判例の知識は必須です。私は伊藤塾の最新判例講義で、重要な最新判例を学びました。
R.Kさん(26歳)
東京大学法科大学院(既修)修了
◆出身大学/東京大学法学部卒業
◆受 講 講 座/入門講座本科生、最新判例講義 ※プロフィールは、2010年合格時点のものです。
はじめに
私は高校生の頃から人の役に立つ仕事に就きたい、人に感謝される仕事に就きたいと漠然と思っており、弁護士を目指しました。
大学2年生に入ると同時に、多くの友人がしたように、私も伊藤塾に入塾しました。伊藤塾を選んだ理由は、多くの友人や先輩方も伊藤塾を選んだことと、伊藤塾が学校と自宅から近かったからです。
私は塾長クラスを受講しました。伊藤塾長はとてもわかりやすく熱心に講義され、こちらも気を抜いてはいけないという思いで受講しました。伊藤塾長の講義は本当に何度でも受講したい、何度でも聴き直したいと思うほど素晴らしい内容だと思います。
私がとった勉強方法
基礎的な法知識・法理論の修得
基礎知識については、私はひたすら「試験対策講座」(弘文堂・以下シケタイ)を読んでいました。基本書などは1回通すのが大変であること、著者によって癖があること、まとまっていないことが多いこと、などの理由から敬遠しました。シケタイでどうしてもわからない時にだけ基本書などにあたるようにしていました。シケタイは体系化がしっかりされており、通しで勉強しやすく、またどの参考書よりもまとまっているので、基礎的な法知識の修得にはもってこいの参考書だと感じました。シケタイを何度も何度も読み漁り、どこに何が書いてあるかを覚えるくらい繰り返しました。不足していると思った部分については基本書などから補填して、全てシケタイに書き込んで情報の一元化を図りました。
基礎知識は、難しい問題であればあるほど必要になってくると思います。また、基礎知識がしっかり定着しているかだけでも受験生の間でかなり差があると思います。まずは、とにかく基礎知識を正確・確実に修得することが大切だと感じました。
短答式試験対策について
短答式試験は科目によってかなり対策を異にしたので、以下科目ごとに私が取った対策を述べたいと思います。
憲法は、人権の問題についてはかなり微妙な選択肢が多く、短答式試験実施直後の受験指導校の解答速報でもかなりぶれのある分野だと思います。この分野は大外ししなければ不正解でも気にしないようにしていました(部分点がある問題では部分点をもらえるだけで満足しました。また模試などで解答分布を見て、多くの受験生と同じマークをして不正解だった場合も気にしないようにしました)。他方で、統治の問題と判例の問題は絶対に間違えないように心掛けました。統治は他の科目と比べるととてつもなく範囲が狭いですし、判例を読み込むことは必ず憲法の論文問題にも活きます。統治は条文の暗唱を中心に学習し、判例は細部まで(時には判例百選を超え原文にあたったり、補足意見なども読んだりしました)覚えるようにしました。
行政法も、条文と判例を中心に勉強しました。条文は面倒臭いですが、一度相違点などをまとめると忘れにくく、他の受験生と差をつけることができます。判例に関する問題は間違えるとかなりの痛手なので、百選は全て読んでおく必要があります。重判や最新判例のうちの重要な判例も必須といえます。私は、伊藤塾の最新判例講義で毎年重要な最新判例を学びました。
民法は基礎知識の確実な定着でかなりの高得点を狙えるはずです。私は「情報シート」を繰り返し読みました。民法はどの科目よりも配点が高いので、民法を得意科目とするとアドバンテージになると思います。
商法はとにかく範囲が広く細かいことも問われるので、私はかなり絞って勉強することにしました。皆が間違えないところは絶対に間違えないというスタンスです。会社法の論文でも問われ得るところを、条文を中心に勉強しました。商法総則、商行為、手形小切手法は潔く諦めました。人それぞれだと思いますが、少しでも不安があるのならば、やった方がよいと思います。私は、総則などの部分の失点も挽回するつもりで会社法を集中的にやりました。
民事訴訟法は条文を中心に勉強しました。判例も著名なものを問うことが多く、短答式試験として特別な対策は必要ないと感じました。
刑法も、特に特別な対策はしませんでした。基礎知識の確実な定着で高得点が狙えると思います。
刑事訴訟法も、民事訴訟法と同じく、条文を中心に勉強しましたが、他に特別な対策は取りませんでした。
刑事系の注意点としては、時間が足りなくなることが多いので、時間配分に気をつけることが大切だと思いました。
論文式試験対策について
論文式試験で大切だと感じたことは、とにかく答案を書くことと友人や先生に見せて評価をいただくことです。頭の中でわかっているつもりで実はわかっていなかったことが答案を書くことによって初めて判明することが多いことから、答案を書くことは非常に大事だと思います。どんなに簡単だと思える問題でも、億劫がらずに答案構成だけでなく実際に答案として書くことをおすすめします。
評価を頂くことは、自分では論理的に納得の行く形で書けたつもりでも、他者からみたらわかりにくい表現だったり、思考回路が伝わらなかったりすることがあることから、大切であると思います。他者の評価を経て、表現方法や書く順序などの「答案の書き方」が最初と全く異なるようになると思います。
