基礎的な知識は基礎マスターに凝縮されています。何度も繰り返すことがその後の学習に非常に役立ちます。

大川 恒星さん(23歳)
 

合格者イラスト
京都大学法学部4年在学中
【合格校】
・京都大学法科大学院(既修)
・同志社大学法科大学院(既修・半額免除学生)
【受講講座】
入門講座本科生+リーガルトレーニング
 
 
※プロフィールは、2010年合格時点のものです。


はじめに

 私が法曹を目指そうと考えたのは、弁護士であれば間違っていることは間違っていると自分の信念を貫くことができると考えたからです。伊藤塾の説明会に参加し、伊藤塾長の丁寧でわかりやすい語り口と「明日の法律家を育成する」という理念を熱意をもって語られる姿に他の受験指導校にはないものを感じたので入塾を決意しました。

私がとった勉強方法 

適性試験対策について

 私の適性試験の点数は悲惨なものでした。旧司法試験の択一対策と重なった結果、適性対策に取り組んだのが5月中頃からと非常に遅くなり、十分な対策を練らなかったのが要因です。模試で少々いい点数を取ったからといって、決して油断しない方がいいと思います。京都大学は適性試験をあまり重視しない大学院ですが、一次試験で門前払いの危険性があります。せっかく法律の勉強を頑張ってきたのに‥という事態になりかねません。適性試験の点数が悪いと11月初旬の一次試験の発表までモチベーションを維持するのが非常に大変です。それに加え、私は日弁連やTOEIC®・TOEFL®(東京大学・慶應で必須)や法学既修者試験(早稲田・中央で必須)を受験していなかったので、法科大学院の選択肢が非常に少なく、適性試験後は本当に自分の認識の甘さを嘆きました。
 京都大学法科大学院を目指される方は、法律試験に自信があっても、60点くらい取れればいいやなどと適性試験を軽視せずに、少しでも苦手だと思えば、コツコツと毎日10分だけでも適性対策の時間を設けるなど少しでも早い時期から対策に取り組んだ方がいいと思います。繰り返しますが、適性試験に失敗するとその後、本当にきついですよ。

法律科目試験対策について

(Ⅰ) 基礎的な法知識の修得について
 基礎的な知識は基礎マスターに凝縮されています。基礎マスターを何度も繰り返すことがその後の論文の学習や基本書における学者の様々な学説を理解するうえで非常に役立ちます。個人的には大学入学後、秋に伊藤塾に入塾するまでに、「憲法入門」など伊藤塾から出ている「入門シリーズ」(日本評論社)(体系マスターにあたる)を何度も繰り返し読んでいたので、基礎マスターの学習以前に民法であれば、総則、物権、債権、親族・相続と「全体像」をイメージすることができており、基礎マスターの講義にも追いていくことができました。この基礎段階の学習では、とにかく「全体像」をイメージすることが大事です。民法の基礎的な知識だけでも相当な量があります。学部の勉強で学ぶ細かな学説(法科大学院に合格するためだけであれば不要)も含めれば、とてつもない量になります。体系マスターや基礎マスターを何度も繰り返し、「全体像」をつかむことがとにかく大切です。頭の中で基礎マスターのテキストに書かれている目次を意識しながら、勉強するのが有効です。
 具体的には基礎マスターの教材をあらかじめコピーして講義に臨み、伊藤塾長や各講師がおっしゃった言葉を一字一句聴き逃さないという姿勢で、コピーしたテキストに走り書きをし、その後、復習段階でテキストに清書するのがいいかと思います。なぜなら、講師は講義中たくさんの情報をおっしゃられるので、原本のテキストにいきなり書き込むとテキスト内の情報が乱雑になり、一見して読みにくく汚いテキストになってしまうからです(私は直接テキストに書き込んでいたため、テキストが読みにくいものになってしまったので、もう一度テキストを購入したりパソコンでコピーしたりしながら、新たにテキストを作成することになりました)。また、始めのうちは講義で講師の方がおっしゃられる説明や情報の意味がわからないことがあります。しかし、意味がわからなくともインターネット講義を利用するなどして、わからなくとも講師の方がおっしゃられる通りにテキストに書き写しておくことも重要です。1年前はわからなかった記述が七法(行政法含む)の学習を一通り終えて、何度も復習するうちに、不思議と理解できることが勉強中何度もありました。

