伊藤塾で学ぶ基本六法と行政法は実務においても礎となります

佐々木 和弘 先生(弁護士)

専門知識を活かしたい

前職で経理を担当しており、法人税法や消費税法、企業会計原則に基づいた処理方法を調査報告することにやりがいを感じていました。そんな中、自分は法律の世界に向いているのではないかと考えるようになったのが、弁護士になろうとしたきっかけといえばいえるかもしれません。そして、一度意識しだすと、今度は、専門知識を活かして困っている個人や法人のコンサルタントをしてみたいと思うようになり、会社を辞めて伊藤塾の本科生コース(2002年当時の名称)を受講しました。
3年後にいったん司法試験をやめて普通に就職しようかとも考えましたが、ここでやめるのはもったいないとの周りの説得もあり、法科大学院に進学し、無事新司法試験に合格することができました。

依頼者の感謝の言葉に感無量

現在は、本当にいろいろな分野について仕事をしています。比較的一般民事事件が多いのですが、企業法務的な事案にも携わっています。とはいっても中小企業の内輪での株式をめぐる争いなど、むしろ家事事件の範疇に入るかもしれません。そのほか、離婚・相続、貸金返還請求、建物明渡請求、請負代金請求訴訟など様々です。刑事事件も取り扱っています。
やはり依頼者に信頼されたときに、最もやりがいを感じます。依頼者はいろいろな紛争を抱えていますから、事件が解決するまではとても大変で、苦労も多いのですが、それでも事件が解決して「ありがとう」と言われたときは、困難が大きかった事件ほど感無量です。
刑事事件については、今のところ否認事件を担当したことはありませんが、公訴事実に争いがない事件であっても、少しでも被告人に有利な判決が出るよう被害弁償に奔走して、保釈を勝ち取ったときなどはやりがいを感じる瞬間です。特に被告人と接見して有利な情状を聞き出し、どうやって再起を図るのかを相談しているうちに、被告人から「先生、俺、今度は子供のためにも頑張るわ」と言われたりすると、否認事件以外でも弁護士の役割は重要であることに改めて気づかされます。

実務に活きる学んだ知識

伊藤塾で得た知識は、現在の職務でも活きています。
そもそも法律を扱う仕事ですから、当たり前といえば当たり前ですが。私が勤務している事務所は、行政訴訟、特に税務訴訟を専門的にやっている事務所なので、準備書面にも憲法の考え方を反映させることもしょっちゅうあります。さすがに憲法論を正面から厚く書くことはあまりありませんが、伊藤塾で憲法を学んだことがこれほど実務で活きてくるとは正直なところ思ってもみませんでした。 民法は、当然実務でも始終使います。私は、伊藤塾の民法の情報シート愛用者なのですが、旧司法試験、法科大学院入試、新司法試験、二回試験とずっと愛用してきました。今でも、確かあそこにメモしていたな、など引っかかることがあれば、情報シートを引っぱり出して活用しています。
いずれにしても伊藤塾で勉強する基本六法プラス行政法は、試験対策上はもちろん実務においても礎になるものですから、しっかりと頭に定着させておく必要があります。何度も繰り返して覚えたものは、しばらく離れていても覚えているものです。もちろん記憶はおぼろげになってはいきますが、実務では頭の片隅に残っていればそれが手がかりになります。そういう意味で、伊藤塾時代にテキストを徹底的に反復して勉強したことが今でも活きていると感じます。ただし、試験に挑むときに、おぼろげな記憶で勝負するべきでないことはいうまでもありません。
 
新たな時代の法律家像
 
法曹人口の増大問題は切実な状況です。行き過ぎた過当競争がかえって国民の不利益になることは食品偽装問題等を見るまでもなく明らかだろうと思います。資金的に困窮している法律家が道を踏み外すと、結局国民が迷惑を被ることになるでしょう。企業法務を中心とした法律事務所に関しては市場の原理がある程度働きますが、一般市民を相手にする事務所については、普通弁護士に相談することは一生に一度あるかないかの世界ですから市場の原理が働きにくいという現状も見る必要があるでしょう。
ただ一方で、競争のないところに発展は無いこともまた事実だと思います。依頼者の利益を考え、誠実に事件に向き合う。この当たり前のことを当たり前にすることさえできれば、いくら法曹人口が増えようと問題ないと思います。 
新しい法律家像を自分自身模索中ですが、まずは当たり前のことができるように努力したいと思います。新しいことへの挑戦はもちろん大事ですが、基本をおろそかにするのは本末転倒でしょう。そのあたりは受験と同じではないかと思います。
 
法曹を目指す方へ

法曹界は激動の時代です。しかし他の業界は安全かといえば必ずしもそうではありません。結局自分が何をしたくて、何になりたいのか。この基準で自分の人生を切り拓くしかないのではないでしょうか。 
受験については、合格、就職など不安材料があり、なかなか手に付かないこともあるかもしれません。しかし、結局実務についても不安は続きます。もちろん他の業界の方々も同様でしょう。
つまるところ、今解決すべき問題に全力で取り組むしかないのです。そういう意味では、新司法試験受験は実務能力を試しているともいえます。今やるべき課題、業務に全力で取り組んでいれば、不思議と展望が見えてきます。これは受験においても同様です。頑張ってください!
 
(2010年11月・記)

【プロフィール】
2008年 司法試験合格
2008年 司法研修所入所
2009年 弁護士登録
みどり総合法律事務所入所

■ 事務所プロフィール
みどり総合法律事務所
〒564-0053  大阪府吹田市江の木町17-1
コンパーノビル6階
■ 当事務所の所属弁護士数
4名(2010年12月現在)
■ 事務所の主な業務内容
消費者問題、近隣トラブル、金銭貸借・保証 ,サラ金・多重債務、
交通事故、医療事故、離婚、遺言・相続、高齢者・障害者問題、
不動産賃貸借、労働事件(使用者側)、労働事件(被用者側)、
会社法一般(株主総会・代表訴訟など)、債権保全・債権回収、
法人(会社)倒産問題、国際商取引、知的財産権