司法書士合格後、司法試験へ挑戦。社会人受験生が短期合格するには「節勉」が必要。

予備試験ルートで司法試験合格

K.T さん(30 歳)
 

合格者イラスト
早稲田大学政治経済学部卒業

◆ 予備試験合格時 /早稲田大学政治経済学部卒業
◆ 受 講 講 座 /予備試験答練パック、司法試験演習秋生、司法試験論文マスター、司法試験合格答案徹底分析講義、最新判例講義など

※プロフィールは、2013年合格時点のものです。

はじめに

私が予備試験ルートを選択した理由は、(1)法科大学院に比べ経済的負担が少ないことと、(2)働きながら司法試験を目指せるからです。
私が予備試験に挑戦することとした当時は、まだ予備試験の合格者数や難易度が、未知の段階でした。当然「とても働きながら合格を狙えるような試験ではないのではないか。法科大学院に進学した場合に比べ結果として回り道にならないか」との不安はありました。しかし、私は司法書士試験受験の際に一度会社を退職していたこと、司法書士実務経験も積みたいことから、働きながら予備試験を受験することを決断しました。「自分はこうしたい」という将来設計があったから不安を乗り越え合格を勝ち取れたのだと思います。
予備試験ルートのメリットは、前記(1)及び(2)がそのまま該当しますが、その他には(これは賛否両論ある所だと思われますが)試験対策専用の勉強を積むことになるので、その成果はそのまま司法試験に直結し、司法試験合格に必要かつ十分な知識・技術が早期に修得できる点にもあります。

予備試験受験を目指した理由と予備試験ルートのメリット

旧司法試験を2009年、2010年と受験し、2010年ではあと一歩で不合格だったことから、そのまま予備試験の受験を継続しました。そのそも、大卒の資格がなかったこと、地元の法科大学院は合格率があまりに低く、学費を払って通う意義を見いだせなかったことから、法科大学院に行くという選択肢は全く考えず、予備試験ルートで受験を継続することに全く躊躇する気持ちはありませんでした。
予備試験ルートのメリットは、法科大学院の学費がかからないこと、ある程度仕事をしながら勉強ができること、自分のペースで勉強ができることです。今年の司法試験の順位は思いの外悪かったのですが、法科大学院に行かなければ司法試験で良い成績がとれないというわけではないため、特に経済的理由で法科大学院への進学が困難な方は、迷わず予備試験ルートを選択するべきです。

私がとった勉強方法 

基礎的な法知識・法理論の修得について

仮に時間が許すのであれば、受験指導校の講義を受け、基本書を読み、判例百選を読み、答練を受け…とフルコース、「王道」を行くのが良いのでしょう。しかし、仕事をしながら予備試験ルートで合格を狙う社会人受験生にそのような時間はありません。そこで私は基本書や判例百選などには手を出さないことにしました。いわゆる受験指導校教材のみを利用することは「邪道」とも言えるかもしれませんが、それらの教材は優秀な制作スタッフの方々が数々の文献を読み解きまとめ上げて作られた物です。いわば受験生の代わりにそれら「王道の」文献から合格に必要なエッセンスを抽出してくれているのですから、時間のない社会人受験生がこれを利用しない手はなく、基本書や百選などに時間を取られないようにすることが合格への「最短ルート」ではないでしょうか。
そして、司法試験の合格には過度に発展的、細かい知識は必要ではなく、基礎的なことをしっかりと押さえていることで足りるので、少ない教材に絞って基礎力を盤石なものとすることが重要であると思います。私はいわゆる入門講座を伊藤塾で学んだことはないのですが、伊藤塾のアウトプットの教材の解説には問題を解くのに必要十分な知識の紹介がされていますので、アウトプットの教材を読むだけでも基礎知識の修得はできますし、時間のある方は入門講座を受講すればなお良いのではないでしょうか。

短答式試験対策について

短答式試験対策の形式としては、私は短答答練などで間違えた問題をノートに書きためていき、後で見直せるようにしていました。
インプットとしては、私は予備試験及び司法試験を通じて特に対策を講じていません。なぜなら、民法及び会社法については司法書士試験の択一式試験の方が難度が高いところ、すでに十分な対策(=上記間違えノート作り)を講じてあったためです。また、憲法、刑法及び民事訴訟法については、司法書士試験対策のときに一応の勉強を済ませているものの、司法試験対策としては十分とは言えない知識量でしたが、インプット専用の勉強はしていません。というより、社会人受験生にとっては論文対策のみで手一杯だったというのが本当のところですが、論文対策をしていれば必然にある程度短答対策にもなりますし、後は短答答練などで間違えたところをノートに書きためていけば十分です。初学となった刑事訴訟法及び行政法についても、論文対策を通じて短答対策に繋げ、間違えノート作りをすれば十分でした。
予備試験合格後から司法試験受験をするにつき、司法試験用の短答対策は一切行っていません。上記ノートを試験前に通読すれば十分です。なぜなら司法試験と予備試験の短答式試験の問題は8割が共通しているため、予備試験の短答を突破できるのなら司法試験の短答を突破できるからです(それはすでに法務省の発表した統計より明らかです)。
アウトプットとしては、伊藤塾の短答答練を利用しました。本番の時間感覚をつかむには、やはり答練は重要です。
以上の方法で、予備試験も司法試験も短答式については上位で突破できました。