(Ⅱ) 実践段階の学習について
・短答式について
 旧司法試験の対策として条文・判例マスターを受講していました。法科大学院入試では択一試験を課している大学院が少ないです(京都大学も)が、択一試験の勉強は小さな論点の見逃しが少なくなるという論文試験にも役立つメリットがあります。また、刑法の択一試験をすばやく解くには、刑法の基本をしっかりと理解していなければならないので、論文試験で問われる思考の訓練にもなるかと思います。憲法・民法・刑法の全条文を学部の学習や基礎マスターの講義ではなかなか学習する機会がないかと思いますので、せめて民法だけでも早いうちから条文・判例マスターを受講したり、伊藤塾の「条文シリーズ」(弘文堂)を購入するなどして学習をした方がいいかと思います(民法は憲法・民法・刑法のうち特に条文が重要)。
 私は択一試験があまり得意ではなかったので、旧司法試験の択一試験を2年とも42点で不合格という結果になりました。新司法試験では七法で短答式試験が課されるので、学部時代から憲法・民法・刑法だけでも学習していれば、法科大学院でも慌てることがないかと思いますし、私のように早い段階で短答式が不得手なことが自覚できることにもつながります。
・論文式について
 私はオリジナルの論証を作ることに専念しました。伊藤塾の「論証パターン集」の接続詞や学説の展開を参考に、伊藤塾のテキストや学部の授業で使用される基本書や論文の知識などを用い自分なりの言葉で七法全ての論点についてあらかじめ論証を作成し、テスト前は何度もそれを見返していました。伊藤塾の「論証パターン集」は非常に便利ですが、絶対に丸暗記してはいけないと思います。本番は緊張していることもあり、暗記した言葉がそのまま出てこないことも多々あります。背景にある考え方をきちんと理解したうえで覚えなければならないと思います。論証の暗記は答案を時間内に書き切るうえで極めて重要ですが、ここでの「暗記」とはあくまでも理解したうえでの暗記であると思います。また、私は論文マスターで示される模範答案を最初のうちは丸写しして法律の答案への慣れを養いました。3回生を終え、一通り法律の基礎学習を終えた後は、基本書を読む際には「本番であれば、このように書く」という風に頭の中で答案を書きながら、基本書を読み進めました。
 最後に、ぜひ自主ゼミを友人と開くなりして、自分以外の人の意見を聞いたり自分の意見を他の人に説明する機会を設けることをおすすめします。4回生になってからは少なくとも週1回は同じ目標を目指す友人と自主ゼミを開いていました。頭の中ではわかっている気がしたことも、友人に説明しようとしたときには説明できないなど自分の学習段階を周りとの比較で客観視できると思います

学部成績について

 伊藤塾の講義で学部の勉強を先取りしていたので、2回生前期の法律科目の試験は優を取れました。しかし、それで油断した結果、基礎マスターのテキストや基本書を漫然と読んで勉強した気になって臨んだ2回生後期の学部試験は知識を話すことはできるが、それを答案で表すことができず、パニックに陥り、散々な結果でした。3回生以降、知識を文字にする重要性(アウトプットの重要性)を痛感したので、書けるようになるにはどうすればよいかを考え、始めのうちは論文マスターの模範答案を丸写しすることからスタートして、最終的には基本書の内容で伊藤塾の「論証パターン集」に加筆を加えたり、自分なりの言葉で書き直すことでオリジナルの論証を作成しました。おかげで、学部試験では3回生以降、安定して優を取ることができるようになりました。

志望校の選択について

 京都大学に通っていたこともあり、慣れ親しんだ校舎や教授の方々のもとで勉強したい、一緒に自主ゼミなどを通じ切磋琢磨してきた友人が数多くいる環境のもとで勉強を続けたいというのが京都大学法科大学院を選択した理由です。

