働きながらの学習。限られた時間の中での合格は「ゼミ」のおかげです。

予備試験ルートで司法試験合格

J.M さん(33 歳)
 

合格者イラスト
九州大学法学部卒業
 
◆ 予備試験合格時 /九州大学法学部卒業
◆ 受 講 講 座 / 司法試験入門講座本科生、司法試験演習秋生、司法試験論文マスター、司法試験合格答案徹底分析講義、司法試験対策ゼミなど

※プロフィールは、2013年合格時点のものです。


はじめに

法律家を目指したきっかけは、検事が主人公のフジテレビのドラマ(大文字のHではじまります)です。もっとも、オンエア当時はこんなかっこいい職業があるのか、程度でした。
直接的には、大学院の試験に失敗したことが引き金となりました。当時、私は理系の学科におりました。大学4年生の夏でした。院浪人するか就職するか、少し悩んだ後、やりたいことをやろうと思いたち、法律家を目指すことに決めました。前述のかっこいい検事の姿を思い出したからです。(33歳になった今でもこの程度しか法曹志望の理由が書けません。就職活動を控えているのに、です。)
そして、法学部に入学しました。伊藤塾に入塾したのは、法学部2年生の秋です。(1)周りの司法試験受験生の状況からして、普通は受験指導校なるものに通うことを知り、また(2)独学では司法試験に出題される範囲に一通り目を通すことすら難しいと実感もしていたからです。
伊藤塾を選んだのは、基礎マスターなる入門講座がわかりやすいとの評判を人づてに聞いたからでした。
伊藤塾長の憲法の講義からスタートしたのですが、確かにわかりやすかったと記憶しています。以前にも学部で憲法の人権論の部分を受講していましたが、憲法の役割なり機能なりがざっくりとわかったのは、基礎マスターの憲法の講義の2~3回目でした。

予備試験を目指した理由

平成17年度から22年度までは旧司法試験を受験しました。22年度の論文試験の(不)合格発表の後、いったん司法試験はおあずけにすることにしました。現職で資金をためて、法科大学院に行く計画にしました。
資格があれば資金もためやすいし、法曹になるとしても損にはなるまいと思い、平成23年度は、仕事関係の資格試験を受験しました。ちょうど、受験資格である一定の実務期間という要件を充足していましたし。
それでもやはり予備試験の動向が気になり、調べると(といっても、受験生のブログをあさるとかですが)、自分と似たような境遇の受験生も合格していることを知りました。それで、見かけの倍率ほど厳しい試験ではないな、と思い、平成24年度の受験を決めました。平成23年の10月のことです。
受験することについて、躊躇はありませんでした。現職を失うわけではなかったし、なにより、1年間のブランクのせいで、法律の勉強に飢えていました。

予備試験ルートのメリット

司法試験に合格するかどうかもわからないまま法科大学院に2年間の時間と数百万円の授業料を費やさずに済むこと、に尽きます。社会人であれば、予備試験に合格してから、退職・休職を検討するというような受験計画もよいと思います。予備試験に合格すれば、時間さえ確保すれば司法試験には合格できることが実証されつつあります。

私がとった勉強方法 

基礎的な法知識・法理論の修得について

基礎的な法知識・法理論は繰り返すことで身につけました。
伊藤塾の基礎マスターで司法試験で問われる基礎的な法知識・法理論にほとんど全てに触れることができたと思っています。しかも、単調な羅列ではなくて、体系のなかで位置づけられ、かつ試験における重要度に応じたメリハリづけもなされた形で、です。
平成25年度の司法試験の民法では保証の要件事実が問われました。私は、要件事実の学習を本格的にはしておりませんでしたが、基礎マスターに学んだ保証契約における書面性の趣旨は何だったかを思い出しつつ、なんとか食らいつくことができました。基礎マスターの知識で本試験まで戦えることを実感した次第です。