論文式試験対策について

論文式試験対策については、伊藤塾のペースメーカー論文答練及び司法試験過去問分析講座(現:司法試験論文マスター、司法試験過去問答練)を利用しました。
私の上記講座の利用方法も、社会人受験生ならではの若干邪道だったものでしたので、あえてこれを述べますと、まず、(講師の講師には失礼かもしれませんが…)解説講義は一切聴きませんでした。時間節約のために、問題を解いた後は解説を読むに止めました。当然、解説講義を聴けば伊藤塾の講座の100%の効用を享受できるのでしょうが、これでも合格はできました。逆に言えば、伊藤塾の司法試験過去問分析講座の解説冊子は、問題を解くのに必要な知識だけでなく、周辺知識となる判例などの紹介も充実しているため、これを読むだけでも司法試験合格に必要な知識は十分に得られる良質なものであると言えると思います。
さらに、はじめのうちはしっかりと答案作成をして添削を受けていたのですが、次第に時間がなくなってきますと、問題を読み、答案構成をし、解説を読むだけにしました。これでも十分な知識の補充及びトレーニングになります。時間がない場合には、一通の問題を解くのに時間をかけて教材をあまらせてしまうよりは、節電ならぬ「節勉」をしてでもなるべく多くの教材に目を通した方が良いでしょう。上記のとおり折角上質な教材なのですから。
TWO-WAY添削は、受験仲間や気軽に質問できる講師が身近にいない自宅受講の社会人受験生にとっては、貴重な質問の機会となって、何回か疑問を解消していただきました。
また、論文式試験についても、重要な論証や間違えた論証は、自作のノートに記しておき、後で見返せるようにしておきました。

直前期と試験当日の対策について

直前期は、伊藤塾の全国公開模試を受講しました。本番と同様の時間で約1週間を戦い抜くトレーニングは、絶対に必要だと思います。またこの全国模試で良い成績が残せると、本番への自信にもなります。また、伊藤塾の模試は過度に難しかったりせず、非常にバランス感のある出題がされ、本番に近いものだと感じました。
全国公開模試受講後は、せっかく長時間かけて受講した模試なので、必ず復習をして、間違えた箇所などはモノにできるようにしておきました。
直前期は上記全国公開模試に併せて今まで自作してきたノートを見返すこと、模試のあとに復習をし再度ノートを作ることがメインの勉強法でした。

予備試験からの司法試験対策

まずは選択科目の勉強を急いでし、これを早期に論文が作成できるレベルまでに持っていく必要がありました。そのためには、社会人受験生としては、インプットとアウトプットを繰り返すというように丁寧な勉強はしているゆとりはありません。そこで、インプットをしつつ、論文で問われそうな論点を見つけたときには即座に論証ノートに書きためていくことによりアウトプットを見据えてインプットをしました。
また、その他7科目については、論文式試験の問題形式の違い、特に時間の違いに慣れる必要があります。当初は過去問を解いてみても時間内に書き上げることができず、絶望したこともありましたが、上記ペースメーカー論文答練や司法試験過去問分析講座を受講しているうちに、次第に時間内に書き上げられるようになっていきました。ここで感じたのは、答案構成の方法や問題文の読み方、答案の書き方など実際に問題を解いてみて確立する答案作成能力の向上という「外側」の面もさることながら、意外にも知識の充実化や基礎知識の盤石化という「内側」の面のレベルアップが答案を仕上げるスピードを高速化させているということです。やはり知識の出し入れがスムーズになると答案構成で悩む時間が減ることが大きな要因だと思います。このような点からも、司法試験過去問分析講座の解説冊子をしっかり読むことは重要だと思います。

働きながらの学習方法について 

今まで述べてきたように、社会人受験生が短期合格するには、法科大学院生と同様の勉強スタイルを取ることはできません。削れるところは思い切って削る、「節勉」が必要だと思います。その際には、やはり合格に必要な知識を抽出して提供してくれる受験指導校の利用は必要不可欠だと思います。

予備試験からの就職活動 

就職戦線は噂通り易しくはないなと感じます。また、一部法律事務所では予備試験合格者を高評価してくれるようですが、一方で意外にも面接で「予備試験って何?どの位難しいの?何人くらい受かるの?」と尋ねてくる、あまり予備試験について把握されてない弁護士の先生も多いように感じます。

最後に 

旧司法試験の廃止により、司法試験はお金と時間をかけなければ突破できない、社会人には挑戦し難い試験になってしまったかのように思われましたが、予備試験ルートで働きながら短期で法曹になることは十分に可能です。社会人の方もぜひ予備試験ルートで司法試験に合格することに挑戦してみてください。