予備試験の論文式試験は、基礎マスターや論文マスターのA・B+ランクの知識の網羅性が合否を分けると思います。

法科大学院在学中

 I.H さん(26歳)

京都大学経済学部卒業、私立大学法科大学院(既修)2年在学中
2012年 予備試験論文式試験1位合格
【受講講座】
司法試験入門講座本科生+リーガルトレーニング、司法試験既修本科生 など

※プロフィールは、2012年合格時点のものです。



はじめに

社会に出て2年目に、司法試験を目指そうと思い、時間はなかったものの短期合格のため翌年度の法科大学院・既修者コースの受験を目指そうと思いました。受験まで1年数ヶ月しかなく、他学部出身ゆえ法律知識はゼロという状況でしたので、受験指導校を利用することが絶対不可欠でした。
 受験科目の全体像をつかむために伊藤真の入門シリーズ(日本評論出版)を読んでいたこともあり、伊藤塾に入塾しました。
 その後、伊藤塾をフルに活用して、無事に法科大学院に入学できました。予備試験は、勉強の契機のためと、司法試験に向けたチェックのために受験しました。 

私がとった勉強方法 

基礎的な法知識・法理論の修得について

<1> 私が予備試験を受験するまでの学習歴は、( i )伊藤塾入塾~法科大学院入学(1年数ヵ月)と( ii )法科大学院入学~予備試験(1年数ヶ月)です。
   予備試験の論文の基本法律科目7科目は、大部分が( i )の時期に勉強した基礎知識を素直に問う問題でした.。( i )の時期の勉強方法について書きたいと思います。
 <2> 総論
  最初の10ヵ月程度は基礎マスターと論文マスターに専念しました。私のとった手順は、( i )1科目だけを「基礎マスター→論文マスター」の順で聴き、それが終わるまで他の科目は手をつけない。( ii )1科目につき1ヶ月程度を目安とする。( iii )これを7科目について繰り返す。というものです。 初めの4ヶ月は仕事と併行していたこと、民法の量が膨大なこともあり、7科目分の基礎マスター・論文マスターを聴き終えるのに結局10ヶ月ほどかかりました。
 <3> 基礎マスターについて
  基本方針は、( i )受講直後の復習は完璧を目指さず、7割程度の理解度・定着率でよしとして前に進む。( ii )1科目の基礎マスターを最後まで聴き終わったら、すぐにその科目の論文マスターに突入する。( iii )論文マスターと併行して基礎マスターテキストを読み直して①の段階で不十分だった理解・記憶を補っていく。というものです。
  論文でどう書くかという最終形が見えないままに、基礎マスターの復習・記憶を完璧にしようとしても量が膨大すぎて挫折感を味わいました。そこで、知識が不十分でも早く論文マスターに入りました。
  論文マスターを受講すると、( i )論文問題ではA・B+ランク(特にAランク)の知識が問われることが圧倒的に多く、( ii )重要論点であっても理由づけは一言で足りることが判明しました。この発見を活かして、基礎マスターテキストの読み直しの際には、( i )A・B+ランクの論点に絞り、( ii )覚える理由付けを1つに絞るなど、実戦的な形で記憶していくように努めました。長い論述を覚えようとしても、記憶力の限界があり、本番の答案に反映できないため意味がないと感じました。
 <4> 論文マスターについて
  論文マスターの担当は呉講師でした。呉講師に巡り合えたことは非常に幸運でした。呉講師の論文マスターの講義で素晴らしいと感じたのは以下の点です。( i )絶対に覚えなければならない箇所に絞って、短くマーク指定してくれる。→とにかく復習時に記憶が定着しやすい。( ii )答案の展開を明確かつ簡潔に指摘してくれる。→論文の型がつかめる。
  私にとって、論文マスターも半分はインプットでした。この段階で妥協すると法科大学院の受験に間に合わなくなることが明白だったので、論文マスターで出てきた知識は確実に復習しました。
  呉講師のマーク箇所を中心に、論点の論述の書き直しや答案構成のやり直しを、受講した日とその翌日の二度行いました。受講日と翌日に連続して復習することが記憶の定着に効果的でした。

短答式試験対策について

<1> 民法・民訴・刑訴・行政法
  岡崎講師の短答マスターで対策しました。岡崎講師は司法試験・短答式試験の出題傾向を完璧に把握しており、的確に条文解説をしてくれます。民法は要件事実や論文の勉強にもなります。 ただし、短答マスターを聴いただけで放置すると何も身につかないので、条文を読み返し、肢別本を解くという復習を大事にしました(※今になって思えば、多肢式の過去問集にしておけばよかったです)。
 <2> 商法
  自分で会社法の条文を読み、肢別本を解きました。会社法の条文を読むのはとても苦しい作業ですが、論文にも必要だと思い、我慢して取り組みました。
 <3> 刑法
  論文の勉強がそのまま活きると思います。それに加えて、過去問で出題形式に慣れ、短答プロパーの出題傾向を把握すれば足りると思います。
 <4> 憲法
  人権は判例知識が多く問われるので、伊藤真の判例シリーズ(弘文堂)を読みました。 統治は短答マスターを聴き、条文と問題集で復習しました。

論文式試験対策について

基本法律科目7科目は、基礎マスター・論文マスターのA・B+ランクの知識を素直に正面から問うものばかりでした。法律実務基礎科目も、民事系は基礎マスターレベルの理解を問う問題がありました。基礎知識の網羅性で合否が分かれたのではないでしょうか。法科大学院入学前に集中的にA・B+ランクの知識を覚えたこと、および、法科大学院入学後もその知識の反復継続をできる限り心掛けたことが良い結果につながったと思います。

法律実務基礎科目対策について

<1> 民事について
  民法の短答マスター(情報シート)は、紛争類型別レベルの要件事実を網羅しており、読みづらい紛争類型別よりもはるかにわかりやすく整理されています。情報シートの要件事実を全て理解・記憶すれば、法科大学院レベルの要件事実学習をカバーできると思います。 また、民法・民訴の基礎マスターレベルの理解も問う問題も出題されました。
 <2> 刑事について
  刑事事実認定の問題は高度ではなく、半分は日本語の作文能力が問われているような感じでした。
  また、刑訴法の短答マスターで岡崎講師が強調していた条文知識が、そのまま出題されていました。

一般教養科目対策について

司法試験とは関係がないことから対策していません。司法試験を最終目標とする以上、法律科目を重視すべきではないでしょうか。それで十分に合格点に到達します。

口述試験対策について

質問事項の多くは民法・民訴・刑訴の基礎マスター・短答マスターがカバーしていたと思います。意外に、基礎マスターレベルの知識も多く聞かれました。

司法試験受験の準備として 

司法試験は、問題文が長く複雑であること、時間の制約が極めて厳しいことから、2時間でいかに答案をまとめるかを重視して対策してきたいと思います。
 事務処理・答案処理の比重が高いなど、予備試験とは性格の異なる部分が多数存在しており、安心できません。

最後に 

予備試験の論文式試験は、A・B+ランクの知識の網羅性が合否を分けると思います。それだけでも7科目トータルでは膨大な量になりますので、網羅するのは大変です。しかも、放っておけばどんどん忘れていきます。常に網羅性に対して危機意識を持って、反復継続していきたいものです(司法試験に向けての自戒も込めて)。