ペースメーカー論文答練により、現場で頑張りぬけるスキルを身につけることができました。

S.Yさん(24歳)
 

東京大学法科大学院(既修)修了
◆出 身 大 学/慶應義塾大学法学部卒業
◆受 講 講 座/入門講座本科生、ペースメーカー論文答練、行政事件訴訟ポイント講義、判例百選読み込み講義、個別行政法徹底解析講義


※プロフィールは、2010年合格時点のものです。


はじめに

私は、中学生の頃より、テレビドラマや映画を通じて、法律と論理を用いて人を説得する弁護士という職業に漠然とした憧れを抱いていました。その後、いろいろと調べるうちに、弁護士という職業が、依頼者の人生に深く関わるがゆえにとても責任の重い職業であり、かつ、やりがいのある職業で、一生をかけてやる価値のある仕事と知りました。そこで、私は、司法試験に合格すべく、短期合格に定評のある伊藤塾に、大学2年生の2005年の5月に入塾しました(呉クラス)。呉講師の講義はとてもわかりやすく、毎回出席するのを楽しみにしていたのを今でも覚えています。

私がとった勉強方法 

基礎的な法知識・法理論の修得

法律の学習には、よく基礎が重要だといいますが、その中身はあまり明らかにされていないように思います。現時点で私が考える法律の基礎とは、重要基本概念の正確な理解とその記憶です。
初学者の段階では、そもそも何が重要で、何が重要でないのかの区別がつきません。この点について、呉講師の基礎マスターは、非常にメリハリがついており、初学者が理解すべき重要基本概念を網羅的におさえることができます。私は、呉講師の講義により重要基本概念を正確に理解することができました。また、呉講師により、重要基本概念の外延が示されている以上、あとはそれを繰り返すことにより記憶を定着させれば、法律の基礎は自然と身についていきます。私は、講義の予習はほとんどしませんでしたが、復習には十分な時間を充てるようにし、記憶の定着を図りました。法科大学院入試は、呉講師の講義、復習、問題演習のみで無事突破することができました。
新司法試験においては、実務的な事柄や、未知の問題も多く出題されることから、私は、法科大学院において、基本書・判例集・学者の論文集・学者の演習書を多く読んでいました。ただ、これらを読みこなすにあたっては、盤石な基礎が必要です。振り返ってみるとその基礎はやはり、呉講師の講義とその十分な復習により築かれていたのだと思います。

短答式試験対策について

短答式試験対策は、全科目にわたって、条文・判例・過去問をいかに効率的におさえるかに尽きると思います。
憲法は、人権対策としては、判例百選を十分に読み込みました。統治対策としては、41条から99条までをすべて記憶していました。
行政法も、判例百選を読み込みました。また、判例六法を用いて、最新判例や行政事件訴訟法、行政手続法といった重要法令をおさえました。
民法は「情報シート」を用いました。旧司法試験時代に、「情報シート」に必要な知識は集約してあったので、それを繰り返すだけで民法の対策は終わりました。民法の「情報シート」は、伊藤塾の教材で、私がもっとも愛用したもののうちの1つです。 
民事訴訟法は、判例百選の読み込みと、判例六法の読み込みを行いました。また手続的なところは、「民事訴訟法講義案」(司法協会)を読んでおさえました。
商法は、判例百選の読み込みと判例六法の読み込みです。ただ、今年の会社法の問題は難しく、なかなか対応できるものではありませんでした。会社法よりは、商法総則・商行為、手形小切手で確実に点を稼ぐ戦法でいけば良かったかなと、今は反省しています。
刑法は、前田先生の「最新重要判例250」(弘文堂)と判例六法を読み込みました。
刑事訴訟法は、判例百選、平成18年以降の重判、判例六法を読み込みました。また、手続的なところは、「刑事第一審公判手続の概要」(法曹会)を読んでおさえました。 また、全科目にわたって、法科大学院入学当初から過去問を少しずつではありますが、繰り返し解いていました。今振り返ると、スタートを早めに切ったことで、直前期はあまり短答式試験のことを気にせずに、論文式試験対策に集中できたのだと思います。