直前期と試験当日

 11月初旬の一次試験の発表前1週間は大げさな表現を使えば、生きた心地がしませんでした。一次試験の結果の発表日はバイクが家の近くで停まるたびにドキドキして、勉強どころではなかったです。一次試験合格後は気分も一新して、二次試験対策として、すでに作成したオリジナルの論証を何度も読み返すなど、基本的な問題の復習に努めました。この時期を割と落ち着いて過ごすためには、できる限り早い段階で七法の学習を終えておく必要があります。国公立大学を第一志望に目指される方は、9月にある私学の法科大学院入試までに一通り学習を終えることを目安にすればいいかと思います。私は適性試験に失敗したので私学の法科大学院入試が逆にモチベーションになりました。

伊藤塾の学習フォローについて

 私は伊藤塾長ビデオクラスに入塾したので、通学と異なり自分で勉強のスケジュールを管理しなければならないという大変さはありました。もっとも、大学に通う前に早起きして自宅で講義を聴いてから大学に通って、夜は飲み会に参加したりアルバイトを行うなど、自由にスケジュールを組むことができたので、入塾した当初はきつかったですが徐々に慣れることができました。 
 また、インターネットで何度も講義を聴き直すことができることや早送りできるのは非常に役立ちました。データをプレーヤーに転送して歩きながら聴くこともでき、時間を有効に活用できました。

入学前準備として

 七法の復習をするとともに、労働法の予習を考えています。また、新司法試験では七法の短答式が要求されるので、入学前までに商法・訴訟法・行政法の短答式対策について考えたいと思います。合格発表後、伊藤塾のホームページで見ることができた伊藤塾長による「法科大学院の合格発表を受けて」の無料講義が参考になりました。

合格後に必要なこと

 私は労働問題に取り組む弁護士になりたいと考えています。昨今、ネットカフェ難民や労働者派遣、就職率の低下など、労働環境をめぐる問題が山積みとなっています。明日に希望の持てない社会が定着し、格差が広がり、政治不信など社会に閉塞感が漂っているように思います。強者は就職できないのは努力しないからであると弱者を切り捨て、問題の本質を覆い隠そうとし、中流層は自分はこうならずによかったと傍観視する傾向があると思います。自分もそのように考えることがしばしばあるのは否定できません。しかし、問題を放置してしまえば、さらに事態は悪化します。間違っていることは間違っていると毅然と社会的強者に立ち向かえる弁護士になるため、努力していきたいと思っています。社会的強者に立ち向かうためには、抗うだけではなく相手との友好関係を維持しながら交渉を行うという高度な技術が要求されるかと思います。法科大学院での2年間は法的な知識を身につけるとともに、コミュニケーション能力を高めていきたいと思います。 
 今後、法曹人口が増加し、以前とは異なり弁護士になれば安泰という神話は完全に崩壊すると思います。法的知識を身につけるために努力するのはあたり前で、伊藤塾長が常におっしゃられるように、合格後を考え学部時代から積極的に人前で話す機会を設けたたり、社会勉強になるアルバイトを行うなど、コミュニケーション能力を含めた「人間力」を鍛えていく必要があるのではないかと思います。

最後に

 このたび、京都大学法科大学院に合格できたのは適性試験の結果を悲観してあきらめることなく、勉強を続けることができたからだと思います。伊藤塾には1年生の秋から3年間お世話になりました。伊藤塾長の講義の合間に話される叱咤激励の言葉には何度も勇気づけられました。インターネット上における講義は何度も聴き直しました。伊藤塾長、講師のみなさん、本当にありがとうございました。講座の案内、テキストの編集、インターネットの動作環境など裏方で支えてくださった伊藤塾のスタッフの方々、勉強環境を整えていただき本当にありがとうございました。最後に、あきらめることなく、勉強を続けることができたのは両親の支えや同じ目標を志す友人の存在なくしてはあり得ませんでした。本当にありがとうございました。今後、法科大学院を目指される方は、最後まで決してあきらめることなく勉強頑張ってください。
(2011年1月・記)