法務部で勤務しながら、法科大学院に通い、予備試験にも合格!

\ 予備試験ルートで司法試験合格 /
顔アイコン
合格アイコン

A.Nさん:甲南大学法科大学院(既修)3年 会社員
◆ 予備試験合格時 / 甲南大学法科大学院(既修)2年 会社員
◆ 出 身 大 学 / 一橋大学法学部卒業

受講講座
司法試験論文過去問マスター、司法試験演習秋生など

※プロフィールは、2020年度合格時点のものです。

はじめに

私が司法試験を目指した理由は、大学卒業後に民間企業の法務部で勤務するうちに、より専門性を磨いて企業経営に貢献できる人材になりたいと考えたからです。入社4年目頃から予備試験を意識した勉強を開始し、半年程度の準備で予備試験短答を受験するも惨敗。その翌年も受験を申し込んで勉強を継続していましたが、試験前に3ヶ月の長期出張が入ったこともあり、ろくに勉強時間が確保できないまま受験となり、初回受験と同じ結果に終わりました。当時の自分は司法試験の勉強に全てを捧げる姿勢に欠いており、何度受けても同じ結果となることは明らかでした。そこで一念発起し、通学に都合の良い県外企業に転職したうえで夜間の法科大学院(既修者コース)に入学し、予備試験合格を目指しつつ、2年間で受からない場合は法科大学院卒業資格で司法試験を受験するつもりで、本当の受験生活がスタートしました。

私の勉強法

〈基礎学習について〉

予備試験突破を目標にして勉強をはじめた当初は、ほぼ独学の状態であり、かなり認識が甘かったと思います。憲法・民法・刑法は定評のある基本書、その他科目は伊藤塾の試験対策シリーズを購入し、仕事後に少しずつ読み進めるといった程度でした。ただ、それまで全く触れたこともなかった行政法については伊藤塾の入門講座を、また馴染みの薄かった刑事訴訟法は呉講師の商訴集中講義をそれぞれ受講し、スピードアップを図ったつもりでした。半年程度このような勉強を経てはじめて予備試験の短答を受けましたが惨敗し、その翌年も同じ結果でした。転機は、独学では無謀だと判断し、働きながら法科大学院に通い始めたことです。入学後、授業の予習などで基本書や判例百選を徹底的に読み込みました。法科大学院の授業では、基礎知識を中心としたインプットに続き、定期テスト等でアウトプットを行うプロセスを踏み、かつ、同種の内容について別の授業で異なる角度から再度インプット・アウトプットをする機会がありました。私は、このプロセスに乗っかり、ひたすら要求された課題をこなすことに集中しました。そうするうちに、各科目においてそもそも何が基本事項なのかが段々と見えてくるようになりました。司法試験を受験してわかりましたが、本番で要求されるのは基礎的知識を使いこなす能力であるところ、それは上記のプロセスをしっかりこなせば基本的に培うことが可能なものだと思います。今ならはっきりと言えますが、完全に独学で法律を勉強している気になっていた初期の私1・2年は、合格に必要な能力の獲得とは異なるベクトルを向いており、ペダルを漕いでもほとんどゴールに近づいていない状態だったのでしょう。私は法科大学院入学という方向に舵を切ったため、運よくこの事実に早めに気づくことができました。そして、この時期に課題として出された基本書や判例百選の精読、基礎的な規範の暗記などを行っていたことが、論文記述力の向上の基礎となったと考えています。
 
法科大学院既修コースで2年目に進級した私は、1年目の基礎的なインプット・アウトプットを通じてある程度の自信をつけたため、予備試験の受験を再度本格的に視野に入れて勉強し始めました。そこで重視したのは、論文のアウトプット訓練です。司法試験の過去問は科目によっては大学院の授業などで扱っていたため形式や難易度は分かっていましたが、予備試験論文試験についてはあまり解いたことがなく、また時間的猶予もそれほどなかったことから、伊藤塾の予備試験論文マスターを受講することに決めました。受講する中で、論文の記述力や重要論点の理解を深める勉強を重視しました。法科大学院の授業・テスト と、論文マスターとの相乗効果により、特に論文の記述力はこの時期に飛躍的に向上 したと思います。その結果が2019年の予備試験合格につながったと思います。

