基礎の講座を繰り返し、知識を身につけることは、法科大学院にも新司法試験にも重要です。

H.N さん(46歳)
 

日本大学法科大学院(未修)修了
◆出身大学/横浜国立大学大学院工学研究科修了
◆受 講 講 座/入門講座基礎生
 
※プロフィールは、2010年合格時点のものです。  

はじめに

新司法試験を目指す前、私は、医療関係のソフトウエアの仕事をしていました。そこで医療事故が起こるのを目の当たりにし、これではいけないと思うとともに、別な分野の仕事をしてみたいと考えるようになりました。そこで、新司法試験の当初の趣旨であった他分野からの人材を広く募集するというセールストークに魅せられたこともあり、以前から興味のあった法律関係の仕事をしてみたいと考え、新司法試験に挑戦することにしました。
他分野から未修での参加者たる自分は、まず基礎知識の不足を補わなければ、全く勝負にならないであろうと考えました。そこで、法科大学院の合格と同時に、定評のある伊藤塾の基礎講座を申し込み、入学前及び入学してから何周も講義を聴き直しました。
使った感想は、伊藤塾長のスムーズな語り口のおかげで、知識が自然と頭に入ってきました。

私がとった勉強方法 

基礎的な法知識・法理論の修得

基礎的知識を短期間で修得するには、基礎講座が効果的です。基礎講座は数え切れない程繰り返し復習しました。この段階でのポイントは、とにかく覚えてしまうことでしょう。
未修1年の法科大学院の授業の中には、時間不足を理由に、全範囲をやらなかったり内容が薄かったりするものがありました。これを補う為にも、基礎講座は重要です。
逆に、未修1年でもスパルタ式の良い授業がありましたが、基礎講座を受けていなければ、ついていくのさえ難しかったと思います。

短答式試験対策について

短答式は、覚える量が多いため、優先順位をつけることが重要になると考えます。
【第1段階】新司法試験・旧司法試験の過去問の活用
 問われてる箇所を、判例六法ないし判例百選にラインマーカーをしました。これを何度も目を通しました。また、合格した年には、論文式対策と短答式対策とを、共通化することが合格への近道だと考え、短答式のスケジュールに合わせて百選を予習に使いました。一般的には、百選は短答式用とは考えられていないのですが、結果は良かったです。
【第2段階】答練の活用
 まず、正答率の低すぎる問題は、速攻捨てました。そして、自信を持って間違った肢は「やばい」マーク、自信なく間違った肢は「反省」マーク、自信なく正解した肢は「曖昧」マークをつけました。「やばい」マークの肢は誤った知識を意味し、誤った知識はその周辺を含め混乱している弱点を意味するので、早めに無くすことが重要です。かかる優先順位にしたがって、何度も繰り返して、1回目でだいたい1/ 3程度を覚えたものとして捨てることができました。(すなわち、2周繰り返して約半分(4/9)になります)
 注意点としては、短答答練の解説冊子の解説を読んで終わりにするのではなく、判例六法、百選、基本書にまで立ち返って、周辺をも含んで覚えることが必要でしょう。特に、「やばい」マークの肢は、致命傷になりかねないので、必ず立ち返るようにしていました。

