法律の面白さを最初に教えてくれたのが伊藤塾でした。

西田 千尋さん（24歳）
 

はじめに

私が法律家を目指そうとした最初のきっかけは、大学２年生の夏休みにある民間企業のエクスターンシップに参加した際、集まった学生の皆さんが非常に優秀で意識が高く、すでに自分の得意分野というものを持っておられたことに影響を受け、私も何か自分にしか出来ないことをしたいと思ったからでした。それから、法律という人々の生活に欠かせないものを扱う仕事であり、人とのコミュニケーションが重要な仕事である法律家というものに惹かれ、「私にしか出来ないこと」を実現するべく、大学２年生の秋に法律家を目指そうと、伊藤塾に入塾しました。

私がとった勉強方法 

短答式試験対策について

短答式試験対策としては、以下の３点を行っていました。まず１つ目は、当たり前のことですが、新司法試験の過去問を押さえることです。過去問については、問題と答えを覚える位まで繰り返し解きました。確かに、試験で過去問と同じ問題が出題されることはありませんが、異なる問いの仕方であっても結局問うている条文や判例は同じということはよくあることなので、問われやすい条文や判例を認識・理解することができたり、どういった点が問われるのか、どういった点を注意して判例を理解すれば良いのかがわかり、短答式対策としては非常に有意義であったと思います。受験生のほとんどがやる対策であることから、他の受験生と差をつけないためにも、過去問を押さえることは必須だと思います。 
２つ目は、判例六法の読み込みです。これは、残念ながら試験当日までに全ての科目をチェックすることはできなかったのですが、判例六法は短答式試験で問われる知識の宝庫ですから、判例六法を繰り返し読み込み、条文と関連判例を押さえるということは短答式試験対策として非常に有意義であったと思います。判例六法に載っている条文と判例を全て押さえることができたら（できるかどうかは難しいですが）、短答式試験を恐れることは全くないと思います。
３つ目は、択一六法の読み込みです。一番試験直前まで行っていたのがこの勉強方法で、私個人的には、択一六法のお陰で短答式試験を突破できたとさえ思っています。前述のように、判例六法は条文と関連する判例を網羅的に掲載しているので、判例を押さえるという意味では非常に有効だと思いますが、私は判例以外にも、論点や説の対立、語句の意味、基本的な考え方なども短答式試験対策としてインプットしたいと考えたため、この全てが１つの本に集約されている択一六法は非常に重宝しました。まだ知識の定着が不安な時期は、問題を解きながら、わからなかった点を択一六法に戻って確認し、択一六法に情報を一元化していきました。そして、試験直前の知識が定着していたころには、確認のために、科目ごとに択一六法を読み込み、知識の正確な定着を図りました。
私の短答式試験対策は以上のようなものですが、肢別問題集をやったり、短答式問題集をやったり、短答式試験対策としては人それぞれだと思います。結局、何をやるかが重要なのではなく、自分が決めた勉強方法なり教材で、どれだけやるか、が重要だと思います。

論文式試験対策について

論文式試験対策としては、主に以下の２点を行っていました。まず、１つ目は、短答式試験対策と同様ですが、過去問を押さえることです。これも当たり前のことですが、実際に試験問題を解いてみることで、試験のレベルを実感することができたり、求められている視点や考え方などを知ることができると思います。また、やはり緻密に練られた良問ばかりですので、何より勉強の良い材料になると思います。
２つ目は、法科大学院の仲間とゼミを組んで、とにかくたくさんの問題を解いたことです。私は、要件事実のゼミ、選択科目のゼミ、基本科目７科目をチェックするゼミ、民事系問題をチェックゼミ、旧司法試験の問題をチェックするゼミなどに参加していましたが（時期はそれぞれ異なっていたり、重複していたりもします）、優秀な仲間と時間を計って問題を解き、解き終わったら検討する、という機会が多かったことが、私の合格の決め手になったのだと思っています。論文式試験は相手（読み手）に自分の考えていることを伝えるという作業ですので、自分が理解していても、相手に伝わらなければ意味がありません。その意味でも、法律知識の確認はもちろんのこと、言い回しや文章表現といった点も、お互いにチェックしあっていたことで、答案のレベルは飛躍的に向上したと思っています。

直前期の対策について

私が何より不安だったのは知識不足で、アウトプットについては前述のゼミでかなり力がついたと思っていたので、直前期の時間はとにかくインプットにあてました。前述の択一六法をひたすら読み込んでいました。択一六法に情報を一元化していたことがここで非常に役立ちました。あとは、何より体調管理です。私は、体調には気をつけていたものの、直前の２週間、体調を崩してしまいほとんど勉強が手につかずかなり焦りました。ですので、とにかく体調管理だけはしっかりするべきだと思います。

法科大学院での受験対策、伊藤塾の活用について

法科大学院では、個人でやる勉強を除けば、前述のゼミをメインに受験対策をしていました。これらのゼミは、２年から３年前期までは、土日や平日の夜の時間を使い、1回２～３時間、１つのゼミにつき週１回のペースで行っていました。３年後期から法科大学院卒業後は、自分で自由に使える時間が増えるので、朝から皆で起案をして、一緒にお昼を食べ、午後から検討、という形や、夜遅くまでゼミで検討、ということもしていました。法科大学院時代を通じて、ゼミは同時併行で大体３つ位に参加していました。毎日ゼミを組む人もいれば、一人で勉強するのが好きな人もいて、ゼミの組み方は人それぞれだと思いますが、一人で勉強する時間も、ゼミで皆で検討する時間も、私は両方大事だと考え、そのバランスは失いたくないと思っていたので、１週間にゼミを３つというのは個人的にはベストだったと思っています。

学習スケジュールの管理について

学習スケジュールについては、夏休み明けから週単位で考え、大体その週ごとにスケジュールを消化していくようにしていました。試験までの日数を考え、何をやるべきか、いつやるべきか、の予定を立てておくことは大事だと思います。また、モチベーションの維持ですが、幸い大学時代からモチベーションが下がるということが余りなかったため、特にモチベーション維持のために何かしたということはありませんが、適度な息抜きは非常に大事だと思います。私はこの点がうまくできていたため、モチベーションが低下するということがなかったのかもしれません。

「合格後」に必要なこと

確かに、現在合格者が増え、法曹社会は未曾有の就職難と言われています。しかし、現状を悲観するばかりではなく、このような「ピンチ」をチャンスだと思える前向きな気持ち、挑戦し続ける気持ちが大切なのではないかと思います。このような気持ちを持つためにも、努力に裏付けられた自信と実力を備える必要があるのだと思います。

最後に

大学２年生の秋から法律の勉強を始めて５年目の今年、無事司法試験に合格することができました。ここまでの道のりは、決して楽しく、希望に溢れた日々だけではありませんでしたが、それでも、今こうして私が合格できたのは、常にベストな環境を与えてくれた両親をはじめ、一番最初に法律の面白さを教えてくれた伊藤塾、法科大学院で共に学んだ仲間たち、そして支えてくれた大勢の方々の力があったからです。司法試験合格はゴールではなく、夢へのスタートです。こうして私をスタート地点に立たせてくれたたくさんの方々に、少しでも恩返しできるよう、また、一法律家として少しでも誰かの力になれるよう、感謝の気持ちを胸に、これからも日々邁進していくつもりです。
  （2010年11月・記）