司法試験に向けた学習について

<ペースメーカー論文答練を受講して>

私は、社会人受験生として限りある勉強時間内でいかに合格に近づくかを考えたときに、やはり司法試験過去問の復習を優先して行うのがベストと考えたため、予備試験合格後に申し込んだペースメーカー論文答練の着手は3月頃になり、一般的な伊藤塾生と比べると遅かったと思います。司法試験過去問をじっくり回すという判断は全く誤っていた訳でもないと思いますが、過去に何らかの機会に検討・起案したことのある問題が多く、ある程度解答の筋を覚えていたことから、初見問題を時間内に書き切る練習は相対的に不足していました。その結果、ペースメーカー論文答練が消化不良の状態で挑んだ3月初旬の全国模試では、途中答案の科目が続出し惨憺たる結果となりました。しかし、その失敗のおかげで、途中答案がいかに深刻で、特に複数科目で途中答案となれば回復がほとんど不可能なほどの痛手になることを身をもって知ることができ、以後、本番までは途中答案を出さない答案の作成に心がけるようになりました。そこで大いに役に立ったのが、積み残していたペースメーカー答練でした。同じ受験生仲間とチームを組み、「バーチャル答練」と称して①チャットアプリで「開始」と「終了」を連絡し、時間内に書く。 ②終了後すぐに電話アプリで繋いだ上で、起案の所感や解答の筋、どこまで書けたかなどの「反省会」を行う。 ③その後、各自で岡崎講師の解説動画を見る。 ということを行いました。その成果あってか、初見問題での答案作成ペースを次第につかむことができ、本番では途中答案なし(ただし、民法は危うかったです)に改善することができました。

<司法試験論文過去問マスターを受講して>

司法試験過去問は法科大学院の課題などで何かと検討・起案したことのある問題が多かったのですが、そのような課題で提出した起案には添削が施されているものの、点数がついて帰ってこないことがほとんどであったため、実際に司法試験の問題を自分が解いてどの程度勝負できるのか、予備試験合格時点ではほとんど分かっていませんでした。その意味で、自分の書いた答案の客観的な評価を知ることができたことが、私が司法試験論文過去問マスターから得た最大のメリットだったと思います。一番最初に提出した憲法の過去問の点数が、20点程度だった時の衝撃は今でも忘れられません。私は、憲法が得意という認識でしたが、客観的な指標に照らしてみると全く記述の基礎ができてないことがわかり大きな軌道修正を強いられました。それは辛い経験でしたが、自分の答案の客観的評価もわからずに闇雲に突き進み、自己満足の答案で初回の受験を避けることができたのはこの過程があったからこそなので、受講して本当によかったと思います。

<短答式全国実力確認テストや全国統一模試を受講して>

私はもともと短答が苦手で、予備試験短答もギリギリで突破したというレベルでしたので、短答式全国実力確認テストを受けることは、①全国のライバルとの差がどれだけあるかの確認 ②その結果を受けて強化すべき科目の把握 という観点から非常に重要でした。案の定、第1回(9月頃に実施)では全国平均よりもかなり低い結果となりましたが、その時点では「まだ時間がある、何とかなる」という認識でした。しかし、第2回、第3回(全国統一模試)と本番が近づくにつれ、「思ったより伸びない(他の受験生との差が縮まらない)」という現実に気づきました。そこで、短答対策にも毎日一定の時間をかけ、特に平均点との乖離が大きかった民法を中心に対策を行いました。結果として、本番では短答合格者平均よりも高い点数を取ることができました。全国統一模試(論文)についても、合格者集団がどのくらいのレベルなのか、自分の点数との差をもって実感する貴重な機会になりました。また、模試では途中答案の科目が続出し惨憺たる結果となりましたが、その失敗のおかげで、途中答案がいかに深刻で、特に複数科目で途中答案となれば回復がほとんど不可能なほどの痛手になることを身をもって知ることができ、以後、本番までは途中答案を出さない答案の作成に心がけるようになりました。その結果、本番では途中答案なしに改善することができました。更に、本番と同じ時間割で受けたことで、本番の具体的なイメージをつかむことができ、休憩時間に最後に確認する規範集などについて、どの順序で、どこを読むかまで想定して当日を迎えることができました。