科目ごとの特別な対策としては、公法系はとにかく時間がないので最後まで書き切ることと事実をしっかりと拾って評価することを心掛けました。憲法に関しては、日ごろから社会問題について憲法的視点から考察する習慣をつけました。行政法については、私はあまり興味が持てず問題文を読むだけでも苦痛でしたが、法律的な側面が少なく、いかなる事実をどのように評価するか、という事実認定のウェートが高く、そこを意識した答案を書けば悪い点はつかないと感じ、そのように割り切って勉強しました。ただし、事実を拾うだけでなく、しっかりと評価しないとなかなか点数には結びつかないように思いました。
民事系は、基本に忠実な骨太答案を目指しました。私は民事系に興味があったのですが、点数がなかなか伸びず、悩みの種でした。しかし、小手先の知識だけで答案を書きはじめず、基本からしっかりと書いて知識に結びつけるスタイルを貫いてからは点数が伸びるようになりました。民事系はもしかすると一番論点に飛びついてしまう危険な科目なのかもしれません。
刑事系は特に得意不得意がわかれる科目だと思います。不得意な方は演習量を増やして、得意な友人の答案と比べたりアドバイスをもらったりすると伸びると思います。法律の側面でも事実認定の側面でも実力差が顕著に出る科目だと思いました。
直前期の対策について
直前期は参考書などを絞って勉強する範囲を限定し、何度も何度も繰り返し学習することが大切だと感じました。直前期は特にあせったり不安に思ったりして手を広げがちですが、自分がこれと選んだ本に限定して勉強する勇気を持つことが合格への近道だと思います。逆に言えば、直前期までにそういった本に出会う(もしくは自分で書き足すなどして理想の本を作る)ことが大切だと思いました。私はシケタイにいろいろ書き込み、それを何度も何度も繰り返し読んでいました。基本書などは直前期にはもう見ませんでした。
あとは、もちろん健康管理です。健康な方でも試験当日は緊張のあまり寝れなかったり食欲が出なかったりします。私も初日と2日目は一睡もできず、ぶっ続けで起きていました。私の周りにも一睡もできなかったという方が少なからずいました。直前期を含めて万全の体調管理で試験に臨めるだけで、一歩リードだと思います。
伊藤塾の受講スタイルとフォロー制度について
私は、基礎マスター伊藤塾長クラスと、論文直前模試を受講しました。東京校(渋谷)が自宅から近いこともありましたが、やはりライブでないと緊張感が持続しないため、なるべくライブで受講するように努めました。ライブだと伊藤塾長に直接質問することができる点もよかったと思います。
やむを得ず欠席した場合は直ぐにフォローしました。伊藤塾のフォロー制度は充実していて非常に助かりました。
法科大学院での受験対策、伊藤塾の活用について
法科大学院では受験対策を全くしなかったため、法科大学院での授業と、受験対策を全く別個に考えていました。法科大学院での授業はアカデミックすぎるうえ、答案練習会などの機会も全くなく、答案の添削をしていただいたことがなかったので、受験対策は専ら受験指導校のお世話になりました。
残念ながら経済的な理由と学校からの距離の問題で、新司法試験受験の際は伊藤塾に通いませんでしたが、基礎マスターで学んだことや、「問題研究」はとても役に立ちました。
学習スケジュールの管理について
学習スケジュールはなるべく具体的に立てることが重要だと思います。抽象的なスケジュールを立てると、やらなければならないことがどんどん後回しになってしまう危険性が高いからです。また、仮に具体的なスケジュールを立てたとしても、完全にスケジュール通りに達成することは多くの場合、困難だと思います。そのような事態に陥った時には、何が必要か、何を切るべきか、冷静に判断してスケジュールを組み直すことも大切だと思いました。
長い受験生活の間には、時にやる気を失ったり、スランプに陥ったりすることもあると思います。私は、そんな時は新司法試験に合格して弁護士として働いている自分の姿を想像してなんとかやる気を出すようにしていました。また、多くの友人と悩みや苦しみを共有しつつ勉強できたこともよかったと思います。
「合格後」に必要なこと
これからはグローバルな力が必要になってくると思います。法曹人口の増加により多様なバックグラウンドを持った方が増え、英語が話せることが当たり前になる時代が来ます。企業取引においても海外会社がからむこともいまや普通のこととなっています。語学力をつけたいと考えています。
最後に
新司法試験の発表からまだ日にちがそれほど経っておらず、未だに合格した実感が湧かないというのが率直な気持ちです。しかし、家族をはじめ、周りの友人や少し疎遠になりがちだった旧友にも報告すると、誰もが自分より喜んでくれて、こちらも嬉しくなりました。新司法試験は色々と大変で辛かったり悩んだりすることもあるかと思いますが、心身ともに支えてくださる家族や友人、また密かに応援してくれる方々がいることを忘れないで、辛い時期を乗り越えてください。
(2010年11月・記)