伊藤塾長が「法律家としての仕事は本当に価値のある仕事である」と繰り返しおっしゃっていたことを思い出しますが、私も、現在の弁護士業務には大変満足しています。これは、伊藤塾で学んだ「Festina lente (ゆっくりいそげ)」という精神のもと法律業務に専念し、クライアントからの的確な評価・信頼を肌で感じとれるからだと思います。法律家の仕事をしてみたい、その気持を今お持ちであるのであれば、ぜひ今後も持ち続けていただきたいと思います。  
※本原稿は、2005年12月発行の入門講座パンフレットにてご紹介させていただきました。
 

岩田合同法律事務所