短答式試験対策について

予備試験の短答式試験と口述試験の準備で、司法試験の短答式試験は十分だと考えました。そのため、平成24年10月以降で、短答式試験のために特に時間を割いたのは、本試験直前の行政法の条文問題と刑法の各論問題の対策程度です。
予備試験の短答式試験の対策として、司法試験の短答式試験の過去問を検討していたのですから、当然の成り行きでしょう。
短答式試験の対策として重要なのは、確かな情報を基礎として、割り切ることだと思います。ありがたかったのは、司法試験ゼミの初期の段階で、短答式試験との向き合い方を指導して頂いたことです。そこでは、例えば、商法にあっては、会社法は捨てる、総則・商行為は得点源にするといった、かなり大胆なメリハリづけがなされました。おかげで、無駄に短答式試験対策に時間をとられることがありませんでした。

論文式試験対策について

ア.2012年司法試験合格答案徹底分析講義を受講し、平均より少し下の答案をそろえれば合格ラインを超えられる、とのデータから出発しました。予備試験論文式試験の通過席次は200番台でしたし、職持ちでもあったので、なんとか1500番くらいですべりこめれば、と思っていました。
具体的には、以下のような対策をしました。科目別に書きます。
経済法は、本格的には、25年の3月からはじめました。30個程度の定義や趣旨、論証パターンを一通り覚えました。あとは、百選の事案を読んで、検討するべき構成要件を選択して、あてはめる、を繰り返しました。この時期に火が点いたのは、公開模試を受け、危機感を覚えたからでした。満足にかけず、科目別の基準点に満たないことが現実味を帯びてきたのです。なお、ケースブックも購入しましたが、時間を割くことができませんでした。
憲法は、捨てました。受験生が読むべきとされていた本が3冊程ありましたが、平成24年10月以降は、手を触れていません。前述のゼミで指導があった憲法答案の「枠」のなかで自由に書くことにしました。
行政法は、処分性とか原告適格とか、準備できるところはあてはめの仕方までしっかりと準備しました。他方で、問題となっている処分の実体的な違法性の検討といったところは、日本語が書ければいい、程度の準備にとどめました。
民法は、思考の順番として、まず請求を立てること、次に請求権が認められる要件の充足を検討することを愚直に守ることを心がけて勉強しました。
商法は、苦手だったこともあり、一番時間を割きました。定評ある演習書一冊を3回ほど、答案構成→解説読書をやりました。商法の試験問題は何を問うているのか、はある程度わかるようになりました。ある行為があるが、その行為には瑕疵がある。瑕疵をみつけられるか、みつけたとして法的な意味あいはどうなのかを論じればよいのだ、というところまでですが。
もっとも、長文事例であることや事例の複雑さ、問題文の文面上の問いかけに混乱させられて、なかなか得点できませんでした。結局苦手意識をもったまま、本試験に臨みました。
民事訴訟法は、基本事項を答案に表現することを意識しました。当たり前だから書く必要ないと思われる事柄も、実は表現することが求められていたということがあるからです。予備試験と司法試験で違いが小さい科目であると感じており、かつ、予備試験で成績が良かった科目なので、上記意識付けを継続することで足りると考えました。
刑法は、とにかく、判例の検討枠組みを身につけるようにしました。例えば、早すぎた構成要件の実現とか、正当防衛とか、です。また、行為の一体性についても過去問で出題されていることから、ある程度の処理手順を決めていました。答案のスタイルとしては、流れるような文章を書くことはできないので、事実を適宜省略して写す→評価する→あてはめる、を短い文章に切りながら書くようにしました。
刑事訴訟法は、伝聞法則が出題されたときに一通りのことが書ければよいといった程度の準備にとどまりました。
以上の準備と、本試験での得点をみながら、自分が来年も受験するとしたらこうする、という視点で、改善すべき点を書いてみます。
公法系当面はこのままでよいと思います。
民法は、請求から考えることを徹底するべきです。考えるだけでなく、答案上に明示するべきです。
商法は、事案の整理の練習をするべきかなと思います。百選を読んだことがないので、百選を素材にするのがよいかもしれません。
民事訴訟法は、わかっていながら、基本事項の答案への表現がおろそかになっていました。徹底するべきです。
刑事系は、筆力を磨くことが必要です。あと1頁かけると得点源科目になるような気がします。少なくとも足を引っ張ることはないでしょう。


