受験も実務も、歩み続けることが大切です

白川 もえぎ 先生(弁護士)

はじめに  
私は、2005年11月現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて執務しており、弁護士として3年目に入ったところです。アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、現在、外国弁護士を含めて200名を超える弁護士を擁しており、ファイナンスやM&A、知的財産権、国際訴訟などビジネス法務全般にわたって幅広いサービスを提供しています。
法律家を志したきっかけ私が高校時代に描いていた将来の展望は、経済学を勉強してシンクタンクなどに就職するというものでしたので、法律家になるなどまったく考えていませんでした。実際に経済学部に進学したのですが、大学2年生の頃、経済学が自分の勉強したかったものとは違うような気がして物足りなく思っていた時に、友人が聴いていた伊藤塾長の講義テープの声が偶然耳に入ってきたのが法律の勉強を始めた一番初めのきっかけでした。今でも強烈に印象に残っています。「もし、建物を競売で買っても敷地の利用権がなかったら、買った人は建物担いで出て行かなきゃいけない。ヤドカリじゃないんだから、そんなこと言われたってね…」法定地上権の説明でしたが、各人の経済的効用を最大化する資源配分を考える経済学と、社会全体の経済的利益の調整をする法律学とが、私の中でつながった瞬間でした。それ以来、経済と法律の双方にまたがる分野で仕事をしたいと思い、ビジネスに関わる弁護士になろうと思うようになりました。

現在の業務
 
アンダーソン・毛利・友常法律事務所は「渉外事務所」といわれるところです。取引の当事者に海外の会社が登場する案件は多いものの、最近では特に日本の企業同士の紛争案件なども増えていますので、「渉外事務所」というよりは「ビジネス法務を全般的に取り扱う事務所」といった方が実態に合致していると思います。私は、株式の国内外での公募や社債の発行などキャピタル・マーケッツと言われる分野の仕事を多く扱ってきましたが、これ以外にも企業の開示関係の助言や日常的な法律相談に対する回答、法改正により新設される事業の立上げに関連する法律的な問題点の検討などを継続的に行っています。

 特に印象に残っているものとしては、ある政府保有の会社を民営化し、政府その他の既存の株主が所有する株式の全てを国内と海外の投資家に売り出したうえ上場させるというプロジェクトがあります。私たちは、その会社と政府の法律顧問として、当局に提出する書類の作成やそれに関連する多岐にわたる日本法上の問題点について助言を行いました。これは、政府の決定から上場まで約5年、私たち弁護士が関与してからでも約1年を要し、関係者も数十名にのぼる大型案件でした。このようなプロジェクト案件では、関係者がそれぞれの役割分担に応じてシビアな議論を展開することはあるものの、基本的には案件の成功のため各自が一つひとつ作業を積み重ねていきますので、プロジェクトの終盤近くになると皆が同志のような一体感に包まれます。無事に上場を果たした時の会社の方の晴れ晴れとした顔とその時に関係者と交わしたメールは、それまでの苦労を吹き飛ばすに余りあるものでした。

 また、この案件の中で、基本的ではありますが法律家に特に必要とされる、法律を読み解くことの重要性を学びました。(従来からの)司法試験の受験科目は六法であり、この六法を十分に理解することは簡単ではありません。しかし、現実には1,000を超える法律があり、法律家はこれらを読み解くことができなければなりません。私が上記の案件に関与したのは入所して間もない頃であったので、私に与えられた役目は、多数の関係者との交渉や契約書の作成などより、その会社に課せられる法規制を正確に理解して記述することでした。初めて見る、特定の業界にのみ適用される取締法規でしかも改正に向けた議論がまさに進行しているという状況。最初は何が求められているのかも分からず、条文を前に焦る日々が続きました。しかし、法律や政省令を読み、役所に問い合わせ、インターネットで関連するものを探し、業界紙を読み、という地道な作業を続けていくうちに、業界とそれに適用される規制の全容が理解できるようになり、そうなると、一つひとつの規制の解釈に見当をつけることができたり、一連の法改正の目的が何であるかが見えてきたりと、日を追う毎に面白くなってきました。ここで学んだ徹底的なリサーチと体系的な理解の重要性は、その後の業務の基礎になっています。
 
逆境の時に支えてくれた「ある言葉」
 
弁護士になって2年ほどしか経っていませんが、その中で「これ以上頑張れない」と思ったことがあります。意見書の草案を何度持っていってもパートナーに「何を言いたいのか分からない」「論理の流れが見えてこない」と言われて突き返される。私の中では精一杯やっているつもりなのに、それ以上のことを求められていると感じた時です。その時ふと、「もうだめだと思った時こそが一番合格に近い時です」という伊藤塾長の言葉が頭に浮かびました。そして、入所する事務所を決める時、しっかりしたオンザジョブトレーニングをさせてくれるところで弁護士としてのスタートを切ろうと決めたことを思い出し、もう一度頑張ろうという気持ちになりました。実務家になると、「合格」「不合格」という目に見える結果がない分、自分の中で妥協を始めたところで成長は止まってしまいます。ですので、その後も、大変な状況に当たるたびに「もうだめだと思った時こそが一番成長する時」と自分に言い聞かせて、次の一歩を踏み出しています。

これから法律家を目指す方へ
 
一口に法律家といっても、そこには、裁判官や検察官もいれば、いわゆるゼロワン地域と呼ばれる弁護士過疎地域にリーガルサービスを提供する弁護士もいれば、私たちのようにビジネス法務を多く取り扱う弁護士もいます。それぞれ扱う業務は異なりますが、法律を駆使しつつ、最終的には「人」に対してサービスを提供する点で一緒です。「人」に喜んでもらえるよう精一杯努力する。その思いを共通にする皆さんと一緒に同じ法律家として活躍できたらと願っています。

【プロフィール】 2001年 司法試験合格
2003年 弁護士登録
アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所
(先生のプロフィールは取材当時のものです)
 
■事務所プロフィール
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
〒107-0051 東京都港区元赤坂一丁目2番7号 赤坂Kタワー22階


■所属弁護士等数

433名
 (日本弁護士389名、外国法事務弁護士7名、外国弁護士16名、弁理士18名、行政書士2名、司法書士1名)
 (2016年10月1日現在)

■取扱案件
企業買収・提携(M&A)および会社法務
商事取引法務
訴訟・仲裁・その他紛争処理手続
金融法務
キャピタル・マーケッツ
ストラクチャード・ファイナンス
知的財産関連業務
労働関連業務
独占禁止法・競争法規関連業務
租税関連案件
中国関連案件
特殊法律問題