法科大学院入試で出題される問題は、論文マスターで学習するものと変わらないと思います。

K . T さん
 

大阪大学法学部卒業
【合格校】
・大阪市立法科大学院(既修)
・関西大学法科大学院(既修・全額免除学生)

【受講講座】
入門講座本科生、コンプリート論文答練、適性試験対策講座 など

※プロフィールは、2010年合格時点のものです。


はじめに

私は小学生のころから弁護士という職業に憧れがありました。その幼い憧れが目標に変わったのは高校生のころです。具体的なエピソードはプライバシーの都合上割愛させていただきますが、私の目指しているトラブル解決のプロであるはずの弁護士という職業は、むしろトラブル解決にとって邪魔な存在と見られている様だ、と体感させられる出来事がありました。どんなに深刻な事態になっても、弁護士の利用によっては解決したがらない日本社会の風潮の表れといえる出来事でした。しかしそれは良い風潮とは思えません。結局立場の強い者の言い分ばかりが通り、弱い者が泣き寝入りすることになると思うからです。この現状に触れ、とにかく私が市民に身近な存在といえる弁護士となることでこの社会的認識を変えたいと思いました。これが、私が弁護士を目指したきっかけです。

私がとった勉強方法 

適性試験対策について

適性試験については、他の勉強に追われて対策講座の実力養成編を受講するに至らず、過去問を少し解いただけで不安を抱えたまま試験本番に臨むことになりました。本番ではやはり散々な結果を出して、後悔し色を失いました。
そこでロースクールコンサルタントと相談し、私の取った適性試験の点数はそれほど深刻なものではないことを客観的情報に基づき、教えてくださいました。またその時にパーソナル・ステートメントなど他の受験上の悩みも合わせて答えていただき、復活できました。本当に感謝しています。

法律科目試験対策について

(1) 基礎的な法知識・理論の修得について
まず、基礎マスターの受講方法について。初学者は一度に多くのノウハウを吸収することは難しいと思います。そこであまり欲を出さず、必要最低限すべきことを確実にものにすることが重要と考えます。すなわち、その回の講義を真剣に受講し、時に講義の該当部分をインターネット講義で聴き直すことなどによって、次の回の講義までに疑問点を持ち込ませないように勉強に取り組むことが重要と考えます。そしてこれでも相当大変ですから、完璧主義にならず「自分なり」のペースで勉強を続けていけばいいと思います。
ただし、ぜひ意識して時間を割いてもらいたいこともあります。それは、(1)暗記することと(2)体系を見直すことです。自分の期待とは裏腹にどんどん記憶は失われます。もし自分の記憶力を過信して暗記の勉強を怠ると、答練などでいざ答案を書く段階で必要な事項が正確に思い出せず、気がつけば答案用紙が真っ白、という事態に陥りかねません。そこで、一日のうちにいつでもよいので記憶の時間を取るべきです(1)。また、その回の講義でバッチリわかっているつもりでも、全体の中での位置づけがわかっていない場合には、自信をもって問題を解いたつもりでも筋の違うことを検討してそのまま答案を作ってしまう、ということが度々起こります。そこで、各回の講義をしっかり復習したあと、全体像だけを見直しする時間を設けることをおすすめします。長い時間をかける必要はなく、眺めるように単元や論点の位置づけをチェックすると十分身になります(2)。

