司法試験は学者になるための試験ではありません。知識の総量ではなく、法律家として必要な知識をいかに正確に持っているかの試験です。

\ 予備試験ルートで司法試験合格 /
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Y.Yさん:東京大学法学部卒業
◆ 予備試験合格時 /東京大学法学部4年

受講講座
司法試験入門講座本科生+リーガルトレーニング、司法試験演習秋生など

※プロフィールは、2020年度合格時点のものです。

はじめに

司法試験を目指すことを決めたのは大学2年生になった春で、伊藤塾は合格実績から選びました。司法試験を目指した理由は消極的なものと積極的なものの2つありますが、消極的な方は自分がこれといった特技・専門知識を持たずに一般就職してうまくいく未来が1ミリも見えなかったことです。積極的な理由は、昔からアジアの文化が好きだったのですが、高校生の頃、日中・日韓関係が悪化して日本の商品が壊されたり、韓国の好きな歌手が急に日本で批判されたりして強く心を痛めたことです。そこで外交官も考えたのですが、本当に生で苦しんでいる人に寄り添うのは全体を俯瞰する国家公務員よりも弁護士なのではないかと考え法曹を目指しました。

私の勉強法

〈基礎学習について〉

基礎マスターの勉強は完全に失敗しました。伊藤塾ではとにかくまずは1周することが大事と何度も言われてきましたが、「(どこかで気合入れて1周すればいいから)今は遊ぶことが大事」と勝手に心の中で読み替えて、遊び散らかした結果、基礎マスターを終えるのに2年半かかりました。その後全く勉強についていけなくなって死ぬ気で1周したら、一気に法律の世界の見え方が変わったので、本当に早い段階で1周することが大事だと思います。
論文マスターは基礎マスターを2年半というスーパースローで終えた後に見たせいで最初は全く理解できず、エイリアンの言語を勉強しているような気分で勉強しました。ただ、論文マスターを通して、エイリアンの言語の解析が進み、何が試験で問われているのか?が徐々にわかるようになった結果、後に基礎マスターを再度勉強する際にどこに注意して読めば良いかがわかるようになりました。論文マスターはアウトプットのためだけではなく、インプットの道標として使えることを意識すると良いと思います。  

予備試験を目指した理由

最初は正直予備試験をそこまで本気で目指していませんでした。せっかくの大学生活だから遊びたいし、内部進学なら法科大学院も比較的ゆるく入れると思っていたからです。ところが、流石に受かるだろうと思っていた法科大学院入試に落ちて、遅れた分を取り返すには予備試験に受かるしかないということになりました。初めて予備試験を本気で意識したのはその時だったと思います。その後、法科大学院とは別に自分が行きたい大学院を見つけました。その大学院で勉強しつつ、弁護士になるには予備試験に合格するしかないということに気がつき、本気で予備試験に挑む覚悟を決めました。

〈コンプリート論文答練を受講して〉

予備試験・司法試験を通して最もお世話になった演習だと思います。全く予備試験の論文の書き方を知らない段階で受講し始めたので、出来は散々でしたが、とにかくめげずに書いては徹底的に自分でも添削をして、書き直して模範解答を真似し続けました。特に、いわゆる「あてはめ」で使えるキーワードなどはマークして、必死に記憶しました。結果的に司法試験にかなりの好順位で合格できたのは、その時たたき込んだ答案の書き方の土台があってこそだと思います。また、ペースメーカー論文答練のところでも書きましたが、出題者と解説を書いている人が同じという過去問にはない性質を備えた教材なので、解答のポイントの部分は学びの宝庫として、丁寧に読みました。

〈予備試験論文過去問マスター・論文過去問答練を受講して〉

  自分自身にとっては、コンプリート論文答練でたたき込んだ答案の書き方を実践する場でした。出題趣旨があってないようなものの上、採点実感もない予備試験においては特に考査委員が受験生に何を求めているか自分の頭で考えるのは難しいです。そのため、伊藤塾の解説の部分を熟読して、試験ではそういった力・知識が問われているのかまで分析するようにしました。 

〈その他の講座を受講して〉

予備試験の模試はとても役に立ちました。予備試験に最終合格する前年までは短答式試験で落ち続けていた(というか受かる気がなかった)ので、論文式試験が結局それくらいできたら受かるのかわからず、かなり精神的にきつい状態にあったのを覚えています。論文式試験の直前模試でなんとか合格する可能性があるくらいの点数を取れていて、このまま残り数週間駆け抜ければ本当に合格が見えたからこそ、最後まで頑張り抜けたと思います。

司法試験に向けた学習について

ペースメーカー論文答練はまず、「出題者がどういうことを受験者に書いて欲しい時にどういう問題の出し方をするか」を知るためには最高の教材だと思います。確かに(伊藤塾のスタッフの方には失礼ですが)碩学の考査委員が作る本番の試験よりも質の観点では劣るかもしれません。ただ、出題者サイドが公開された模範解答を作るという点が最大の特徴と私は考えて、出題者の意図をつかむ訓練として重宝しました。また、本試験では「は?」ってなるような難問がしばしば出ます。一方、ペースメーカー論文答練はそれよりかは穏当な問題が多いです。そして結局本試験も「は?」問題以外の穏当な問題の出来で勝負が決まるため、勝負が決まるポイントをどう書くかの徹底した訓練として非常に良いツールだったと思います。

