法的問題を未然に解決し、予防する企業の専属医的な役割を担う仕事です

金藤 力 先生(弁護士)

インハウスローヤーになるまで

私は大学2年生から伊藤塾京都校で本科生として試験勉強をスタートし、1998年に従来からの司法試験に合格しました。2000年に大阪弁護士会に登録しまして、大阪の法律事務所で勤務弁護士をして3年間経験を積ませていただきました。その後、より幅広い仕事がしたい、国際的な仕事がしたいという気持ちから企業に入ることを考えました。京セラは正式に弁護士を募集していた訳ではなく単なる法務部員の募集でした。弁護士の業務とは別の経験を積みたいと思っていたことが動機だったのであまりこだわりがなく、大阪に近い関西圏で希望に合うところを探しました。 具体的な仕事内容

よく誤解されるのは、訴訟案件で企業を守るようなイメージがインハウスローヤーにあるようですが、訴訟までになると私達の仕事としては失敗であるということです。取引企業に対しても、顧客に対しても、商売させていただく相手ですから、訴訟までいくという時点で健全な関係は壊れてしまっているといえます。それを未然に防ぐというのが、インハウスローヤーの役割です。最も多い仕事内容としては、契約書の法律的観点からのレビュー(再調査、再検討)です。特に海外の企業と取引を行う場合、法律という基準自体も違いがあるわけですから、契約書をしっかり固めておかないとお互い安心して商売もできません。以外には、企業の権利や利益確保、コンプライアンスの強化のために企業活動の様々な場面に関与しています。医者に例えれば、インハウスローヤーは会社の患部がどこかを発見し、自分のできる範囲で治療もするし予防の仕方も徹底することが仕事といえます。インハウスローヤーは企業活動の全般を見ているわけですから、専門分野を得意としている外部の弁護士に頼んだ方がいいと判断した時は、適切な人選ができるように情報を集め、交渉したりもします。

インハウスローヤーに必要なこと

私はインハウスローヤーになる前、大阪の法律事務所で多数の訴訟活動を経験しましたが、それは今振り返れば貴重な経験だったと思っています。前述の通り、訴訟になること自体、インハウスローヤーの仕事としては失敗なのですが、訴訟活動を経験しておけば、訴訟をさけるためには、今はどういう状態であって、どういう解決策があるのかが明確に把握できます。これからインハウスローヤーになろうという方も、最初は法律事務所で訴訟活動の経験を積んでおく方がいいと私は思います。

京セラ 法務部(当時)  

※このメッセージは2005年2月6日、伊藤塾京都校実施の明日の法律家講座でご講演いただいた内容を要約させていただきました。

--- Q&A ---

Q.インハウスローヤーが増えると、法律事務所に勤務する弁護士は減るのでしょうか。
A.逆です。調査でも、インハウスローヤーの人数が増えると、外部の法律事務所に発注する仕事量、金額は増えるという結果がでています。インハウスローヤーが企業にいないと、問題があっても気付かない場合が多く、インハウスローヤーはその患部を見つけることが仕事です。その後の処置では、内部で対応できるものに関しては対処しますが、外部の適切な専門家を探してお願いするケースも多くあります。インハウスローヤーが増えることで、外部の法律事務所の弁護士の方も活躍の場が増えます。法律に携わるトータルの人数が増えれば、業界的な影響力もあがるので、この傾向は好循環を生むと言えます。