(2) 実践段階の学習について
次に、論文マスターの受講方法について。重要なのは前もって次回講義で扱う問題を解くことです。基礎マスターで重要事項を学習したからといって、問題を正しく解けるかというとそうでない場合がほとんどです。私も、初めて「問題研究」で問題を解く時はさっぱり問題ができなくても、それが普通だろうと広い心で構えていました。むしろ重要なのが、自分の普段の解法の癖や、重要論点の習熟が十分かを発見することだと確信しています。私はとにかく答案構成をして疑問点などを見つけ、時間があればノートに実際に考案を書きました。それからテキストの答案例をざっと読み、その中に書かれている内容について疑問点や自分が考えつかなかった点を横に小さくメモをし、それから講義に臨みました。講師から疑問点の多くについて説明がなされたと感じたのは、私が平均的な受験生の説き方、思考法やつまずき方をしていたということでしょう。そして家に帰ってからは、内容理解の確認や、答案例の表現の手直しなどをすることで、次に同じ問題を解く時に同じ誤りをせずに合格答案が書けるようにすることを最も意識して復習していました。それに加え、論文答練を受けることで、今まで気づかなかった「わかったつもり」を数多く発見でき、さらに実力を向上させるのに役立てることができました。
法科大学院入試で出題される問題は、基本的には、伊藤塾の論文マスターで学習するものと変わらないと思います。私の場合、旧司法試験を目指していましたから、それとの出題形式や試験時間の違いをチェックし、関西大学が今までやってきた問題のものと概ね変わらないとわかると、今まで使ってきたテキストだけを解き続けることに決めました。

志望校の選択について

前述のように、私は市民に身近な弁護士になることを目指しています。そこで志望校選びのポイントとして、市民派ローヤー養成のためのカリキュラムが充実しているか、ということがありました。私の受験した関西大学は、パンフレットを見る限りではこの点についてカリキュラムは充実している模様です。
それに加えて、通学距離、司法試験の合格率、学費・学費免除又は奨学金の有無(と金額)、受験日の重複の有無などがポイントになりました。関西では「関関同立」と呼ばれる私立名門校がありますが、私に関しては、関西大学以外はこれらの要件を満たさなかったため、受験することはしませんでした。

直前期と試験当日

受験前約1ヶ月を直前期と呼ぶとすれば、私は、憲法・民法・刑法に3日、それ以外の法律に5日当てることに決めました。まず比較的知識の定着している憲民刑を先にまとめてこなしました。予め自分の苦手の論点、論証、問題や単元をチェックしておき、そこを確認する作業だけをして早期に切り上げました。
次にそれ以外の法律に取り掛かりました。これらはまだまだ知識の定着が十分ではないので、試験の日から時間の空いた段階で詰め込んでも忘れてしまうと考え、勉強の時期をもともとズラすつもりでいました。これらの科目についても予め苦手チェックをしておきたかったのですが、それすらろくにできていない状態のものも少なからずありました。そこでまず広く浅く問題を答案構成し、自分の知識や思考パターンで問題が解けるかを確認しました。これにより、これらの法律科目の全体像を見渡すことができ、試験本番の不安がかなり少なくなった気がしました。もっとも、「書く訓練」がおろそかになったことは否めず、試験本番では論証の甘いところが何箇所か出てしまったことを白状しておきます。
試験前日は「これを見直しておかなければ絶対後悔する!」というものに絞って手をつけました。特に憲法では、1月に受講した2010年コンプリート論文答練で出来がめちゃめちゃだった問題を実際にノートに走り書きまでして対策しました。すると次の日それがほぼ同じ形で出題されました。驚くと同時に解ける自信が生まれました。なお、詰めの甘さゆえやっぱり答案構成に苦労したのはナイショです。

入学前準備として

ロースクールコンサルタントが担当するオープンスクール、『ファイナルアプローチ』を参考に、論文テキストの見直しや新司法試験の問題にチャレンジするつもりです。

合格後に必要なこと

前述しましたが、私がなりたい弁護士像は市民に身近な弁護士です。合格後に必要なのは、そのための具体的な活動を積極的にしていくことだと現時点では考えています。その中には、インターネットを効果的に活用して過去の「明日の法律家講座」で行われた講演を視聴することも含まれています。もともとは志望理由書(パーソナル・ステートメント)で書くための素材集めをしている時に「明日の法律家講座」の存在を知ったのですが、将来の法曹のあるべき姿、自分の目指す弁護士の活動に役立つ情報を多数得られてとても重宝しています。今後も活用していく考えです。

最後に

まだ現時点(’10.10.28)では国公立大学の試験が終了していません。ですから感謝の意も勝利の喜びも言わないでおこうと思っています。それでは。

(2010年10月・記)