はじめに

私が法律家を目指したきっかけは、大学時代に親友の法律相談を受けたことでした。
このとき、将来弁護士になって、法律を使って困っている人を助けたいと思うようになりました。
そして、大学の先輩から若手合格者は伊藤塾に通っていると聞き、大学２回生のとき、伊藤塾の講座を受講することにしました。伊藤塾長の講義を聴いた第一印象は、法律は思ったよりもわかりやすい！というものでした。
 

私がとった勉強方法

基礎的な法知識・法理論の修得について

私は、基本書を読むときも、常に伊藤塾の基礎マスターのテキストを傍らにおいて見ながら勉強していました。そうすることによって、今どの部分を勉強しているのかという目次を意識して勉強することができましたし、基本部分（基礎マスターのテキストに載っているところ）とそうでない部分のメリハリをつけることができました。特に民事系は、趣旨とからめて覚えることにより、未知の問題にも対応できるし、また、忘れにくくなると思います。今年の本試験もそうでしたが、やはり、民事系は条文と趣旨から考えることができると、未知の問題にも対応でき、自然と高得点がつくと思います。
 

短答式試験対策について

【　総論　】 
私は旧司法試験で択一が得意であったので、憲法・民法・刑法についてはあまり対策をしませんでした。その代わり、行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法について対策をしました。全体的にあまり問題は手を広げず、過去問を解き、そこで出た知識や条文を短答用教材にマークして、そこを中心に覚えていくという勉強をしていました。そうすると、同じ条文や項目が繰り返し問われているということがよくわかりました。
短答は全体で論文１科目分の割合しかないので、私はあまり高得点を狙うことはしませんでした。たしかに、常に短答落ちにならないレベルまでは上げる必要があると思いますが、それを超えると、あとは論文で点数をとる方が効率がよいのではないかと思います。択一が苦手な人は、まずはどの科目も50％を切らないレベルまで上げるよう努力をするとよいと思います。本試験では、年度ごとに科目ごとの難易度が違うので、得意科目で不得意科目を補おうとするのは危険であると思います。
【　各論　】 
憲法については、判例百選の事案と判旨を読みました。
特に、芦部憲法に載っている判例はよく出ていたような気がします。
刑法については、一番論文対策が短答に活きる科目であると感じました。また、百選の判例もよく出ていたので、読みました。
 

論文式試験対策について

【　総論　】 
論文対策は、過去問を中心にするべきだと思います。 
まず、問題のみならず、出題の趣旨・ヒアリングは何度も何度も読みました。もっとも、科目によっては、出題の趣旨はとうてい受験生が到達できないほどの高い理想を書いていることがあります。そこで、合格者の再現答案を何通も読むことで、実際の合格相場を知ることができ、理想と現実のギャップを埋めるための参考にしました。
また、旧司法試験との違いとして、新司法試験では無難に守るのはよくないと思います。問題文から問われていることには、逃げずに正面から取り組む（時間の制約はありますが）ことが要求されていると感じました。勉強が完成するまで過去問をとっておく人もいますが、勉強途中でも早いうちに一度、１年分でも過去問を解くことをおすすめします。過去問を解くことにより、試験で求められていることを肌で感じることができ、そのゴールを目指して勉強をすることができるからです。間違ったゴールを目指していくら勉強しても、合格から離れていくだけです。
【　各論　】 
＜公法系＞
憲法については、最後までいちばんよくわからない科目であったので、少なくともその場で考えついたことだけは書ききろうと割り切り、時間切れをなくすことを目指していました。その点で、伊藤塾のハイレベル論文答練は、本試験の傾向と似ていて、いい練習になりました。 
行政法は、過去問の焼き直しが多かったので（今年は違いましたが…）、過去問を何度も解きました。
＜民事系＞
民法は、要件事実については「問題研究」で勉強しました。商法は、旧司法試験の過去問の焼き直しが多かったので、それをやりました。民事訴訟法は、独特な問題が多いので、過去問をしっかり分析しました。
＜刑事系＞
刑法・刑事訴訟法は、法理論面は旧司法試験の過去問をやりました。また、事実をひく練習として、合格者の再現答案を分析し、参考にしました。
 

直前期の対策について

直前期は、不安になってインプットに走りがちですが、私は、アウトプットも必須であると考えます。実際に自分が考える時間と書ける量を体にしみこませないと、本試験で時間切れになってしまうことが多いと思うからです。また、何人かで週１回程度答案検討ゼミをすることも必要であると思います。みんなでやることにより、みんなはどう考えるのだろうか、どのくらい書くのだろうか、という相場を知ることができるからです。やはり、相場を外れて一人だけ違うことを書くと、落ちるリスクが高まると思います。学者になる試験ではなく、実務家になる試験である以上、普通に勉強している人が普通に考えることを書けば、合格すると思うからです。
 

伊藤塾の受講スタイルとフォロー制度について

私は、旧司法試験受験時代、伊藤塾の基礎マスターを受講しており、そのときの基礎マスターのテキストは、新司法試験の勉強時にも使用しました。また、新司法試験の答練としては、ハイレベル論文答練の公法を受講しました。これは、在宅受講しました。私は、ロースクールには自宅から１時間以上かけて通学していたため、その他はできるだけ時間を短縮したかったということが理由です。
 

法科大学院での受験対策、伊藤塾の活用について

法科大学院では、ソクラテスメソッドにより、法的思考の訓練をすることができました。しかし、アウトプットについてはほとんど訓練する機会がなかったため、週１程度で友人と答案を書いたりしていました。また、基礎的知識や短答知識のインプットについては、自分でやっていることを前提として授業が進められるため、自分でインプットをしていました。
法科大学院には、自宅から１時間近くかけて通っていたため、他の受験生と比べ、勉強時間が十分ありませんでした。
平日は授業の予習復習に追われていたため、休日に新司法試験の対策をしていました。また、先生や先輩から授業の予習よりも復習の方が大事と聞き、予習よりも復習に時間を割いていました。また、実務家の先生の授業はすごく役立ったと思います。
 

学習スケジュールの管理について

モチベーション維持については、私は、問題を解くとやる気になったので、やる気がなくなると問題を解いていました。また、本当に合格できるのか、どうすれば合格できるのかわからないという不安がモチベーションを下げると思います。そこで、その不安を取り除くため、合格体験記を読んだり、ゼミを組んだりして、何をすべきかという方向性を探していました。
 

「合格後」に必要なこと

様々な実務家の先生に、実務家として重要なことは、「そこそこのもの」を「早く」作ることであると言われます。プロである以上、あまりにもひどい書面を出すことは許されず、どんなときでも、一定水準以上のものは作り上げる必要があります。しかし、実務家は期限という時間の制約があるので、完璧なものを長い時間をかけて作っても意味がありません。また、実務家になると未知の問題に出会うことが多くなりますが、そのときに、常に基本から考える姿勢を持つことが重要であると言われます。
 

最後に

長い間、結果がでなくても自分のやりたいことをやりなさいと言って、私を応援してきてくれた両親には心から感謝します。また、法科大学院で一緒にゼミを組んで、熱心に私の答案や思考の悪い癖を指摘してくれた友人にも大変感謝しています。私の合格はこのようなたくさんの人々のおかげだと思います。この場を借りて感謝いたします。これからもこの感謝の気持ちを忘れずに、素敵な法律家になっていきたいと思います。
皆さんも不安になることは多いと思いますが、「問題文の読み違え」と「時間切れ」だけはくれぐれも注意して、実力を出し切ってきてください！
 
（2010年11月・記）