医療と法律、双方の立場を理解して医療従事者がいきいきと働ける社会を実現したい

小島 崇弘 先生(弁護士)

スキー事故をきっかけに医師から法曹へ

私は高校時代スキーをやっていた経験から一流のアスリートと触れ合っていたいと思い、整形外科医をしていました。医師をやっていると医療過誤や患者との法的なトラブルなどがあり、医師の仕事の理不尽や医療の萎縮を感じていました。 そんなあるとき、得意であったスキーで大きな事故を起こし整形外科医を継続していくことに若干支障がある視力の後遺症が残ってしまいました。そこで、多彩な人材を法曹の道へという法科大学院のふれこみから弁護士を目指すことを決意しました。
それまでは法律には全く縁がなかったので当然のように受験指導校で勉強することを選択しました。働きながら効率的に短期合格したいと考え、伊藤塾長の熱い語り口と、2年間の講義を在宅受講なら1年間で受講ができるというメリットから迷わず伊藤塾を選択しました。
法律を初めて勉強する私にとって体系マスターの講義はとても新鮮で全体像がサマリーのようにわかってとても楽しく勉強が始められました。1年間伊藤塾で勉強してから法科大学院に入学するつもりだったのですが、勉強を開始後4ヶ月で受験した旧司法試験の択一試験では4万人中の1万番台という順位で、「本格的に勉強している人は意外と少ないのだなあ」と実感し旧司法試験の受験を継続することにしました。論文試験においても、論理の展開の仕方は数学の証明問題に近いところがあり、国語が苦手だった私でも違和感なく学習ができました。
講義を倍速で聴くことで集中力もアップし、時間的な効率化もできました。医師としての仕事をしながらの受験勉強だったので空いた時間に定義カードや論証パターンなどを利用し時間をフル活用しながら勉強しました。また私は「論証パターン集」が大好きで、さまざまに加工したり書き換えをしながら覚えていったのですが、これが深い理解につながりました。この1年間は医師としての仕事と両立しながらでしたが、人生の中で一番勉強した時期でした。 
伊藤塾での講義は教材でも講義でも基礎を徹底的に学習するという無駄のないスタイルでしたが、試験に合格するには基礎の部分をしっかり勉強するだけで十分だと実感しました。事実、基礎マスターの講義で試験にはほとんど対応できましたし、私はほとんど基本書を読まずに合格してしまいました。あるとき著名な基本書を1冊読んでみたことがあったのですが、試験に必要な部分はすべて基礎マスターで勉強したことだと実感しました。このころに、アプローチの仕方で学んだ法的三段論法は、実務でもそのまま役立つもので、新しい法律を検討する際にも常に活用しています。結局旧司法試験に合格し弁護士になれたのですが、基礎が非常に重要で、規範や定義についての正確な知識を身につけてはじめてあてはめや応用ができる、これは伊藤塾で学んだ合格のエッセンスです。

法律の世界も医療の世界もすべては依頼者のために

 
医師としての経験を活かした業務だけではなくいろいろな業務を経験したいと思い、取り扱い分野が広く、それぞれの業務に精通した弁護士が多い今の事務所に入所しました。
今の事務所は急激に成長を遂げているので、所属の弁護士はみんな向上心を持っています。拠点も東京と福岡にもありテレビ会議で常にコミュニケーションをとっているのですが、年に2回は全員が集まる機会があります。
私自身も業務は分野を問わず何でも行います。一般民事からM&A、民事再生や交通事故の示談や訴訟案件も扱っています。もちろん医師の経験を活かし、医療過誤事件や介護事故事件、医療機器の特許関連事件なども手がけます。こういった案件では、医師免許を持っていることで周りの理解も得やすく、クライアントの安心感も増すのではないかと思います。
今までで特に印象に残ったケースは医療過誤の案件です。一審敗訴で控訴審から担当したのですが、入念な証拠集めや事実の検討、友人の医師に参考意見をもらったりした上で、主張を立て直し、逆転判決を得ました。労力はかかりましたがやりがいのある事件でした。
今思うことは、医療の世界と弁護士の実務は非常に似ているところが多いということです。依頼者(患者)の話を聴き、ご本人の主張(自覚症状)や証拠(検査結果や診察所見)などを収集し、現状を把握した上で法的な解決(健康の回復)のために法的なアドバイスや訴訟など法的な解決手段(治療や手術)を行うというのはまったく同じ対応です。クライアントのことを一番に考え、同じ目線で考え、しかし言いなりではなく、指摘すべきところはきちんと指摘する、できるだけ専門用語を使わずわかりやすい表現をする、そして依頼者が喜んでくれる時にやりがいを感じるのは医者も同じです。

より良い医療ができる環境へ

現在の医療に関する法制度が医療現場の実情の変化に追いついていないなと感じます。単に病院側の代理人として医事紛争に取り組むだけでなく、医療と法、双方の立場を理解した上で、法と医療の橋渡しをし、医療従事者がより良い環境で働けるようにサポートできればと考えています。医療従事者が医療に集中して従事できるような環境を整えることが、ひいては患者さんの利益にもつながると考えます。また、医事紛争は、医療従事者と患者さんのボタンの掛け違いから生じることも少なくありません。医事紛争の実情を多くの医療従事者に伝えることで、医事紛争を少しでも減らすことができればと思います。

他の分野の経験が十分活かせる法曹の世界
 
法律専門で勉強してきた方が中心の世界であることは間違いないですが、法曹というのは、別の分野での経験を十分活かすことのできる職業です。医師に限らず建築や金融などあらゆる分野の知識や経験が役に立つので、活躍できる場面は多いと思います。また予備試験ならば、働きながら勉強できますし、ある程度時間をかけての合格を目標にすることもできます。合格率の低さといった数字に惑わされことは全くありません。求められる能力は決まっていますし合格ラインを超えるのは自分の学習次第です。昨今、弁護士も就職難と言われていますが、競争がないと業界は伸びていきません。目的意識を持って努力をすれば、就職難など気にする必要はありません。「就職難」は弁護士を選択肢から外す理由になりませんし、それであきらめるのはあまりにももったいないです。
自分が何をやりたいか、それには何が足りないかを考えれば必ず道は拓かれます。やればできる、必ずできるです。 
 
(2012年4月・記)

【プロフィール】
洛南高等学校 卒業
2001年 大阪大学医学部医学科 卒業 医師国家試験 合格
2001年 大阪大学医学部整形外科学教室入局
以後、大阪大学医学部付属病院、大阪厚生年金病院、関西労災病院などで勤務
2008年 旧司法試験 合格
2010年 司法修習修了(現行63期) 
         弁護士登録(大阪弁護士会)
北浜法律事務所・外国法共同事業入所

■事務所プロフィール
北浜法律事務所・外国法共同事業
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TEL:06-6202-1088(代) 
FAX:06-6202-1080・9550
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■事務所の特長
北浜法律事務所グループの取扱い業務は、その法領域においても、クライアントの業務分野においても、多岐に渡っています。 また、いわゆるビジネス・ローの分野にとどまらず、公益性の高い業務にも積極的に関与しています。 ここでは、当事務所の取扱い業務のうち、主要なものを取り上げました。企業再建/M&A/知的財産法/ファイナンス/労働法務指導及び各種関連手続への対応/会社法/各種紛争処理手続への対応/ベンチャー支援/不動産取引及び開発事業の支援/フランチャイズ法/IT/保険法務/商取引における各種リスク対応/税務/特殊な不法行為訴訟への対応/家事・刑事・少年事件等/教育活動/医療関連法等
■所属弁護士会
大阪弁護士会