責任が重く、業務時間も長いですが人生をかける価値は絶対ある仕事です
上野 真裕 先生 (弁護士)
独立までの経緯と開業を決意したきっかけ
2003年10月に弁護士登録し、2007年9月まで4年間、いわゆるイソ弁(=勤務弁護士)として中央区京橋にある法律事務所に勤務した後、2007年 10月に同期の友人と独立しました。私が勤務していた事務所は、ボス弁の方針で、イソ弁は5年前後勤務した後、独立することになっており、入所した段階で独立開業することはある程度考えていました。今の事務所はJR中野駅の近くにありますが、これは中野区には比較的法律事務所が少なく需要が見込めると考えたことと、本庁のみならず多摩支部(八王子方面)の仕事も積極的に行いたいと思い交通の便を考えたためです。開業準備は、中野で開業すると決めた後、2007年7月頃から、不動産業者に仲介を依頼して具体的な場所を決定し、事務所設備についてはオフィス機器を扱う会社とリース契約をし、事務職員の募集、弁護士会・税務署・役所などに必要な諸手続を10月いっぱい頃までかけて行いました。
現在の主な業務内容
一般民事事件を中心に扱っておりますが、それ以外もあります。具体的には、①訴訟・調停などの一般民事事件のほか、②顧問会社への対応(法律相談に対する意見書の作成が中心)、③任意整理・破産などの債務整理、④当番弁護・国選弁護などの刑事事件、⑤大学の非常勤講師、実務書の原稿作成などがあります。
それぞれの仕事について少し詳しく説明しますと、①は、基本的に裁判の準備となります。依頼者と打ち合わせを行ない、論点を整理し、主張立証内容を検討して、訴状・答弁書・準備書面などの書面を作成し、証拠を準備します。そして、期日に裁判所へ行き、口頭弁論、弁論準備、証人及び本人尋問などを行ないます。現在、約10件程度受任しております(勤務弁護士の頃は常時20件から30件程度担当していたので、これは比較的少ない方です。)。②は、企業の法務担当者からメールで相談が来るので、法律上の問題点を調査・検討して、意見書を作成し、回答するというものです。③は、サラ金業者に依頼者(債務者)の取引履歴を開示してもらい、それを利息制限法に引き直して、過払金が発生すれば取り戻し、残った債務の額に応じて任意整理をするか破産申立てを行います。現在、約15件程度受任しております。④は、当番弁護であれば警察署へ接見に行き、被疑者に取調べを受ける際に必要なアドバイスなどを行なうとともに、示談交渉など被疑者の防御活動を行ないます。国選弁護であれば、被告人と打ち合わせをして、公判準備を行ない、合わせて示談交渉など被告人にとって有利な証拠を集め、それらを踏まえ、公判に臨みます。刑事事件は常時1、2件担当しております。⑤は、週1回、母校の日本大学で民法の講座を担当しております。また、不定期に、実務書(共著)の原稿の作成を依頼されることがあり、他の業務の合間をぬって参加しております。近年、弁護士が増加しており、都市部では競争が激しくなっておりますが、私が心掛けていることは、第一に、受任している事件をスピーディーかつミスのないように処理するという基本を大切にすることです。第二に、中野区で開業していることと密接に関連しているのですが、依頼者の方のアクセスを少しでも良くし、またフットワークよく仕事をすることを心掛けております。第三に、これはこれからの課題ですが、弁護士会の開催している研修会に積極的に参加するなどして、業務に必要な知識が「賞味期限切れ」にならないように注意したいと思っております。
やりがいを感じる瞬間
月並みですが、事件が無事解決して依頼者の方に喜んでいただけるときが一番嬉しいです。また、悩みをかかえて相談に来られた方に、見通しを示し、あるいは具体的な対応をアドバイスして、余計な不安を取り除いて安心してもらった時も嬉しいです。これらの喜びを感じながら仕事を続けていけることが、弁護士業務の最大の魅力だと思います。ただ、これは実際には簡単なことではなく、日々努力していきたいと思っております。
必要とされるプロフェッショナリズム
まだ経験の浅い私が語るには難しいテーマですが、結局は、受任している仕事をスピーディーかつミスのないように処理し、依頼者の方の権利や利益を最大限に守る解決をして、喜んでいただくということに尽きるのではないでしょうか。
そのためには、謙虚に依頼者の言葉に耳を傾け、どうしたら依頼者の権利や利益を最大限に守ることができるか真剣に考え、十分に法令・判例・文献などを調査し、交渉・調停・訴訟などで成果を上げる必要があり、決して気を抜くことができないと思います。つまり、プロである以上、常に受任している事件に神経を張り巡らしておくことが求められると思います。
伊藤塾で得たもの
私は、受験を開始した時期に伊藤塾長が当時在籍しておられた受験指導校で一連の基幹講座を受講し、その後、大学の受験機関に籍を置いて勉強しておりました。ただ、なかなか最後の壁を突破することができずに苦しみ、合格する前年に自分に何が足りないかを真剣に考え、短期合格者がやっていることをもう一度自分もやってみようと決意しました。そこで、合格する前年の論文試験終了後から翌年の択一試験の準備に取りかかるまで約半年間かけて、中上級講座を在宅受講しました。これにより六科目全てについて、重要な論文過去問や新作問題をムラなく網羅することができ、何とか論文試験を突破することができました。
これから法律家を目指す方へ
弁護士の仕事は、責任が重く、業務時間も長く、率直に言って大変な仕事です。ただ、反面、やりがいも大きく、人生をかけて取り組む価値があると心から思える職業の一つだと思います。ですから、合格を目指す皆さんも、前向きな気持ちをもって日々の勉強に取り組み、合格を勝ち取ってください。
(2008年5月・記)
■Profile
2003年 弁護士登録
2007年 中野通り法律事務所を同期の友人とともに開設
■事務所プロフィール
中野通り法律事務所
〒164-0001 東京都中野区中野4-2-1 山忠ビル6階
http://www.nakanodori-law.jp/
■所属弁護士数
2名(2008年5月現在)
■当事務所の主な業務内容
一般民事、家事事件、刑事事件等
■現在の「ある一日のスケジュール」
08:30 起床
09:45 出勤、メール・電話のチェック
10:00 事務所にて依頼者との打ち合わせ(労働事件)
11:30 事務所にて依頼者との打ち合わせ(刑事事件)
13:00 昼食
15:30 東京地裁で弁論準備期日
16:45 事務所で雑務の処理
18:00 大学の非常勤講師
20:00 夕食
21:00 事務所で書面の作成
00:00 退所
01:00 帰宅
02:00 就寝