イ.私の論文式試験対策は前述のゼミに依っていました。ゼミの予習は、基本知識を確認する良い機会となりました。恥をかきたくないので、モチベーションが違います。
また、得点するための答案の書き方を指導していただきました。それも、受講生の特徴に合わせた形で、です。たとえば、私が筆が遅く、刑法は苦手科目だなと思っていたのですが、筆が遅いなりの戦略を指導していただきました。要は、メリハリづけなのですが、メリハリがうまくいけば高得点がつくと明言してもらえただけで、だいぶ気が楽になりました。


ウ.アウトプットを意識したインプットの重要性はよくいわれることですが、私が今年度の試験を受験するにあたり、意識したのは以下の点です。
まず、定義・趣旨、判例説だとされる規範などはできるだけ正確に覚え、正確に表現できるようにすること。ここらを自信をもって書けないと、答案を完成させるモチベーションが低下してしまい、結果、あてはめまで、だらけてしまいがちです。
次に、覚えるべきことがらを絞ること。たくさんのことをなんとなく覚えても、どうせ本番では書けません。時間はありませんし、嘘を書いてしまう危険もあります。覚えるべきことがらと理解しておけばよいことがらと区別する、といってもよいかもしれません。
では、何が覚えるべきことがらなのでしょうか。それは、基礎マスターのAランク事項です。

直前期と試験当日の対策について

直前期は、前述のゼミのレジュメを読み返し、準備しておくべき規範部分やあてはめの仕方を確認しました。レジュメにゼミでのやり取りや、答案添削での指摘事項を書き込んでいたので、充実した復習ができたと思います。
全国公開模試も、結果をふまえてカウンセリングを受けることができたので、本番までに修正すべき事項が明らかとなり、よいシミュレーションの機会となりました。たとえば、判例の規範はなんとなく覚えているに過ぎないときはどうするか?とにかく短く理由を書き、あてはめるべき事実にあわせて規範をつくる。思い出したり、悩んだりする時間がもったいない。このような得点に直結する指摘をしていただきました。
ただ、それだけに、論文式試験対策のところで述べたように、わかっていたことを本番で徹底できなかったことは悔しい限りです。

予備試験からの司法試験対策

予備試験と司法試験の類似点、相違点を明らかにしておくことが重要だと思います。同じであれば、予備試験と同様の対策で問題ないでしょう。違うのであれば、予備試験と同様の対策をしても、得点に結びつかず、時間と労力の無駄となってしまいます。
私は、前述のゼミに参加させていただき、類似点・相似点を早い段階で知ることができました。予備試験合格を経てこれから司法試験を受験される方も、なるべく早い段階でこのような機会を持つべきです。

伊藤塾のゼミについて 

本体験記の中核ともいえるのが、たびたび述べてきた司法試験プロジェクトゼミです。限られた時間の中で、合格できたのは、このゼミのおかげです。
リアルタイムの双方向の講義ということで、予習・復習も含め、緊張感のある、濃密な時間を過ごすことができました。また、過去問答案の添削も、より得点を伸ばすための方策を具体的に指導していただきました。具体的には論文式試験対策で述べたとおりです。

予備試験からの就職活動 

地方在住で、現在も職持ちということもあり、就職活動には一切手をつけていません。修習開始直前に行われる近郊の都市での法律事務所の合同説明会にまず参加する予定です。

最後に 

憧れだけで10年やってきたようなものですし、当初の憧れに素直に、検事を目指したいと思います。先日、法務省主催の説明会に行かせていただき、その思いは強くなりました。
伊藤塾の方々には、入門講座からすると、10年弱の期間、お世話になりました。ありがとうございました。
10年もかかった、というよりは、よくもまあ10年もかけることができたな、幸せだったな、と思います。両親には、精神的にも経済的にも負担をかけました。ありがとうございました。
また、私の知らないところで応援してくれた人がいるかもしれません。そんな方々もふくめ、応援してくれた皆さん、ありがとうございました。
さて、「はじめに」で述べたことからわかるように、私は取り立てて勤勉というわけではありません。どちらかというと、自堕落です。司法試験受験を決めたのも、モラトリアム志向が全くなかったといえば嘘ですから。
そんな私でも、予備試験を経て、司法試験に合格できました。理由は、あきらめなかった、それだけだと思います。
予備試験の制度は、あきらめない人に、過度のリスクを強いることなく、法曹になるチャンスを与える制度だと思います。法曹に興味のある方に、気軽にとは言いませんが、ぜひ、挑戦してもらいたいと思います。