〈司法試験論文過去問マスターを受講して〉

 司法試験の過去問は基本的に時間を計って解くようにしました。実際高い集中力を2時間維持することは少なくとも私には不可能だったので、2時間という時間で息切れせずに解き切る練習を意識しました。解説は伊藤塾の講師の方々やスタッフの方が司法試験に受講生を受からせるために必要かつ十分な事項を練りに練って作られたテキストなので、必ず熟読していました。時折、最新の学説が載っていないし内容があまりに簡単だとか言って、過去問マスターの解説を聞かない・解説を読まないという人がいました。ここで強調したいのは司法試験はご自分の好きな最新学説を開陳する場ではないし、司法試験にまだ受かってすらいない人間の好みの学説に誰も興味なんて持ってくれません。合格するためのオーソドックスな考え方を深く正確に理解することが大事です。知っていることでも解説は絶対に熟読することをおすすめします。

〈短答式全国実力確認テストや全国統一模試を受講して〉

 私は全国統一模試だけ受けましたが、自分の現在の位置を知ることができたのが大きな収穫でした。特に私自身法科大学院以外の大学院に所属していたため、日頃の勉強では自分の位置がわからない上、自分の大まかな位置がわからないことには大学院での勉強と司法試験の勉強のバランスの取り方すらわからず、それが一番精神的にキツかったので、自分の位置を知り、今後の自分の勉強時間の取り方の大きな指針となった点が恩恵でした。

〈その他の講座を受講して〉

 予備試験受験時に受講していたコンプリート論文答練と予備試験論文直前答練が司法試験に至るまでかなり役に立ちました。司法試験の解答用紙は8枚ありますが、腕があと数本ない限り制限時間内に8枚書ききることはできません。なので、腕を増やす方法を考えるのではなく、コンパクトに答案をまとめる方法を考える必要があります。予備試験は答案を4枚に答案をまとめる必要があるので、予備試験向けの答練の模範解答はコンパクトに答案を書く秘訣の宝庫でした。また、うまく言えませんが、目指すべき答案を身体感覚として身につけることも制限時間が厳しい司法試験では重要なので、模範解答を何度も何度も読む必要があります。伊藤塾のテキストで見開き分となる予備試験の答練の解答は短時間で集中力を保って読める長さで合格答案の身体感覚が身につくので、飽きるほど読んだ記憶があります。

〈司法試験対策に必要となる勉強について〉

司法試験対策で大事なのは、伊藤塾の基礎マスターや答練のテキストに載っている知識をいかに使うかということと、答案で使うかは別として法律用語を日常会話で使うワード(別に「ウザい」とかだっていいんです)で説明できるかということ、条文をしっかり読むことです。前述したこととも重なりますが、司法試験は学者になるための試験ではありません。受験生が持っている知識の総量ではなく、法律家として必要な知識をいかに正確に持っているかの試験です。伊藤塾のテキストは合格に必要かつ十分な知識の宝庫です。
また、2つ目に関しては、私たちが目指すのは実務家です。さっき法律の専門用語のことをふざけ半分にエイリアンの言葉と表現したと思います。我々が目指す法律家は法律の専門家でない人と法律の接点になることです。その能力も司法試験で当然見られているはずなので、平易な言葉で説明できるくらい噛み砕いて理解することを意識しました。また、解釈やら論点やらも重要ですが、それは条文を理解するための作業です。条文を知らない人がいくら解釈しても、解釈の対象を知らないのでは意味がないです。まずは条文をしっかり読み込みましょう

おわりに

 学説にこだわるなとか偉そうなことを言ってきましたが、正直な話、私自身、法律の勉強と向き合った時間よりも法律の勉強から逃げ続けた時間の方が長いです(そういう意味では学説にこだわるほど深く勉強していないだけかもしれないですね笑)。それでも散々遊び散らかして、やっぱり勉強したいと言った時、勉強させてくれた家族やアドバイスや激励の言葉をくれた友人たちには感謝しかありません。たくさん友人と遊んで夜通し語り合った記憶があったからこそ、延期になったりと異例ずくめの司法試験を突破できたと思います。勉強をがんばろうとした時支えになったのは、勉強をサボって友達と語り合った時の楽しかった記憶です。だから、僕はみんなが何歳になってからでも思うように努力「できる」社会になって欲しいとは思うけど、全員がずっと努力「する/しないといけない」社会にはなって欲しいとは微塵も思いません。だけど、現実の世界は、頑張りすぎて少し休みが必要になっても頑張り続けないといけない人がたくさんいます。みんなが頑張りたい時に頑張りたいだけ頑張って、休みたいときは思いっきり休める、そんな社会を少しでも実現することに少しでも貢献できる法律家になりたいなと思っています。