論文式試験対策について

私は3年目で合格しました。1年目、2年目は、論文で落とされていたので、これまでの反省点を中心にお伝えします。
〈法律構成の出題者の意図とのズレ対策〉
 特に一生懸命勉強した刑法において、ズレることが多かったです。対策としては、頭の中に事案のデータベースを作るのが有効であろうと考え、まず百選の事案を暗記しました。これで、ズレが少なくなったことから、論点知識が事案と乖離していることを認識し、以降、その論点が問題となった事案を意識することにより、徐々に点数が安定するようになりました。
〈論点落とし対策〉
 私は、言われれば知っているけど、自ら拾うことができないという状態が長かったです。この対策としては、前述と同じ内容になってしまいますが、論点を事案とともに、事案やあてはめ方をも含めて覚えることが必要だと思います。新司法試験では、学説の対立はさほど重要視されていないので、判例の規範をその事例とともに押さえておくべきでしょう。私の失敗としては、論点を覚えることを優先しすぎて、それが事案と分離してしまったことだと考えます。
〈論述対策〉
 ここでいう論述とは、いわゆる論証パターンのことではないことに注意してください。私は、論証パターンは、規範を導くまでの理由づけであると考えます。(新司法試験と旧司法試験の論証の違いは、規範を導くまでの理由づけの量的違いに過ぎないと考えます。)これに対して、論述とは、理由付けが説得的であることのみならず、問題提起を適格にして予測可能性を与えること、三段論法で絶対にズレないこと、あてはめで反対評価にも触れることなどの答案表現の全体的記述を指します。
 新司法試験の当初の出題においては、規範に「あてはめ」るだけで精一杯という問題であったと分析しました。そのため、私は短絡的にもう論述それ自体は重要ではないと勘違いして、軽視していました。これが、合格まで長くかかってしまった主たる原因であったと今では思います。すなわち、知識(事案、論点、あてはめの知識)があれば論述できる人は少なからず存在します。しかし、私はこのタイプではありませんでした。それを認識したのは、弁護士の先生に自分の答案を見てもらい、とても厳しい評価をいただいた時です。それから、考えを改め、答案の論述にも気を遣うようになりました。具体的な対処方法としては、論述の不備は自分では検出できないので、積極的に他の人に見てもらい、素直に反省することを心がけました。

直前期の対策について

短答式対策としては、試験の1週間前にやるべき量を、その前に覚えて捨てることにより、絞っておく事が重要になると思います。
論文式対策としては、即効性のあることを優先させるべきなので、定義・趣旨・論述の再確認のできる資料を作っておくべきでしょう。私は、判例六法に足りないところを書き込んだものを用意しました。 

伊藤塾の受講スタイルとフォロー制度について

私が受講した頃は、新司法試験中級者向けのコースが不足していたので、他校の論文講座等を受講しました。しかし、それらは内容的に不足していました。結局私は、インプットからアウトプットへの切り換えの段階でつまずいてしまったと反省しています。
今では、講義の種類も充実しているので、伊藤塾で一貫して受講されることが近道ではないでしょうか。

法科大学院の受験対策、伊藤塾の活用

法科大学院での受験対策には期待ができないことについては一般的な認識であると思います。この足りない部分は、自ら補うことは困難な部分もありますので、伊藤塾などの受験指導を受けることが有効でしょう。具体的には、短答論文答練の敗因を、ゼミを通じて、ないし、友人同士で徹底的に分析し、同じ失敗をしないことが有効だと思います。

学習スケジュールの管理について

共通事項としては、未修2年まで、既修1年までは、受験対策を意識しつつも基本的な部分をきちんと押さえておくことが重要だと思います。具体的には、基本書の読み込み、百選の読み込みをこの段階までに済ませておくとよいと思います。
ただ、私は、論文が苦手で、最終合格までとても苦しんだので、答案の論述についても、もっと早くからはじめるべきであったと反省しています。この点については、その人の特性によると思います。
友人の中には、短答式が苦手という人もいます。このタイプの人は、短答知識の入力をもっと早く始めるべきでしょう。
結論的には、自分が苦手な部分を早めにみつけて、それをなるべく早く克服することが短期合格につながると考えます。
また、モチベーションの維持という点から、3回目の挑戦はとてもきつかったです。決して少なくない人たちが自然消滅していきました。私は、3回目の仲間とゼミを組んで、お互いに励まし合いながら、何とか乗り切ることができました。 

合格後に必要なこと

合格は、ゴールではなく、スタートに過ぎないと考えます。
すなわち、もうこれ以上勉強する必要がないのではなく、依頼人の利益を守るために、日々知識・経験を蓄えていかなければならないと考えます。私は、かつて弁護士・弁理士を依頼した経験から、依頼人の立場はとても弱いものであると知っています。そして、法律家(弁護士)は、常に依頼人を助けるべきであることを忘れずにいることが必要であると実感しています。
この初心を忘れずにいたいと思います。

(2010年11月・記)