失権を乗り越え、また公務員として新型コロナ対応の激務につきながら、それでも勉強を続けました

\ 予備試験ルートで司法試験合格 /
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M.Sさん:公務員
◆ 予備試験合格時 /公務員
◆ 出 身 大 学 /北海道大学法科大学院(既修)修了、筑波大学法学部卒業

受講講座
予備試験全国公開論文模試、司法試験論文過去問マスター、司法試験演習秋生 など

※プロフィールは、2020年度合格時点のものです。

はじめに

平成25年5月。3度目のチャレンジ。最後の司法試験。3度目の合格発表。最後の合格発表。結果は不合格。三振。失権。受験資格の喪失。私の司法試験への挑戦は終わりました。敗北という形で…。
失権直後の10月1日から中小企業に就職するも、月100時間を超えるサービス残業に心身ともに限界を感じ2年弱で退職。その後、国家公務員(非正規職員)を経て、平成28年から地方公務員(正規職員)になりました。
平成30年から生活保護課に配属され、主にアルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症及び統合失調症などの精神疾患を有する生活保護受給者担当のケースワーカーをしています。簡単な仕事ではありませんが、残業や休日出勤は少ないため、すぐに社会保険労務士試験に合格することができました。その勢いで平成30年度に予備試験に挑戦したところ、平成31年度に最終合格し、令和2年度には司法試験にも合格できました。

働きながらの学習方法について

社会人受験生にとっては、試験自体の難しさよりも勉強時間の捻出、そしてなにより勉強を継続することの方が難しいかもしれません。私は、年間360日以上は毎朝4時から勉強していました。仕事の繁閑、職場の付き合い、家族の都合など受験生それぞれに事情もあるでしょうが、社会人が予備試験や司法試験に合格するというのは、「そういうこと」です。ここは腹を括らなければなりません。
4月の人事異動によって庁内全体の体制が整いきっていない上に、特別定額給付金の支給事務、保健所への応援、自分の担当受給者が感染した際の医療扶助対応など前例のない業務が次々と発生し、不定期な残業も増えました。マスコミや国民からの公務員バッシングも凄まじいものでした。これらのストレスに加え、司法試験が「いつ実施されるのかわからない」「そもそも実施されるのかすらわからない」という状況は、本当に精神的に苦しかったです。何度も勉強を中断しそうになりました。
しかし、なんとか毎朝4時の起床を続け、また、週末はスマホを置いてホテルに籠りました。気分転換、息抜きなどは一切しないで、気持ちを切らすことなく勉強を続けました。今思い返せば、司法試験が延期されたタイミングで勉強のペースを落とさずに受験生としての意識を保てたことが、最大の勝因でした。
こじつけかもしれませんが、論文試験には対処不能な難問が出題されます。その際、「いかに平常心を保てるか」「いかに普段の自分を貫けるか」がモノをいいます。来年以降もどんなトラブルが発生するかわかりません。その際は、そのトラブルを「平常心を保つための練習」だと思ってください。月並みですが、ピンチはチャンスです。  

司法試験に向けた学習について

〈ペースメーカー論文答練を受講して〉

「ペースメーカー答練」は、問題の質、添削の質ともにクオリティの高いものでした。添削は、ただ単にダメ出しをするものではなく、具体的に「どのように書くべきか」まで指摘してもらえるものでした。また、私は地方在住で受験仲間がいなかったため、two-way添削の場を借りて、積極的に知識や書き方に関する質問をしました。いずれの質問に対しても丁寧な回答をいただき、通信講座とは思えない程の双方向的な学習ができました。 

〈司法試験論文過去問マスターを受講して〉

「司法試験論文過去問マスター・答練」は、レジュメに問題文、出題の趣旨、採点実感が整理されており、さらに模範答案、参考答案、論点解説もまとめられています。このレジュメは、過去問のエッセンスを学習する最高のツールでした。私は答案作成の時間を捻出できなかったのですが、このレジュメで過去問演習をしただけでも、司法試験の合格に必要十分な過去問演習ができました。可処分時間に限界のある社会人受験生にこそ、ぜひともこのレジュメを有効活用することで、合格のエッセンスをつかみ取っていただきたいです。 

〈短答式全国実力確認テストや全国統一模試を受講して〉

TKC全国公開模試の結果発表が4月7日でした(この日は緊急事態宣言が出された日です。)。結果は合格推定点を大幅に越えるもので、約1ヶ月後の司法試験に向けて良い弾みとなりましたが、その翌日、司法試験の延期が発表されました。  

おわりに

失権経験者へ 夢を諦めるのは、とても難しいです。かっこも悪いです。世間からは好き放題に言われます。私も公務員試験の面接の際に「一度やると決断したのに、諦めたのですか」と聞かれました。
しかし、司法試験は、諦めずに努力を続けていればいつか合格できる試験ではありません。不本意にも受験生活が長引いている方は、勇気を出して一度社会に出てみてください。数年間、受験勉強から距離を置いてください。そのうえで、「やっぱり司法試験に合格したい」と思えば、また勉強を再開すればいいのです。私は、5年間司法試験から離れたからこそ、予備試験そして司法試験に合格できたと思っています。本気で思っています。私にとっては、夢を諦めたという選択は「成功」だったのです。
私が一番言いたいことなので、繰り返します。司法試験は、努力が報われるような簡単な試験ではありません。だから、現在の環境を踏まえて、「いつまで受験を続けるか」という期限を決めてください。そして、その期限内に結果が出なければ一度社会に出てください。あなたがこれまで重ねて来た努力は決して無駄にはなりません。法曹以外にも、あなたの経験や知識を活かせる場所があります。あなたは社会から必要とされています。あなたの助けを待っている人がいます。社会に飛び込んでください。夢を諦める勇気を持ってください。いつかその選択を成功だと思える日が来ます。それが夢を乗り越えるということです。叶えなくていいんです。乗り越えてください。
 
これからの展望 最後に、高校同期、塾講師仲間、ロー同期、公務員時代の友人(特に平成ラスト5係の戦友)、伊藤塾のスタッフさん、父、母、その他今いる自分を支えてくれた全ての人に対して、この場を借りてお礼を申し上げます。
思い返せば、つらいことばかりでした。失ったものもたくさんあります。遠回りもたくさんしました。苦しくて長い道のりでした。私ひとりでは到底歩き続けられませんでした。ここまで支えてくれて、ありがとうございました。いつだってその時自分にできる精一杯をやれたのは、皆さんのおかげです。
今を人生のピークにするつもりはありません。弁護士として、皆さんからもらった大きな恩を何倍にも膨らませて社会に還元する責任を自覚しています。まだまだ道半ばです。今後ともよろしくお願いします。