やりがいにあふれた弁護士業務。子育てと社会人経験が役立っています

高山 未奈子 先生(弁護士)

弁護士を志した理由  
私の場合、離婚経験が弁護士を志すきっかけとなりました。
当時1歳の子供がいましたが、前夫は、相談した弁護士は自分が親権をとれると言ったというのです。こんな幼い子供の親権を男性がとることなどあり得るのかと非常に不安になりました。自分自身に確かな法律知識がなければ、将来も思わぬ不利益を受けるのではないかと痛感したのです。また、子供を育てていく上で、プロフェッショナルな職業に就いて、経済的な基盤を築かなくてはとも思いました。同時に、自分自身がこの経験で苦しい思いをしたので、同じような境遇の方たちの手助けをしたいという気持ち、こういったことから私は法曹を目指しました。

子育てと学習と

受験勉強を始めた最初の頃は働いていたので、職場・勉強・子どもの3つのみに集中し、いわゆる余暇時間は全くありませんでした。離婚後、幸い私は両親と同居しており、子育ての面では両親に大分助けてもらいました。昼間は仕事、夜は週2日、それから土・日に伊藤塾に通って、講座を受けたり答練を受けたりしながら勉強を進めていました。
その後、私は法科大学院に入学し、友人と協力し合い工夫することで法科大学院のタイトなカリキュラムをこなしつつ、節約できた時間を受験勉強にあてました。特に行政法は、法科大学院に進学して初めて接する科目でしたから、そこに重点をおいて、範囲全体をカバーしている基本的なテキストに毎日あたるようにしました。前から学習していた六法に関しては、網羅的に基本事項をチェックできる伊藤塾の基礎マスターのテキストを定期的に見直す時間をつくるよう心がけ、合格に至りました。
しかし時間に全く余裕のない受験時代を経たからこそ、お子さん2人を抱え、2つの仕事をかけもちしながら頑張ってきた方がついに破産しなければいけないといった場合など、毎日かつかつの生活をしながら生きているその方の状況が、自分のことのようにリアルに把握できます。少年事件に携わる場合も、事件を起こした少年の親御さんの気持ちが、私自身も子どもを持つ身として、非常に理解できるところがあります。
法律家にとって法律を使って最終的に紛争を解決する処理が大事なのはいうまでもありませんが、そのプロセスにおいて、依頼者の心理面をサポートすることも重要な役割であると思っています。そういう意味で、想像力を駆使することは法律家の大切な素養の1つだと思いますし、私の経験が実務上も役に立っていると感じることはしばしばあります。
 

専門知識を要する仕事のやりがい

現在私が勤務している法律事務所は、いわゆるマチ弁、病院でいえば、地域ごとのクリニックや医院といった位置づけの事務所です。離婚や相続などの家事事件、少年事件、債務整理などや小さな会社のトラブルなどを扱っています。大規模事件や何かの事件に専門特化するというよりは、幅広くさまざまな業務にとりくんでいます。
今、とりわけ建築紛争に関わる損害賠償事件や医療過誤事件など、特定の分野に関する専門的な法律知識が必要な事案に力を入れています。受験勉強時代にはあまり触れる機会のなかった特別な関係法規の分野ですから、初めの内はよく理解できないところも多分にあります。しかし、自身で勉強したり、あるいは弁護士同士の事例研究会に参加したりして、次第に理解できるようになっていきます。こういった事案は、事件解決の喜びはもちろんのこと、これまで知らなかった新しい知識を吸収できるという充足感、知識欲が満たされる喜びがあります。
そのうえ、医療過誤事件などは、人の生命、身体に直結する被害が発生する分野です。相談に来られる方は、医療過誤で亡くなった方の遺族ですから、その方にとって非常に切実な、人生における最も重要な問題の1つであるわけです。
そういう問題に携わって少しでも被害を受けた方たちの力になれるようお手伝いができるのですから、どれほど困難なことであっても、弁護士として本当にやりがいのある仕事だと思っています。
 

これから法曹を目指す人たちへ

弁護士の就職難が取りざたされていますが、一般的に公に募集していなくても、適切な人材を求めている法律事務所はまだまだあります。そういう事務所では、もちろん本人の能力も問われますが、むしろ人物を見て選びたいと考えています。ただ表立って募集していないので、アクセスするにはそれなりの努力が必要です。法科大学院で教鞭をとる実務家弁護士と積極的に親しくなるなど、弁護士の知り合いを増やし、彼らが行なっている学習会・研修会に参加させてもらうのです。そういう場では、度々懇親会が行なわれますから、自分の人間性を知ってもらうには格好の機会になります。
また、社会人として働き、退職後司法試験に合格した私の知合いは、退職してからも元の職場と非常にいい関係を保っていたので、その会社の管理職からの誘いがあり、弁護士資格を持つ初めての従業員として法務部に勤めるようになりました。そこで訴訟関係の案件に携わったり、相談事例に対応したり、顧問先の弁護士と協同しながら処理にあたる業務で弁護士資格を活かしています。そういった意味では社会人経験のある方は、その社会経験や人脈、あるいは自分のキャラクターを活かした就職、学生からそのまま弁護士になった方とは一味違った種類の就職も可能だと思います。
弁護士業務は、男女差が全くないといっていい仕事だと思います。基本的に、女性だから男性だからということで仕事内容に影響が出ることはありません。むしろ、例えば離婚事件で女性弁護士が男性側の代理人であっても、しっかりした仕事ができなくてはならないし、もちろん逆の場合でもそうです。どんな事案であろうと、法律のプロとして毅然とした態度で対応すれば、女性だからといって不利になることのない職種だといえます。
弁護士の数が増え競争が激化するといわれる昨今、これからは、これだけは他人には負けないという専門分野をもつことがとりわけ大事になってくると思いますし、同時にそれを追求することで仕事の可能性は広がっていくと思います。
女性でも男性でも、多くの意欲ある方が法曹界に入ってこられることを期待します。

【プロフィール】 2007年 新司法試験合格
2008年 やわらぎ綜合法律事務所入所

■ 事務所プロフィール
やわらぎ綜合法律事務所
〒530-0047  大阪府大阪市北区西天満4-6-19
北ビル2号館303

■ 当事務所の所属弁護士数
3名(2010年12月現在)

■ 事務所の主な業務内容
一般民事、家事、刑事、少年事件、債務整理、その他
 
(先生のプロフィール等は取材時のものです)