<その他の講座を受講して>

1. 伊関講師の論文マスター(民法)を受講しました。私は中途半端な実力で法科大学院の既修者コースに入学してしまったため、いきなり演習から授業が始まる中で、民法知識の網羅性に常々不安を抱えていました。そこで、受験前の秋頃に、論文で問われる可能性のあるレベルの基本的な論点を確認する目的で当該講座を受講しました。受講してみると、知識の確認という目的の達成のみならず、論文記述の基本的な「型」や、細かいけれども試験委員の講師に与える印象を大きく左右するポイントなど、非常に実践的な内容を学ぶ講座で、大いに活用させていただきました。特に、試験直前期には、論文マスターの問題文を1~3分でざっと読んだ上で答案構成を行う訓練を何度か行いました。試験が近づくにつれ可処分時間が減りましたが、それに合わせて答案構成の時間を10分→5分→3分(最後の方は頭で)と次第に短く設定し、頭に叩き込むようにしました。
2. 呉講師の改正相続法講義を、本番の2ヶ月ほど前に申し込んで受講しました。この講義は、改正相続法の説明にとどまらず、相続法全体を短時間で効率的に復習できるよう構成されていたため直前の整理に大変役立ちました。相続法は、司法試験過去問でも数える程しか出題されていないため対策が疎かになりがちである一方、実際に出題された場合には対策の有無で大きな点差が生じてしまう恐れがあると考えました。しかし、基本書を読み直したり、相続法を重点的に取り上げた演習書を解いている時間的余裕もありません。そこで、①当該講義の受講する。 ②その中で重要と指摘のあった判例を判例百選で事例とともに確認する。 ③ 過去問は解いて対応の仕方を身につけておく の3本立てで対応することとしました。本番では、相続法が大論点として出ることはありませんでしたが、相続が絡む問題は出題され、これには落ち着いて対応することができました。
2. 呉講師の改正相続法講義を、本番の2ヶ月ほど前に申し込んで受講しました。この講義は、改正相続法の説明にとどまらず、相続法全体を短時間で効率的に復習できるよう構成されていたため直前の整理に大変役立ちました。相続法は、司法試験過去問でも数える程しか出題されていないため対策が疎かになりがちである一方、実際に出題された場合には対策の有無で大きな点差が生じてしまう恐れがあると考えました。しかし、基本書を読み直したり、相続法を重点的に取り上げた演習書を解いている時間的余裕もありません。そこで、①当該講義の受講する。 ②その中で重要と指摘のあった判例を判例百選で事例とともに確認する。 ③ 過去問は解いて対応の仕方を身につけておく の3本立てで対応することとしました。本番では、相続法が大論点として出ることはありませんでしたが、相続が絡む問題は出題され、これには落ち着いて対応することができました。

<司法試験対策に必要となる勉強について>

誰もが言うことですが、司法試験は基本的なことをしっかり記述することが大事です。特に、条文と判例が重視されていることは出題傾向からも明らかになっています。そこで私が試験勉強で心がけたのは、①六法と友達になること ②判例百選をまとめノート代わりにし、判例に馴染むこと でした。①の実践は簡単で、小まめに六法を引き、線を引くこと。また、問題演習で答案構成をする際には、科目を問わず、手書きの関係図や答案構成を条文番号で書くこと(例えば民法の問題で売買なら「555」、代物弁済なら「482」など。)を意識しました。条文番号で頭に入っていると、一分一秒を争う試験場でも慌てずに条文を引くことができますし、急いでいるときは条文を引かずに記述することができますのでオススメです。②の実践は当然、百選を(解説含め)一読することから始まります。判例百選の教材としての評価は人それぞれだと思いますが、私は、当該分野の専門家が2ページという限られた紙幅で重要判例のエッセンスを凝縮して解説する教材としてのクオリティはとても高いと思います(もちろん時折「ハズレ」もあるので選択眼が必要)。その情報の宝庫に、市販の規範集や演習書の模範解答などで良いと思ったものをコピーして貼り付けるなどし、情報の一元化に利用しました。自分で収集した情報を追加していくことで、まずは物理的に愛着が湧きますから、ことあるごとに読み返すことが苦痛でなくなり、判例学習が促進されます。以上のように、教材を読み返すことが楽しくなるような工夫をすることも、長い受験生活の中では重要な工夫だったと考えています。

おわりに

民間企業の法務部で勤務しながら法科大学院に通い、予備試験・司法試験の学習も続けることは、時間管理の面でかなりチャレンジングなものでしたが、同時にとても楽しいと感じられるものでした。おそらく、様々な法分野について知識を拡充し、仕事でアウトプットしていくというプロセスが、私の性に合うのだと思います。ですから、法科大学院では司法試験で選択科目にしようと考えていた経済法だけでなく、知的財産法、国際私法、労働契約法、民事執行・保全法、倒産法も履修しました。中には消化不良となった科目もあるかもしれませんが、全て将来弁護士として活躍するための糧になると考えていますし、関連分野(国際私法に対する民法、民事執行・保全法に対する民事訴訟法など)の知識を深める契機になり、受験の観点からもプラスに働いたと思います。社会人受験生の方は、すぐには結果が出なく辛い時期もあるかもしれませんが、気力を失いそうになったら少し関連分野に触れてみるなどして、継続して頑張ってください。