実務でも、伊藤塾で学んだ“基礎的な法的思考力”や“文章力”、“あと一歩頑張る力”は必須です

神田 香 先生(弁護士)

法律知識で人の役に立ちたい

私が法曹を志したのは、2004年、大学2年生のときでした。
学部で履修した法律科目に、面白いなと思って興味が沸いたことと、その法律の知識をもって、人の役に立てることに対する素朴な憧れが、きっかけでした。この頃は、旧司法試験の合格率は2%などといわれていたため、試験を目指すこと自体、身の程知らずのような気がして、実は躊躇していました。 しかし、ゼミの教授が、「君ならできる」と背中を押してくださったことと、伊藤塾の「試験対策講座」(弘文堂)が、非常にわかりやすく書かれていたことで、自分にもできるかもしれないと思い、受験を決意しました。この「試験対策講座」(弘文堂)を通じて親しみを感じていたことや、短期合格で定評があったことから、伊藤塾に通うことを決めました。
その選択が功を奏し、大学4年生のときに、旧司法試験に合格することができました。

幅広く企業法務に携わって

司法修習後、西村あさひ法律事務所に入りました。豊富な知的資源が共有化された環境の中で、多くの弁護士が個性的かつ組織的に力を発揮することを理念とするところに魅力を感じ、入所を決めました。
現在は、国外ファンド等について、日本法に対応したコンプライアンスの助言や必要書類の作成等を行う「アセット・マネージメント」に関する業務や、資産を媒介として構成される国内外の金融取引について、ドキュメンテーションや法的構成の分析等を行う「アセット・ファイナンス」に関する業務など、ファイナンス分野を中心に業務を行っています。また、企業の買収等に関してデュー・ディリジェンスを行う「M&A」に関する業務や、総代理店契約等の外国企業と日本企業間の取引関連契約に関する助言を行う「国際取引法務」、上場企業に対する有価証券報告書等の法定開示書類や証券取引所における適時開示に関するアドバイスを行う「キャピタル・マーケッツ」に関する業務など、本事務所ならではの幅広い国内外の企業法務に関与しています。

前進の糧 ― 伊藤塾で学んだこと

実務家としての業務は、目の前にクライアントがいる点と、試験のような答えはないという点で、受験時代の勉強とは異なります。しかし、実務においても、伊藤塾の「入門講座」で学ぶ基礎科目の知識が盤石であることが必須の条件であると感じています。また、入門段階で、基礎的な法的思考方法を教えていただいたことは、司法試験の受験科目以外の法律を取り扱うことが多くなった現在の業務においても、活きていると思っています。 
このほか、「わかりやすい文章を書く」ということと「あと一歩頑張る」ということを教わりました。これらは、旧司法試験に合格できた決め手であったと思いますし、現在の業務においても重要な意味を持っています。
「わかりやすい文章を書く」ことは、伊藤塾の答練やその解説講義を通じて学びました。見出しや接続詞を活用し、論理的に流れよく論述することを修得すれば、どのような問題が出ても安定した答案を書けるようになると思います。限られた時間の中でわかりやすい文章にまとめる力は、実務においてはいっそう大切になります。クライアントは、法律の専門家ではないこともあるので、よりわかりやすく伝えることが必要ですし、当該案件において実際に問題となる論点を端的に論じることが重視されます。
「あと一歩頑張る」ことは、伊藤塾長から、「もうダメだと思ってから、あと15分だけ勉強する」というような心がけが合格に近づく、として教えていただきました。実務においては、至急の解決策を求めるクライアントや、締切りの迫った案件を前に、膨大なドラフトを一晩で仕上げなくてはならなかったり、確立した基準のない難解な論点に回答を見いださなくてはならなかったりするときがあります。そのようなときでも、絶対に諦めず、あと一歩頑張ってやり遂げることが必要です。伊藤塾で学んだ心がけは、私を旧司法試験の合格に導いてくれたのみならず、弁護士になった今でも、困難な局面に立ったとき、それを乗り越えて前に進むための大切な糧になっています。

これから法曹を目指す方へ

この文章を読んでくださっている方は、法曹を志し、これから勉強を始めようとしている方、すでに勉強を始め、不安や悩みを経験している方、様々だと思います。私も、司法試験を目指すこと自体をためらい、勉強を始めてからも、合格がほど遠いような気がして不安な日々を過ごしたひとりです。弁護士になってからも、ハードな状況において、辛いと思うこともあります。
しかし、伊藤塾で学び、諦めずに勉強することで、合格を手にすることができ、今の私があります。そして現在も、壁にぶつかることもありますが、パートナー弁護士や先輩の導きに支えられ、ともに頑張る同期の姿に励まされながら、日々歩んでいます。
このような中、尽力した案件でクライアントから感謝してもらえたり、一緒に案件を行う弁護士から、作成した書面が良くできていたと言ってもらえたりすると、単純ですが、疲れも吹き飛び、また頑張ろうと思えます。何より、法律のことを調べたり、解決策を考えて文章を書いたりするこの仕事が好きなので、それによって人の役に立てることに、心からやりがいを感じます。
皆さんの進まれる法曹への道のりは、ロースクール入試、日々の課題と成績維持、法曹増加による就職難など、かつてより関門が多く、厳しい側面もあるかもしれません。しかし、時代や制度が変わっても、基礎的な法的思考力、わかりやすい文章を書く力、あと一歩頑張る力など、合格のために、そして法曹になってからも必要な力は、普遍的なものなのではないかと思います。 
どうか皆さんも、どんなに辛くても自分で決めた道を信じて、その夢を実現してください。皆さんの御健闘を、心よりお祈りしています。
 
(2010年11月・記)

【プロフィール】
2006年 司法試験合格
2007年 早稲田大学法学部卒業
2007年 司法研修所入所
2008年 弁護士登録
西村あさひ法律事務所入所


■ 事務所プロフィール
西村あさひ法律事務所
〒107-6029  東京都港区赤坂1-12-32
アーク森ビル
http://www.jurists.co.jp
■ 当事務所の所属弁護士数
474名(2011年4月現在)
■ 事務所の主な業務内容
〈コーポレート〉一般企業法務/ M&A /コンプライアンス/ベンチャー/税務アドバイス/労働法務/不動産取引・環境/国際取引法務
〈ファイナンス〉バンキング/キャピタル・マーケッツ/アセット・マネージメント/買収ファイナンス/保険/PFIプロジェクト・ファイナンス/証券化/流動化/アセットファイナンス
〈事業再生/倒産〉事業再生/倒産
〈危機管理〉危機管理
〈争訟〉民事商事紛争一般/クロスボーダー争訟/税務争訟/知財争訟/行政争訟/特殊争訟
〈国際通商法〉国際通商法
〈独占禁止法〉独占禁止法
〈IT/IP〉知財ライセンス取引/ベンチャーキャピタル/知財ファイナンス取引/テレコム/メディア
〈親族/相続〉親族/相続
〈公益的活動〉行政機関等との協力/公益活動