悩みを抱えている人と向き合う弁護士の仕事、その本質はいつの時代も変わらないはずです

西村 紀子 先生(弁護士)

事務所訪問と入所の理由

私は、2000年に司法試験に合格し、高知県での司法修習中に就職活動を行い、現在の事務所に決まりました。元々、地元横浜で弁護士として一般的にイメージされる刑事事件、民事事件のほか、父親の仕事の関係もあって労働事件も普通に取り扱うことのできる事務所に入りたいという気持ちが強くありました。そこで、渉外事務所には行かずに、一般の事務所の就職活動が本格化する夏の終わり?秋頃から、就職活動を始めました。最初に合同説明会に行って、そこで配布された資料をもとに、事務所訪問をしたことを記憶しています。この事務所を希望したのは、通常弁護士としてイメージされる業務全般を取り扱っていることのほかに、事務所の雰囲気に惹かれたこともありました。就職活動についてのアドバイスは十分にはできないのですが、何か、「これをやりたい」という気持ちをもって臨めば、それは、就職活動の大きなエネルギーになると思います。

現在の主な業務内容

現在担当している業務は、一般民事事件、家事事件、刑事事件、債務整理件、労働事件、消費者被害事件、国家賠償訴訟事件等の集団訴訟(中国残留孤児国家賠償請求事件、自衛隊いじめ自殺事件、アスベスト事件など)などがあり、比較的幅広く事件を取り扱っていると思います。件数としては、債務整理事件がもっとも多いのですが、このほか、特に、解雇事件、労災事件、賃金支払請求事件などの労働事件が他の事件に比較しても多く、業務を特色づけていると思います。私は、元々、父が労働組合活動を行っていたこともあって、労働事件に関心がありました。もっとも、正直なところ、弁護士になる前は「労働組合」という言葉に馴染みがあるとういくらいで、具体的な事件のイメージがあるわけではありませんでした。幸いにして、労働事件を数多く取り扱っている事務所に入所して多くの事件に関わることができましたので、それらの事件の一件一件を通して、その都度勉強をしていき、イメージができてきたという感じです。ワーキングプアという言葉が流行し、格差や貧困が社会問題となっています。このような社会状況になってしまった一因として、無秩序な労働関係法令の改悪のほか、その改悪された法律の最低限の労働者保護規定すら企業が違反して憚らないという、企業の甚だしい遵法意識の欠如があると思いますが、企業のこのような意識は労働組合運動の後退にも原因があると思います。今後は、個別の事件の解決のために努力を重ねていくほかは、労働組合活動を行う方達との交流をさらに深めて、さらに多くのことを勉強させていただくとともに、これらの活動を法律的にサポートしていくことができるようになりたいと思っています。

やりがいを感じる瞬間

色々な人と出会い、深く関わることができるのが、弁護士の仕事の面白さだと思います。依頼者の方は事件のことで相談に来るので、深刻な悩みを抱えている人が当然多いのですが、その中でも本当にいろいろな方がいます。いい人もいれば、悪い人もいて、時にはそういう次元ではないただただビックリせずにはいられないという人もいたりするのですが、とにかく、自分が全く知らなかった世界をもっている方も来られるので、その世界を教えてもらうことができたり、心から尊敬できる依頼者に出会って交流を深めていくことができたりします。こんな素晴らしいことはないと思います。そして、依頼者の方の悩みを理解し、共に考え(時には共に悩み苦しみ)、事件を望ましい形で解決することができて、依頼者の方に感謝していただけた時ほどうれしいことはありません。

伊藤塾で得たもの

司法試験で要求される法律を体系的に分かりやすく教えるとともに受験生の便宜を考えるという面において、伊藤塾長は私の受験時代から他者の追随を許さない存在だったと思います。私は受験勉強中のある時期、伊藤塾長の講義を受けなければ私の合格はないと相当真剣に考えて入塾し、論文マスターから伊藤塾の講座を受講し始め、その後、択一マスターなどを受講しました。基礎マスターこそ受講しませんでしたが、これらの講座で司法試験で要求されることをメリハリをつけて勉強することができ、かつ、特に択一マスターで知識を定着させることができたことは、司法試験合格にとっても実務のためにも、とてもよかったと思います。伊藤塾で学んだ法律の知識は、特に民法、刑法などは、そのまま、民事事件、刑事事件で役に立っていますし、それ以外の分野の事件でも重要なベースになっています。知識があって困ることは絶対にありませんので、特に民法などは、実務のためにも真剣に勉強しておくのがよいと思います。なお、民事訴訟法などは手続法なので、一度実務の手続と付き合わせて勉強するとすごく定着しやすいのではないかと思います。

これから法律家を目指す方へ

法律や判例の知識、書面の作成、尋問の技術、依頼者の話をきちんと聴く姿勢と能力が弁護士に絶対的に求められることであり、これらを日々研鑽していくことが極めて重要です。これらを弛まず行っていかなくては、依頼者の利益を守ることができなくなると思いますし、逆に、これらのことを常に念頭において努力を怠らなければ、道は開けてくると思います。そして今後はさらに、専門分野をもって、それを深めていきたいと思います。司法の世界は、受験制度も含めて多くの制度が次々と変更され、受験生の方達も不安を感じずにはいられない状況と思われます。ですが、結局のところ、特に弁護士という仕事は悩みを抱えている人と向き合う仕事であり、そのような仕事の性質は今後も変わらないでしょう。悩みを抱える人の相談に乗って役に立ちたいと真剣に考える気持ちは、必ず報われるでしょうし、必ず道は開けてくると思います。一緒に頑張りましょう。
 
(2008年6月・記)
 

■Profile
2000年 司法試験合格
2001年 司法研修所入所
2002年 弁護士登録
      横浜合同法律事務所入所
 
■事務所プロフィール
横浜合同法律事務所
〒231-0021 横浜市中区日本大通17番地 JPR横浜日本大通ビル8階
http://www.yokogo.com 
 
■所属弁護士数
16名(2008年6月時点)
 
■当事務所の主な業務内容
取引、不動産、損害賠償請求、家事事件、相続、多重債務、労働事件、外国人問題、環境問題、行政事件、住民訴訟、刑事・少年事件等
 
■現在の「ある一日のスケジュール」
 06:30 起床
 09:00 出勤、起案
 10:00 依頼者と打ち合わせ
 11:00 事務所行事の打ち合わせ
 12:30 昼食
 13:30~17:30 刑事事件の検証
 18:30 事務所に戻って、電話と起案など
 21:30 帰宅
 24:00 就寝