論文式試験対策について

<総論> 
私は新司法試験の論文式試験の合否は、(1)事前準備30%、(2)現場での頑張り70%で決まると思います。(1)の事前準備のイメージとしては、短答式試験で確実に280点前後の点数を取れる程度の正確な知識を蓄えることと過去問を研究することです。これは、日々の勉強を淡々と行うことにより達成可能です。問題は(2)です。私は、(2)の中身は、A現場での問題文との向き合い方、B未知の問題が出たときの対処法、C時間配分・紙面配分と考えていました。
私は、問題文に挙げられている具体的な事実の多寡により、どの論点がメインなのかを決定していました。いかにAランクの論点であったとしても、問題文にそれほど事情が挙げられていなければ、答案上で大展開をするのは失策です。
また、本番では、必ず未知の問題が出題されます。そのときに動揺しない精神力が強く求められます。さらに、自分なりの未知の問題に対する対処法を確立することも重要です。私は、できるだけ抽象論の部分では、時間をかけず、趣旨からコンパクトに規範を定立するようにし、あてはめ部分では妥当な結論を導けるようにしていました。
さらに、本番では、時間配分・紙面配分も重要です。途中答案を極力避けるべく、設問あたりにどの程度の時間をかけられるかを答案構成の段階で計算することで、時間配分は意識できます。また、本試験では、各設問の点数割合が冒頭で書かれていることがあります。私は、この配点割合に沿って、設問あたりに書く枚数を決めていました。設問1、2、3の配点割合が1: 2: 3であれば、2枚、4枚、6枚という感じです。
<ペースメーカー論文答練> 
以上、AからCの能力を身につけるべく、私は、伊藤塾のペースメーカー論文答練を受講し、自主ゼミを結成しました。この答練では、論点盛りだくさんの問題が多く出題されたため、メイン論点とサブ論点の振り分けの練習ができましたし、基本的に初見の問題であったため、未知の問題への対処法を確立することができました。さらに、この答練の問題は、量的に過去問並に時間不足に陥るほど重厚なものでしたので、適切な負荷がかかった状態で、時間配分・紙面配分の練習ができました。ペースメーカー論文答練により、私は、現場で頑張りぬけるスキルを身につけることができたと思います。
<過去問分析> 
論文式試験において、過去問分析は必須です。私は、すべての年度の出題の趣旨・ヒアリング・採点実感を精読し、それと再現答案を付き合わせてどのような答案が評価されているのかを研究していました。この作業は、時間がかかるため、直前期にはやりたくない類のものですので、早めに着手されることをおすすめします。

直前期の対策について

直前期(4月以降)は、基本的には新しいものには手を出さず、今まで使用した教材を読んだり、苦手箇所をまとめたノートを繰り返し見直していました。また、5月に入るまでは、答案を週2回は書いていました(4時間)。この時期は、新しいものに手を出したがるものですが、そこはぐっとこらえて、今までやってきたものを繰り返した方が、実力は伸びますし、精神的にも安定するものと思います。
ただし、4月の第1週で、最新の重要判例解説が発売されるので、それだけは新しくやりました(特に、公法系と刑事系)。受験生の多くは、重判を確認してくるので、最新の重判だけはやっておいた方がよいと思います。

法科大学院の受験対策、伊藤塾の活用

私の通っていた法科大学院は、受験対策は一切しない学校でした。特に、法科大学院の3年次には、新司法試験科目はほとんど設置されておらず、単位取得のためには、先端的な事柄ばかりを勉強せざるを得ない環境でした。そのため、短答式試験、論文式試験ともに、新司法試験対策は自力で行う必要がありました。短答式試験については、比較的得意ということもあって、自分でコツコツと勉強を進めていたのですが、論文式試験は自力での対策はなかなか難しいです。そこで、私は、前述のようにペースメーカー論文答練を受講し、自主ゼミを組んで答案を読み合っていました。
このように、各々が通っている法科大学院によって、受験指導校の利用スタイルは変わってくると思うのですが、受験対策をしない学校に通われている方は、積極的に受験指導校を利用することで、勉強の方向性が定まってくるのだと思います。

合格後に必要なこと

私は、新司法試験に合格したばかりで、合格後に必要なことを偉そうに語ることはできません。ただ、受験時代から常に意識していたのは、弁護士となった後は、他の人と競争して勝つことに価値を見出すのではなく、自分が本当にやりたい仕事を見つけ、専門性を獲得し、その分野で依頼者のためにベストを尽くしていきたいということです。今の私には、そのような分野はまだ見つかっていません。今後は、司法修習などを通じて、そのような分野を見つけることができるよう、1日1日を大切にして過ごしていきたいです。

最後に

私は、幸いにして新司法試験に合格することができましたが、ここに辿り着くことができたのは、多くの人の支えがあったからです。法律というものがまったくわからなかった私に、法律の基礎の基礎を叩きこんでくれた呉講師、大学4年生から現在に至るまで、伊藤塾出版編集課の仕事において、私に社会人としてのマナー・心構えを教えてくださり、また合格まで温かく見守っていただいたスタッフの方に感謝の意を表します。また、法科大学院で一緒に答案を書いた自主ゼミの仲間のA君、I君、N君とは、答案を巡っては罵倒しあっていましたが、受験勉強でつらいときには、お互いに励まし合い、支え合いました。伊藤塾のゼミ仲間のMさんとKさんとは、違う法科大学院に進学しながらも、定期的に会合を開き、近況報告をしていました。この難局を乗り越えることができたのは、この5人のおかげです。
そして、最後に、私の両親に感謝の意を表します。私が、この道に進むと決めた当初から、一切の反対を受けず、ただひたすら精神的・経済的にサポートをしてもらいました。私が、勉強でつらいときも、優しく叱咤激励してくれ、合格を報告したときは、泣いて喜んでくれました。本当に感謝しています。今後は、今までお世話になった方に、少しでも恩返しをしていきたいです。
 
(2010年11月・記)