不動産関係を専門分野に。弁護士の仕事の幅は、自分次第で大きく広がります

森下 寿光 先生 (弁護士)

実務でも役立つ、受験時代に学んだ基礎

昔から企業など組織の中で働くというイメージがあまりなく、手に職をつけて独立して何か仕事をしたいと考えていました。学生時代に何冊か弁護士にかかわる本を読んだり弁護士にかかわる話を聞いたりしたところ、仕事において退屈そうにしている人がいない、それでいて人の役に立てるとの印象を持ちました。それが弁護士を目指す動機でした。
しかし、いざ勉強を始めようと思って基本書を見ても、過去問を見ても法律を体系だって学習していないため、何から始めていいかわからない状態でした。そんなとき友人の勧める伊藤塾に大学の2年生の秋頃から通い始め、司法試験の勉強を始めました。
私は在宅で受講していました。当時はまだインターネットを使った講座はなく、DVDを視聴する受講形態でした。自由に受講スケジュールを決めて、自分のペースで受講できるので、在宅で学習できる制度が役立ちました。実際に講義を聴いてみると伊藤塾長の講義は極めてわかりやすかったです。また、その語りが滑らかな分気付きにくいのですが、情報量も非常に多く、試験に必要なことを網羅していました。
司法試験に合格するためには、条文、定義、趣旨、要件、効果など基礎を十分に押さえておくことが大事です。これらを繰り返して学習すれば、どのような試験問題にも一応の解答は出せるようになると思います。また、基礎が重要であることは、実務でも当然同じなので、受験時代に培ったものはそのまま実務に入っても役立ちます。

事務所の自由な雰囲気に惹かれて

就職活動は、日弁連のホームページに掲載された法律事務所の求人情報を見て、いくつかの事務所を訪問しました。その中で、自由に議論できる雰囲気がありながらも、各自が尊重し合っている点が印象に残り、現在の事務所に入所しました。
事務所では不動産関連案件が比較的多いです。なかでも特殊なものとしては、再開発組合の法律事務、特殊な賃料増減額案件などがあります。事務所は従来から兜町近辺にあるのですが、上記のような特殊な案件については遠方のクライアント様もいらっしゃいます。
事務所の業務に関連し、自分自身の業務も不動産関連のものが多くなっています。今まで勉強していた法律の分野と違い、特に行政法が関連する案件は見慣れない専門的な用語や案件が多く、リサーチが大変です。複雑な分野ですが、企業も個人も何らかの関わりを持たざるを得ない分野なので、専門的に学べる環境にあることは大変うれしく思っています。

洞察力の重要性
 
今まで担当した事件の中で印象に残っている事件は、初めて担当した被告人国選弁護で、事案は、ホームレスの方の窃盗事件です。よくある事件類型であるとは思いますが、一遍通りの情状弁護ではなく、被告人の今後のために何か役に立つものはないかと思い、捜査記録を詳細に検討していたところ、被告人の身上調書で、被告人は、過去数十年という長い期間、会社勤めをしていたことがわかりました。会社勤務が長いということは、年金を給与から天引きされていたのではないかと思い、社会保険事務所に行って調べてみると、時効で消滅した部分を除いても500万円を越える年金が存在することがわかり、保全する手続きを行いました。裁判が終わった後、被告人はもちろん、担当の検察官も大変喜んでいたのが印象的でした。何もなさそうな事件でも、良く検討はしてみるものだなと思いました。
法律家としては法律構成ができることが大前提ですが、加えて、洞察力が重要だとつくづく思います。たとえばこのような証拠があるからこのような事実があるはずだ、とかこの事実からこんな証拠があるはずだ、と考えることによって、隠されている事実や証拠に巡り会えることがあります。受験時代に伊藤塾長から「脳に汗をかくほど自分の頭で考えることが大事」と繰り返し言われておりましたが、実務にでると、案件・事件は当然ながら個別であり、マニュアルもありませんので、まさに自分の頭で考えるほかありません。
また、伊藤塾長から教わって印象に残っているのは、現在の憲法のもとでは、個人の自由が目的で、民主主義はその手段であること、司法の主な役割は、濫用的な民主主義で侵害される個人の自由を守ることにあるということです。この価値観は、今後も忘れずに持っていたいと思います。
 
不動産関係を専門分野に

現在、不動産の分野を中心に仕事をしていますので、この分野でもっと研鑚を磨き、不動産関連案件に必要な知識を備えていきたいと考えています。不動産関連案件は扱う金額も大きく、また、仕事の中でお会いするこの業界の方には、人間味あふれる、ユニークな方が多いと感じます。この分野を行政法まで含めて包括的に専門的に扱える弁護士はまだまだ少ないと思います。
仕事に対する実感ですが、紛争の中に身を置きながら、相手方、依頼者、裁判所、その他関係者と、交渉から訴訟までの段階で様々なやり取りをしているわけですから、エキサイティングで退屈はしません。また、判決で自分の主張が採用されたときは、心地よい達成感があります。

アイディア次第で大きく広がる弁護士の仕事

就職難といわれ弁護士になることへの不安を感じている方もいらっしゃると思います。ただ、日本の法体系がどのように構築されているのかを知って、自分で考えることにより、自分が何らかの判断をする際の基準ができます。そのようにして培った判断能力は、その人個人の大きなアドバンテージになるはずです。また、従来のように、法律事務所に就職して勤務するだけが道ではないと思います。たとえば国や地方公共団体等行政機関でも法律家が活躍できる場面があると思います。法体系を理解している行政官は社会の仕組みや政策を立案するためにたいへん優位だと思います。実際、徐々に行政や企業も弁護士資格を持った人材を内部に入れ始めており、少しずつ活躍の場が増えていけばよいかなと思います。
また、弁護士は自由業ですから、自分の好きな仕事ができます。仕事の幅も、自分のアイデア次第では大きく広がります。伊藤塾では「明日の法律家講座」を実施して、弁護士や実務家の方の話を聴く機会を設けています。ここでは弁護士がどのようなことを考えてどのような活動をしているのかを聴くことができます。上手に活用してイメージを広げ、自分の進路の参考にされるといいと思います。また予備試験の制度も始まりました。法科大学院に行くとそれだけで2、3年間の時間と費用がかかりますので、予備試験は重要なバイパスです。法曹を目指す方は、早目に実務にでて、仕事をする機会を得てください。

(2012年4月・記)

【プロフィール】
2005年 早稲田大学法学部 卒業
2007年 首都大学東京法科大学院 修了
2007年 新司法試験 合格
弁護士登録(61期)
2008年 日本橋フォーラム綜合法律事務所入所
2008年 民事介入暴力被害者救済センター運営委員会委員


■事務所プロフィール
日本橋フォーラム綜合法律事務所
〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町5-1
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TEL:03-3667-4591
FAX:03-3667-6760
■事務所の特長
民事部門として、最近では大型賃料増減額事案(サブリース契約・オーダーメイド賃貸借契約)/都市再開発法関連事案/オフィスビルやマンションの開発・ 管理・運営に関わる事案/建築紛争事案などの専門的な不動産関連事案/一般民事事件・家事事件
その他、商事部門として、顧問会社における株主総会案件/会社組織の改編問題/人事労務問題/企業診断など
■所属弁護士会
第二東京弁護士会